トランプ政権、LNG輸出審査再開へ 公有地で石油掘削

トランプ政権、LNG輸出審査再開へ 公有地で石油掘削
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『2024年11月24日 18:06 [会員限定記事]

トランプ次期米政権でエネルギー環境政策を担う(左から)ゼルディン氏、バーガム氏、ライト氏

【ヒューストン=花房良祐】トランプ次期米政権は石油や天然ガスの生産を拡大する。液化天然ガス(LNG)の輸出審査を再開するなど海外への供給も増やす。エネルギーコストを安くしてインフレ抑制に役立てるほか、国際的な影響力を強める狙いがある。

トランプ次期米大統領は石油を「地下に眠る液体の黄金」と選挙戦で訴えた。公約で掲げた「世界で最もエネルギーコストの安い国」の実現に向けて、化石燃料の生産をてこ入れする。

公有地や海底での石油掘削の許認可を管轄する内務長官に、中西部ノースダコタ州知事のダグ・バーガム氏を指名した。同州の原油生産は米国全体の1割を占める。

バイデン政権下では石油掘削の許認可件数が少なかった。バーガム氏は2022年に日本経済新聞の取材に答えた際「バイデン政権は化石燃料への投資を阻害している」と批判していた。

バーガム氏は内務長官就任後に、公有地のシェール掘削の許認可を加速する。資源の埋蔵量が豊富なアラスカの環境保護区やメキシコ湾の海底油田でも速やかに開発を認可する。
トランプ氏は「国家エネルギー会議」を新設する予定で、バーガム氏が議長を兼務する。エネルギー開発の許認可や生産、流通は案件によって権限を持つ省庁が異なっていたが、エネルギー環境政策を一元管理する。

バーガム氏とともに石油やガス開発を主導するのは、エネルギー長官に内定したクリス・ライト氏だ。11年に石油サービス会社リバティー・エナジーを設立し、石油会社からシェール掘削の水圧破砕を請け負ってきた。

石油危機を受けて1970年代に設置したエネルギー省の長官に石油業界の経営者が就くのは初めてとなる。同省が管轄するLNGの輸出許可を巡っては、バイデン政権が環境への影響評価を理由に審査を凍結した。ライト氏は審査手続きを早期に再開し、LNG輸出の促進に取り組む。

1期目のトランプ氏は「米国のLNGセールスマン」を自任し、日欧に米産LNGを調達するよう強く要請した。返り咲きを決めた今回の大統領選でも「米国による『エネルギー・ドミナンス(支配)』を取り戻す」と公約した。

エネルギー輸出を貿易不均衡の是正につなげたいとの思惑が透ける。欧州はトランプ氏の圧力をかわすため、米産LNGの輸入増加を示唆している。トランプ氏は中国製品に60%の高関税をかけると主張する。中国との貿易摩擦が激しくなれば、中国が米産LNGに報復関税をかける可能性もある。

トランプ次期政権は化石燃料の開発や輸出に力を入れる一方、バイデン政権が設けた環境規制は緩和する。環境保護局(EPA)の長官に内定した親トランプ派の元下院議員、リー・ゼルディン氏が見直し作業の陣頭指揮をとる。

シェールガスを積極的に活用するため発電所の環境規制を緩和する見通しだ。バイデン政権は30年代までに既存の石炭火力発電所や新設のガス火力発電所に二酸化炭素回収・貯留(CCS)装置の設置を義務付けた。火力発電所のコストを上昇させる同政策を見直す。

人工知能(AI)用データセンターで米国の電力需要は増加傾向にある。規制緩和が火力発電所への投資に追い風となるとの見方は多い。

脱炭素政策については石油業界が取り組んできたCCSや水素の活用を支援するとみられる。バーガム氏は22年、日本経済新聞に「規制をしないで脱炭素を達成したい」と答えた。石油業界がトランプ陣営に求めるCCSなどへの公的支援は継続させる方向だ。

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