【参考資料】
米議会 米中経済・安全保障調査委員会(USCC)年次報告書(2023年版)の提言概要
https://cistec.or.jp/service/uschina/20240415-2.pdf
※ 今日は、こんな所で…。
『米議会超党派で構成される米中経済•安全保障調査委員会(USCC)は、2023年11月14
日に2023年の年次報告書を公表した。
委員会は議会に対する30項目の提言のうち、10項目を特に重要なものとして考えてい
る(赤文字下線部分)。
中国式の法による支配のグローバル化
① 米国議会は、政治活動やその他の市民参加において保護されている権利を行使する当
事者に対し、中国政府またはその代理人が口封じ、脅迫、押し付けを行おうとする多額の
訴訟費用を課す政治的抑圧訴訟に対処するための法案を制定する。
この法律は、こうした訴訟を却下する取組みを迅速に検討し、裁判所が訴訟の是非につい
ての闘値決定を下すまで、高価な証拠開示手続きを停止することを規定する手続きを創
収するものとする。
② 米国議会は、米国司法会議に対し、中国の法制度および法体系に関する米国の裁判所
および行政職員向けの評価および指針を作成することを義務付ける法案を可決する。
海外での統一戦線工作
③ 米国議会は、1965年高等教育法を以下のように改正することで、中国の米国における
国家主導の影響力と干渉に対処する。
• 米国教育省に対し、FB!や国家情報長官室(ODNI)を含むがこれに限定されない、
米国連邦法執行機関、情報機関、その他の関連機関と、同法第117条に基づき義務付
けられている米国の大学・カレッジが受け取る対外贈与•契約開示に関するデータを
共有することを義務付けること。このような情報共有は、少なくとも10年前、また
は議会が決定した期間に遡る贈与および契約、ならびに同省に開示される将来のす
ベての贈与および契約を包含すべきである。
• ODN!が主導する省庁間レビューを指示すること。
• 米国の大学やカレッジが受け取った中国や香港を起源とする資金がもたらすリスク
を特定するために、第117条のデータを活用すべきである。省庁間の調査結果は議
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会に報告され、米国の大学やカレッジが中国由来の資金を継続的に受領することに
関連するリスクを軽減するための、連邦資金の一時停止の可能性を含む措置に反映
されるべきである。
• 大学やカレッジに対し、遡及的に外国からの贈与や契約の開示が追加された場合、ま
たは過去の記載が修正された場合、セクション117の報告書に記載することを義務
付け、報告遅延に対する罰則を設ける。罰則には、現行の基準額である$250,000を
超える贈与や契約の開示を怠った場合、連続する3年間または連続しない3年間に
おける連邦財政援助の喪失が含まれる。
• 米国教育省に対し、様々な学問分野の米国の大学やカレッジが受領または締結した
外国からの贈答品および契約の平均額について調査し、現行の報告基準の妥当性を
評価するよう指示すること。
そして米国議会が米国の国家安全保障にとって重要で
あるとみなす学問分野のプログラムについて、25万ドルの基準値を調整する必要が
あるかどうかを判断するよう指示すること。
この調査には、過去10年間に米国の大
学やカレッジが受け取った中国や香港由来の贈答品や契約の金額、焦点、潜在的な影
響についての分析も含めるべきである。
④ 米国議会は、外国投資リスク審査近代化法(FIRRMA)を改正し、「対象取引」の定
義を拡大し、「研究契約」を含める法案を可決する。
拡大された定義の下で、対米外国投
資委員会(CFIUS)は、契約という形で中国企業が行う米国の教育制度への投資を審査す
る権限を持つべきである。
海外の契約機関や米国の研究機関を含む取引のすべての当事者は、契約開始日前に
CFIUSに共同申告書を提出すべきである。本法案の成立により、高等教育法第117条に
基づく報告要件は、米国の大学•カレッジに対する外国からの贈与を含むよう規制により
調整されるべきであり、こうすれば、外国との研究契約に関する報告を受領し、その収集
内容を監督する管理権限は、事実上CFIUSに移譲されることとなる。
⑤ 米国議会はロビー活動公開法を改正し、ロビイストとして登録された個人を雇用す
る産業団体や貿易団体などの国内団体に対し、中国やその他の懸念国に拠点を置く団体
やその米国関連会社からの寄付や会員からの献金を一般に開示することを義務付ける。
⑥ 米国議会は、中国に関する事実に基づいた情報を広め、と中国共産党(CCP)にょ
るグローバルな情報操作に対抗するため、中国語、英語、その他の言語で国際的にニュー
ス・コンテンツを調整し、普及させるために、米国グローバル・メディア局(USAGM)
