<日中韓首脳会談実施は焦りの証拠?>

<日中韓首脳会談実施は焦りの証拠?>5年ぶりに会談が実現した意味と、中国を本気にするために必要なこと
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/34144

『2024年6月18日

2024年5月27日付英フィナンシャル・タイムズ紙は、「中国は、日中韓サミットの新たな始まりを歓迎」との解説記事を掲げ、5月27日に約5年振りに行われた日中韓首脳会合の評価を解説している。
日中韓首脳会談が約5年ぶりに開催されたが、中国側の出席は習近平総書記でなく李強首相(右)だった(代表撮影/ロイター/アフロ)

 中国の李強首相は、日中韓三カ国が自由貿易協定(FTA)の交渉再開を合意したことを受け、韓国と日本との新たな関係の始まりを歓迎した。5月27日にソウルで行われた日中韓首脳会談で発表された共同声明では、三カ国間のFTA交渉を加速化することが示された。

 この首脳会合は、中国の先進的半導体技術へのアクセスを制限する米国の包括的輸出管理への日韓の参加や米国と日韓との活発な軍事協力を背景に、2019年以来初めてかつ短期間で調整された。中国の李首相は、この会合は中国と日韓という東アジアの米国の同盟国との間の関係の「新たな始まり」を意味すると述べた。

 彼は、保護主義とサプライチェーンの切り離しへの反対を強調した。また、日韓両国に相互の核心的利益に配慮するよう要請したが、これは、米国の対中政策に同調することに対する警告だ。首脳会談の公式議題は、北朝鮮や台湾などの地域の紛争に触れられず、学術交流や観光、気候変動や将来の疫病対策での協力を含んだ。

 5月26日、李強首相はサムソンの李在鎔会長と会い、世界最大の先進的半導体メモリー生産企業である韓国の巨大テック企業が中国への投資を増やすように勧奨した。しかし、韓国の元貿易大臣によれば、地政学的環境と、中韓テック企業が現在多くの分野で直接的な競争関係にあることを考えると、韓国企業が先進的技術について中国への投資をする可能性は低い。』

『梨花女子大学のイーズリー教授によれば、中国が日中韓協力に再び関与してきたことは、ルールに基づく地域秩序にとっては良いことだが、中国の意図は、日米との経済安全保障協力、特に半導体サプライチェーンに関する協力の弱体化かもしれない。

 韓国国家安全保障問題研究所の中国センター長であるチューは、将来の成功の鍵は、習近平主席が出席するかどうかだと言う。チューは、中国の国家元首の交渉力無しには、この首脳会談は、将来の目標も達成する可能性は低いと言う。

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中国が前向きではなかった理由

 中国との関係は日韓両国にとって大変に重要だ。特に地続きの韓国にとって、中国とある程度良好な関係を築くことは、北朝鮮対応という視点だけでなく、韓国自身の安全と繁栄にとって非常に重要である。日本にとっても、中国との競争と共存を維持することは、隣国は変えられないという地政学の現実から考えても、最重要の外交目的である。

 そういう観点から、約5年振りに日中韓首脳会談を実現したことの意義は、この解説記事が言うように、「ルールに基づく地域秩序」にとっては大きい。

 しかし、今回の日中韓首脳会談が実現したのは、言い換えれば、これまで開催に積極的でなかった中国が開催に応じたのは、日韓関係の改善、日米韓関係の緊密化によるところが大きいのではないだろうか。これは、中国と渡り合うためには、自らの立場を強くすることが一番大事だと言うことを如実に示している。

 そもそも、なぜこれまで中国は日中韓サミットの開催に前向きでは無かったのか。それは、米国と話していれば、米国の同盟国でありその行動がある程度予測できる日韓と話す必要は無いという中国なりの割り切りがあったからだろう。

 しかし、国際社会の環境は中国にとって厳しくなっている。日米同盟、米韓同盟は益々強化され、楔を容易に打ち込めると思っていた日韓関係も改善し、日米韓協力は新時代に入った。さらには、台湾を取り囲むように、日米比3カ国の安全保障協力も強化され、今年のリムパックには、再度多くの欧州諸国も参加する。

 ワシントンで開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会談では、通常は北大西洋の問題に焦点が当たるが、太平洋国家でもある米国は、意識的に太平洋側の情勢にも焦点を当てようとするだろう。岸田文雄首相を含むAP4(NATOアジア太平洋パートナー)の首脳も再び出席する。』

『そして、7月に三中全会を控える中で、中国経済の減速は益々明らかになりつつあり、輸出ドライブによる国内総生産(GDP)押し上げの試みは、習近平主席自ら働きかけた欧州を含め、各国の反発を招いている。ロシアとの関係は対欧州、対グローバルサウスとの関係で中国の人気に傷を付け、そのロシアは北朝鮮にまで手を出そうとしている。

 そんな中で、中国としては、日米韓協力緊密化の中で実質的成果は限られることを承知の上で、日中韓での連携を模索せざるを得なかったのだろう。

中国が李強首相の参加であった意味

 岸田首相は、中国による経済的威嚇や東シナ海・南シナ海での力による一方的現状変更に対する懸念を表明し釘を刺した。

 一方、中国における本件首脳会合の位置づけが大きく変わることは無いだろう。正に、当初から習近平総書記でなく首相の担当になっていることが、中国側の位置づけを反映している。

 主要20カ国(G20)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、新興5カ国の枠組み「BRICS」は習近平、日中韓首脳会合、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会合は首相が通常出席する。従って、習近平が日中韓首脳会談に出席する可能性は、日韓、日米韓の連携がこれまで以上に強力にならない限りは、余り高くない。やはり、自らが強くなることが今後も一番大事なのである。』