3中全会こそ中国経済逆流の起点 習時代は政治が全て

3中全会こそ中国経済逆流の起点 習時代は政治が全て
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD1520X0V10C24A6000000/

『2024年6月19日 0:00

「中国共産党の重要会議は、(中国の)外の世界が取り沙汰する経済、企業、マネーの視点から、期待を込めて分析していると、大きな間違いを犯す」。これは今から11年前、共産党の重要会議が開かれて間もなく、実態をうかがい知ることができる内部関係者が漏らした慨嘆である。

重要会議とは、習近平(シー・ジンピン、71)が国家主席に就いて初めてとなる2013年11月の中央委員会の全体会議。第1期習政権の経済政策の…

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『第1期習政権の経済政策の大方針が示されるとして世界が注目した「3中全会」(第3回全体会議)だ。』

『冒頭の関係者の指摘で注目すべきは、中国で最も重要なのは、いついかなるときも政治権力だ、という厳然たる事実である。経済ではない。習は7月、政権3期目になって初の3中全会を開く。今、11年前の3中全会を振り返って検証することには、重要な意味がある。同じ間違いを犯さないためにも。』…。

『当時、世界はこの3中全会の中身として「改革」に注目した。コミュニケと決定全文に明記された①資源配分の際、市場が決定的な役割を担う②国有資本に限定してきた分野に、非国有資本の参入を認める――などだ。

ところが今、振り返ると絶対的な市場原理への志向、民間企業重視など脚光を浴びた様々な中身は貫徹されないばかりか、骨抜きになった。共産党傘下にある国有企業の肥大化という逆行が間もなく始まる。

それはそのはずである。習が日々考えていたのは周永康摘発を手始めにした「反腐敗」運動の行方。そして共産党の統治強化による自らへの権力集中だ。そのとき党が全てを仕切る国有企業の存在は大きい。まさに政治である。

それを世界の人々、いや共産党内の多くの幹部までもが、まったく見抜けなかったにすぎない。3中全会に出席した面々も、この時点で「反腐敗」運動の大成功と、今のような習個人への権力集中を予想できなかった。』

『逆流が誰の目にも明らかになるのは、習政権2期目だ。民間企業の雄、アリババ集団への異常な圧力などが典型である。資源配分で市場に決定的な役割を担わせ、国有資本の投資項目を開放するなら、アリババを巡る諸問題などが起きるはずもなかった。』

『習政権3期目の今、まったく新しい時代が始まっている。鄧小平、そして江沢民と胡錦濤(フー・ジンタオ)という両党総書記時代までの経済路線を継承するバランサー役だった李克強のような人物は皆無だ。

22年共産党大会では、胡錦濤が腕をつかまれて会場から退場させられた。李克強も完全引退に追い込まれ、間もなく突然、亡くなってしまった。鄧・江・胡時代の完全な終焉である。』

『中国共産党の重要会議である中央委員会の全体会議は、23年2月から開かれていない。中国政治の内情を知る手掛かりも途絶えている。対外的な顔である外相、そして国防相が突然、解任されても、その理由さえまったくわからないという事態はかつてなかった。

今回は、少なくとも秦剛と李尚福が、共産党内の重要ポストである中央委員からも解任されるのか、されないのかがわかる。解任されるなら、なぜなのかも明確にならなければおかしい。

13年の3中全会から11年。再び流れが大きく変わる可能性があるのか。今回こそは、まず政治的な視点から7月の3中全会を観察すべきだ。コミュニケに記される表面的な経済に関する文言とは別にである。そうでなければ、中国の将来を見誤る。(敬称略)』

『中沢克二(なかざわ・かつじ)
1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。
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