日本、ロシア資産活用は「非軍事」限定 ウクライナ支援
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA124WN0S4A610C2000000/

『2024年6月14日 11:30
【ファサーノ(イタリア南部)=秋山裕之】岸田文雄首相は13日のウクライナのゼレンスキー大統領との会談で、電力や地雷除去で新たな支援策を伝えた。
ロシアの凍結資産を活用する基金への参画は非軍事目的に限ると条件を明確にした。憲法への抵触を避けつつ、アジアの立場から積極的な関与を探る。
「ウクライナの問題が欧州だけでなく、国際社会全体の問題であると示すことになる」。首相は13日、ウクライナ支援・協力に関…
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『首相は13日、ウクライナ支援・協力に関する文書に署名し、ゼレンスキー氏にこう語りかけた。
この2国間の文書は主要7カ国(G7)を含む30カ国以上が参加する2023年7月公表の共同宣言に基づいて作成した。
英国やフランスなど15カ国はすでに署名しているものの、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国以外では日本が初めてだった。
日ウクライナ首脳会談はイタリアでのG7首脳会議(サミット)に合わせて開いた。首相はロシアによる発電施設攻撃で電力不足に悩むウクライナに発電機を供与する追加支援も表明した。
ゼレンスキー氏は謝意を繰り返し伝え、会談後はX(旧ツイッター)に「日本にとってこのレベルの支援は画期的なものだ」と投稿した。
署名した文書は支援について日本の憲法・法律上の要件と規則に従うとの文言を入れた。
ロシアからの侵略が終わった後、新たに武力攻撃があった場合、24時間以内に2国間協議すると記した。
ロシアの凍結資産を活用し、ウクライナ支援のために設ける基金を念頭に置いた記述も盛り込んだ。「活用し得る全ての可能な方策を模索するG7の取り組みへ参加を継続する」と明記し「それぞれの法制度と整合的な形で」と条件を付けた。
法制度とは憲法9条とそれに基づく法律を意味する。日本は戦力の不保持を規定し、安全保障協力には限界がある。交戦中のウクライナを軍事支援すれば日本政府が説明する「必要最小限度の実力」と矛盾する。
防弾チョッキなどは提供したものの、殺傷力のある武器を送ることはできない。
23年12月に防衛装備移転三原則の運用指針を改正し、地対空ミサイル「パトリオット」の完成品を米国に輸出できるようにした。ウクライナへの武器移転で自国の迎撃ミサイルが不足する米国を支える。日本はこうした間接的な支援が限度となる。
日本は経済や人道といった分野で貢献する。2月にウクライナの経済復興推進会議を開き、両国の当局や企業は56の協力文書を交わした。農業やインフラ、デジタル・通信などの分野で官民挙げた産業再建を打ち出した。
地雷除去やがれき処理なども日本が得意とする支援策だ。25年にはウクライナの人道地雷対策のための国際会合を開く。
首相は17日の国会出席のため、16日に帰国する必要がある。窮屈な日程でも強行軍で15日にスイスに入り、ウクライナ和平案を話し合う「世界平和サミット」の開幕会合に参加する。
日本の積極姿勢には「NATO・ウクライナ対ロシア」の構図にとどめず、アジアを含む国際世論としてウクライナ支援の機運をつくる狙いがある。
大国間の対立から距離を置こうとする新興・途上国に法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持を訴える日本の立場に沿う。
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