中国、元国防相2人の党籍剝奪 重大違反「収賄や癒着」

中国、元国防相2人の党籍剝奪 重大違反「収賄や癒着」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM27BXF0X20C24A6000000/

『2024年6月27日 19:55 (2024年6月27日 21:11更新)

【北京=田島如生】中国共産党は27日の中央政治局会議で、李尚福前国防相と魏鳳和元国防相の党籍を剝奪すると決定した。重大な規律・法律違反を理由に挙げた。人民解放軍の最高意思決定機関、中央軍事委員会メンバー経験者2人の党籍を同時に奪うのは極めて異例だ。

中国国営中央テレビ(CCTV)が伝えた。習近平(シー・ジンピン)党総書記は2012年の就任直後から「反腐敗」を掲げ、権力基盤の確立につなげた。22年からの3期目指導部では軍の能力強化に向け腐敗幹部の一掃をめざすが、軍内部の深刻な汚職も浮き彫りになった。

李氏は23年3〜10月に、魏氏は18年3月〜23年3月にそれぞれ国防相を務めた。中国の国防相は主に軍事外交を担い、習氏がトップの中央軍事委の委員を兼ねる。

CCTVによると、党で軍の腐敗や汚職の摘発を担う規律検査委員会が23年8月に李氏の調査を始めた。その結果、贈収賄や違法な人事のあっせん、軍需産業との癒着が判明したという。

魏氏を巡っては規律検査委が23年9月から調査に着手し、収賄や地位を利用した金銭の受領があったとの結論に至った。

習指導部は両氏の党籍に加えて軍籍も外すと決めた。上将の階級を取り上げたほか、党大会代表の資格も抹消した。両氏は軍事検察機関に移送される。

習指導部はこれまで両氏の規律違反検査の事実について公表していなかった。検査の事実関係と処分を同時に発表するのも異例だ。

習氏は17日、革命根拠地だった陝西省延安市で軍の政治工作会議を開き「我が軍は複雑な試練に直面している」と強調した。軍の内部から汚職を撲滅させるべきだと唱え、高級幹部に自省を促した。

軍ではかねて汚職を巡る大規模な調査が進行中との見方があった。李氏は国防相就任まで5年以上、中央軍事委で装備品の開発や調達の責任者を務めた。香港紙が不正の疑惑を報じ、23年8月から消息不明だった。

核・ミサイルなどを運用する「ロケット軍」トップの司令官を務めた魏氏も最近の動静が途絶えていた。多額の予算を伴うロケット軍は軍需産業との癒着を疑われていた。23年7月には同軍ナンバー1、2の司令官と政治委員が同時に代わる異例の人事があった。

習氏は12年11月、党総書記に就任すると「大虎もハエもたたく」と宣言し、反腐敗運動を推進した。胡錦濤(フー・ジンタオ)前国家主席が掌握しきれなかった軍部にも切り込んだ。

汚職を理由に元制服組トップ、徐才厚氏(故人)と郭伯雄氏の党籍を相次ぎ剝奪した。18年には軍統合参謀部参謀長だった房峰輝氏と政治工作部主任だった張陽氏(故人)の党籍を抹消した。

習指導部3期目で軍大物の党籍剝奪は初めてになる。習氏は建軍100年となる27年に向けた規律徹底を掲げる。軍幹部らの処分が相次ぐ可能性もある。 』