米国、ネタニヤフ氏逮捕状に反発 共和「ICCを制裁」

米国、ネタニヤフ氏逮捕状に反発 共和「ICCを制裁」
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『2024年11月22日 5:47 [会員限定記事]

米国は超党派の議員がICCへの制裁を主張する(米首都ワシントンの連邦議会議事堂)
【ワシントン=坂口幸裕】国際刑事裁判所(ICC)が21日にイスラエルのネタニヤフ首相らの逮捕状を発行したことを巡り、米政府や連邦議会は超党派で反発した。野党・共和党はICCへの米国資金を打ち切り、決定に関与した個人を制裁すべきだと主張した。

ICCはイスラエルのガラント前国防相の逮捕状も発行した。パレスチナ自治区ガザへの攻撃を巡り、戦争犯罪や人道に対する罪を犯した疑いがあると判断した。日本など120超のICC加盟国・地域は、自国内に入った際に拘束することが求められる。

米ホワイトハウスのジャンピエール大統領報道官は21日の記者会見で逮捕状発行について「根本的に拒否する。検察官が急いで逮捕状を請求し、決定につながった手続き上の瑕疵(かし)を深く懸念している」と非難した。イスラエルがICCに加盟しておらず「権限を有していない」と断じた。

ネタニヤフ氏らが戦争犯罪などを犯した疑いについて「証拠が全くない。イスラエルを含むパートナーと協議し、どのような措置を取るべきか話し合っている」と明言した。ICCへの制裁について具体的な言及は避けた。

議会上院の外交委員会で共和トップを務めるジム・リッシュ氏は声明で逮捕状発行について「ICCの死を意味する。ICCの正当性に対する最後の幻想をも打ち消すものだ」と批判した。「もはやその使命を無視した選択をした組織を支持できない」と表明した。

バイデン大統領に対し「ICCへの資金援助を直ちに打ち切り、この違法な決定に関与した個人を制裁すべきだ」と求めた。行動に移さなければ議会下院で通過したICCに制裁を科す法案を上院でも採決すべきだと求めた。現在のICC所長は日本の赤根智子氏が務める。

共和は5日の上院選で多数派を奪還し、2025年1月招集の議会で主導権を握る。上院共和トップの院内総務に就くジョン・スーン氏は17日にX(旧ツイッター)で逮捕状が撤回されないなら「下院が超党派で可決したように上院もただちに制裁法案を可決すべきだ」と投稿した。

現在上院で多数派を握る民主党のチャック・シューマー院内総務が同法案の採決に踏み切らなければ「次期議会での最優先事項にする」と断言した。

トランプ次期米大統領が大統領補佐官(国家安全保障担当)に起用するマイク・ウォルツ下院議員は21日、Xで「ICCは信用できない」と指摘。「イスラエルは大量虐殺をするテロリストから合法的に国民と国境を守ってきた」と擁護した。

トランプ新政権が発足すれば「ICCと国連の反ユダヤ主義の偏見に対する強力な対処が期待できる」と記した。

下院民主党のブラッド・シャーマン氏は21日、Xで「ICCによる今日の不合理な判断はこの組織の正当性に対する最後の一撃になる。イスラエルは自国民の抹殺を誓う敵対者との正当な戦いをしている」と投稿した。ICCに制裁を科すため迅速に行動すべきだと唱えた。

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