インド、我が国の名は「バーラト」 国民生活と離れる理想

インド、我が国の名は「バーラト」 国民生活と離れる理想
インド モディ3選の死角(4)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM120010S4A610C2000000/

『2024年6月20日 2:00

「『インディア』という名は押しつけられた名前。我が国の名は(サンスクリット語でインドを意味する)『バーラト』であるべきだ」

すでに炎天下だった4月末、インド中部ナグプールにあるヒンズー至上主義団体「民族義勇団(RSS)」の施設で、上級幹部のシュリダル・ガッディゲは断言した。RSSは首相のモディ(73)もかつて属し、現在はモディ率いる与党インド人民党(BJP)の有力な支持母体だ。

長年、イスラム王…

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『インドの首都ニューデリーにある新国会議事堂。建物内部の壁に、古代インドのものとされる地図が施されている。1年前、落成式で披露されるやいなや、パキスタンやネパール、バングラデシュなどが一斉にインド政府に猛抗議を行った。自国がインドの一部として描かれていたからだ。

これはRSSが長年温めてきた「アクハンド・バーラト(統一されたインド)」の象徴にも見える。インド外務省の報道官は「地図は古代のアショーカ王が採用し広めた『責任ある国民本位の統治』という理念を描いたものだ」と弁明に追われた。』

『だが今回の総選挙が浮き彫りにしたのは、国民がヒンズー至上主義よりも経済成長の恩恵を求めているということだ。

6月4日の開票直後、早朝のニューデリー。高級車が通る横で、親子が煮炊きのために地面に落ちた木の枝をかき集めていた。数日に1度しか来ない給水車が到着するや、人が群がりホースを奪い合った。

大国を目指し理想を掲げる政権は、貧困や失業に苦しむ国民との乖離(かいり)に向き合えるか。モディの3期目は現実を直視することから始まる。

(敬称略)

岩城聡、花田亮輔が担当しました。』