中国、新興国と貿易拡大で経済安定期に 独コンサル首脳
ローランド・ベルガーのデニス・ドゥプー氏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD115WP0R10C24A6000000/
『2024年6月13日 5:00
独コンサルティング会社ローランド・ベルガーのトップ、デニス・ドゥプー氏は11日、都内で日本経済新聞のインタビューに応じた。
中国経済について「黄金期は終わったものの、安定期に入っている」と述べ、底堅い成長を続けるとの楽観的な見通しを明らかにした。
一因として東南アジアを含む新興・途上国(グローバル・サウス)各国との貿易が「2ケタの伸び率で増えている」と指摘した。
ドゥプー氏はローランド・ベルガーのト…
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『ドゥプー氏はローランド・ベルガーのトップである3人のうちの1人で、肩書きはグローバル・マネージング・ディレクター。アジア地域の責任者として中国・上海に駐在している。中国でのビジネスの経験が豊富で、欧州や中国などのグローバル企業に助言している。
中国の5%成長「依然として規模が大きい」と楽観
「中国経済の5%成長は依然として規模が大きい。(成長により)毎年オランダ1カ国分の経済を生み出し、5年でドイツ1カ国分の経済を生み出す計算だ。自分は中国経済を楽観している」。ドゥプー氏はこんな見方を示した。
独コンサルティング会社ローランド・ベルガーのデニス・ドゥプー氏は上海に駐在している
たとえば、中国はグローバル・サウスとの間の貿易・投資を大きく増やしている。「中国のモノの輸出で欧州や米国、日本への依存度を減らす一方で、他のアジア、中東、アフリカ、南米、ロシアへの依存度を高めている」「投資では中国から東南アジア向けが大きく増えている。労働コストの低い新市場にアクセスしようと中国企業自らが生産拠点を海外に移転する『オフショアリング』に動いている」などと説明した。
「脱グローバル化」ではなく「二重のグローバル化」
原油に関しても「中国はミャンマー経由のパイプラインを通じて大量に輸入している。これが中国経済を支えている現実だ」と指摘。そのうえで「脱グローバル化ではない。(足元で起きていることは米欧と中ロ・新興国などに陣営が分かれた)二重のグローバル化だ」と位置づけた。
中国は技術革新の面でも目を見張る成果を見せているという。ドゥプー氏は「40年前は自動車産業の技術革新は日米で生まれたが、今は中国で生まれている。20?30年前の工作機械の技術革新はドイツと北欧で生まれたが、今は中国で生まれている」と評価した。中国経済のリスクとしては、不動産市場の回復の遅れや、高齢化などに伴う将来不安による消費低迷を挙げた。
中国リスクの低減に様々な選択肢、「多くの企業は撤退せず」
日本を含む西側企業がサプライチェーン(供給網)や経済安全保障の面で中国リスクを減らす「デリスキング」を進めるやり方として、①中国企業との合弁事業を増やす②既存の中国事業による利益を中国で再投資する③中国人の幹部に意思決定の権限を委ねる――といった選択肢を提示。米中対立などを意識しつつも「多くの企業は中国市場から撤退しない」と予想した。
ローランド・ベルガーは創業者であるローランド・ベルガー氏の名前を社名にしている=ロイター
ローランド・ベルガーは米中の貿易戦争によって中国の国内総生産(GDP)の10%分、米国のGDP4%分の経済を累積で下振れさせかねないと試算している。11月の米大統領選挙でバイデン大統領、トランプ前大統領のどちらが勝利したとしても「米中関係は改善しない」とドゥプー氏は語った。
ただ、トランプ氏が勝った場合は「米国のエネルギー転換政策が逆戻りする公算が大きい」と述べるとともに、「中国製の太陽光パネル、電気自動車(EV)、電池の必要性が低下する。地球(環境問題)にとっては悪いことだが、中国との貿易戦争の悪影響が緩和する可能性がある」との見解を示した。
(編集委員 瀬能繁)
Denis Depoux 仏エネルギー大手EDFなどを経て、2001年に独ローランド・ベルガーに入社。15年からアジア地域の責任者として上海オフィスに常駐。20年から同社のトップであるグローバル・マネージング・ディレクター。中国市場やエネルギー産業に詳しい。』