岸田首相、総裁再選へ攻め手欠く 麻生氏と関係修復探る

岸田首相、総裁再選へ攻め手欠く 麻生氏と関係修復探る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA14BQG0U4A610C2000000/

『2024年6月16日 19:30 (2024年6月16日 21:39更新)

岸田文雄首相が16日、イタリアでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)などから帰国した。17日から今国会の最終盤に臨む。

内閣支持率は低迷し、衆院解散・総選挙といった起死回生を狙う戦略はとりにくい。9月には任期満了に伴う自民党総裁選を控える。再選に向けて求心力を取り戻すための選択肢は狭まってきた。

次の総裁選は自民党の派閥解消後、初めて実施する総裁選となる。

事実上派閥のない状態での総裁選は近年例が…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』

『事実上派閥のない状態での総裁選は近年例がなく、対抗馬の動きも読みづらい。首相はまずは政治資金規正法改正案のとりまとめで反発を招いた麻生太郎副総裁との関係修復をはじめ、支持勢力固めを急ぐ。

首相は15日、訪問先のイタリアで政権運営が厳しさを増しているとの記者団の指摘に「うん」とわずかにうなずいた。「仕事で結果を出すこと以外に今は考えていない」と述べ、衆院解散や自民党役員人事に踏み切る可能性には触れなかった。

今国会の会期末は23日で残り1週間となった。焦点だった規正法改正案について自民党は19日にも参院で可決、成立させる構えだ。5月末に公明党、日本維新の会とそれぞれ修正合意し、衆院は自公維の賛成で可決した。

維新は調査研究広報滞在費(旧文通費)改革に関し自民党が時期を明示していないと批判し、参院の採決では反対に転じる可能性もちらつかせる。維新と折り合いがつかなくても自公両党で参院の過半数は確保できる。

立憲民主党の泉健太代表は19日の党首討論で、首相に政治とカネの問題への対応を不十分として国民の信を問うべきだと主張する見通しだ。立民は近く内閣不信任決議案を国会に提出し、首相に衆院解散か総辞職を迫るとみられる。

ちょうど1年前、2023年の通常国会の終盤は様相が異なった。首相が「緊迫の度を加えた展開が予想される」と発言し野党の不信任案を理由とした衆院解散に含みを持たせた。当時は支持率が4割近くあり、首相の発言にも迫力があった。

1年で首相を取り巻く状況は大きく変わった。日本経済新聞社・テレビ東京の世論調査によると5月まで6カ月連続で20%台が続く。党内では「早期の衆院解散は自殺行為だ」といった声が相次ぐ。

首相が総裁再選へ描いていた有力なシナリオはこうだった。総裁選前に解散・総選挙を断行し、勝った勢いで総裁再選を果たす――。いま解散による主導権の回復は難しくなり、代わりの打開策も限られている。

たとえば総裁選前の内閣改造・党役員人事は一つの選択肢だがリスクはある。首相周辺は「主要候補がポストを受けてくれなかったら、首相の求心力をかえって低下させかねない」と懸念する。

もともと首相は支持率が低くても、麻生氏らと協調すれば総裁選を乗り切れるとみていた節がある。衆目の一致する「ポスト岸田」候補が見当たらないこともこうした見立ての背景にあった。

規正法改正案を巡る首相の対応がこうした情勢を一変させた。

首相が党内の意見を振り切って公明党や維新との法案修正に合意し、麻生氏や茂木敏充幹事長らが反発。麻生氏が首相と距離を置いたことが引き金となり、総裁選に向けた動きが活発になった。

首相はいま「ポスト岸田」候補の動きを見極めている。

石破茂元幹事長や河野太郎デジタル相、小泉進次郎元環境相らは世論調査での支持が高く、茂木氏や加藤勝信元官房長官らも意欲を示す。中堅・若手議員の立候補も取り沙汰される。

茂木氏は首相がイタリア訪問中だった14日夜、都内で麻生氏と3時間半にわたって会食した。

首相と一定の距離を置く菅義偉前首相は6日夜、都内で加藤氏や萩生田光一前政調会長、武田良太元総務相、小泉氏と会談した。加藤氏は14日に森山裕総務会長らとも会食した。石破氏は党内で定期的に勉強会を開いている。

非主流派が一致して擁立する候補者はまだ絞られていない。最大派閥だった安倍派は解散しまとまりに欠く。複数の対抗馬が首相に挑む乱立状況となれば決選投票になる公算が大きい。

首相が議員票中心の決選投票で勝つうえで、派閥を残して55人の勢力をまとめる麻生氏との協調は欠かせない。

首相は帰国後、政権運営で頼ってきた麻生氏との関係修復を急ぐ。周囲には「麻生さんには理解を得られるように丁寧に説明したい」と語るが、2人きりの会食の機会はまだつくれていない。

【関連記事】

・自民・麻生氏「禍根残す改革はダメ」 規正法改正巡り
・自民党の麻生副総裁と茂木幹事長、都内で会食
・菅義偉前首相、加藤・小泉各氏らと会食 「危機感を共有」
・衆議院解散、秋以降の公算 首相の総裁再選へ狭まる道
・衆院解散、議席減らしても? 首相のモデルは中曽根解散 』