の下に新たな組織を設立することを支持する。
この事業体は、国際的なジャーナリストやメディアとの連携を促進し、特に中国の国家
や国家が支援する団体が米国や自由民主主義の価値を貶め、中国に関する誤った物語を
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広めようとする場合に、独立したコンテンツを提供することができる。
このデジタルサー
ビスは;
• 米国グローバル・メディア局(USAGM)の毎日のニュースでは、中国がその価値
観を広め、米国の信用を失墜させようとしている世界各国に、中国関連のノーカッ
トニュースを北京語と英語で提供する。
• 責任ある事実に基づくジャーナリズムを推進するため、複数のプラットフォームや多国間の手段を通じて、視聴者やパートナーに働きかける。
⑦ 連邦議会は、国家情報長官室を中心とする省庁間グループを設置し、次のことを行う。
米国の企業、大学、個人が、中国における潜在的なビジネス・パートナーや学術パー
トナーについてデューデリジェンスを行:う際に役立つ公開データベースを構築する。
こ
のデータベースにより、利用者は中国の軍、統一戦線工作部、情報機関、安全保障機関が、
中国企業、投資会社、その他の金融機関、研究機関、大学とどのようにつながっているか
を特定できるようになるはずである。
⑧ 米国議会は、米国国務省に対し、米国商務省および米国大統領府と連携して、以下
のことを行うよう指示する。
米国貿易開発庁、中国の融資およびその他の金融慣行が「一帯一路」構想に与える影響
について、2年に1度、公的な評価書を作成する。
一帯一路参加国に対し、米国の外交的•プログラム的関与を通じて中国の活動の影響に
対処するためのベストプラクティスを提言する。
• このような慣行が、特に受益国の腐敗や社会の安定に与える影響を考慮する必要
がある。
• 米国議会は、報告書の調査結果に基づき、米国国務省に対し、開発金融公社、米国
貿易開発庁、その他の関連機関との調整のもと、EUと協力して、一帯一路構想の
下での中国の活動が第三国に及ぼす影響に対処するための統一的なアプローチを
開発する。
⑨ 米国議会は、中国のソーシャルメディア・アプリケーションによってもたらされる
国家安全保障とシステム上のリスクに対処するため、立法による制限を検討すべきである。
中国による次世代労働力への教育訓練
⑩ 米国議会は、米国国務省に対し、留学生に関して以下のような行為が明らかになった
場合、学生ビザ取り消しの根拠とするよう求めるべきである。
留学生が、外国国家の情報機関、治安当局、法執行機関、政党当局に成り代わっているこ
とが明らかになった場合や他の学生の市民的または政治的言論をこうした機関に報告した
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り、そうするように脅迫したりすること。国務省は、ビザ失効のための適切な証拠資料および基準を作成するものとする。
⑪米国議会は、データベースへのアクセスに関する情報、米中間の科学協力を含む情報
共有の双務性を評価したGA〇(会計検査院)の報告書を要請する。そこには、中国で進行
中の研究活動、プロジェクト、シンポジウム、その他の科学技術活動に米国の学術界及び専
門家がアクセスできる情報を含めるものとするさらに、そうした研究協力や活動により、比
較可能な情報や価値が提供され、中国からの研究者たちが国際会議や米国内のさまざまな
場所で入手可能なものと同等の比較可能な情報やそれに見合う価値のものであるかどうか、
調査すべきである。
北京の技術的野心に足かせとなる金融債務問題
⑫中国の輸出業者による関税回避に対抗するため、議会は2015年執行保護法(Enforce
and Protect Act of 2015)における貿易救済法の申し立てに関する調査手続きを改正し、2018
年「通商法301条に基づく、技術移転、知的財産、イノベーションに関連する中国の法律、
政策、慣行に関する調査結果」に基づく関税対象商品を含める。
⑬ 米国議会は、上場企業の中国へのエクスポージャから生じるリスクについて、投資家
により高い透明性を提供するため、企業の情報開示要件の枠組みを確立する法案を検討する。
この枠組みに含まれる要素には、企業の中国における総資産の割合、中国企業との合弁
事業、中国での研究開発の量と性質、および企業の意思決定において、中国共産党と関係の
ある企業関係者の影響力などが含まれるがこれらに限定されるものではない。
⑭ 経済合同委員会は、中国経済の現状と中国共産党の経済政策決定に関する非機密の年
次報告書の作成を再開することを検討すべきである。この報告書は、米国政府内の専門知識
を広く活用し、オープンソースや機密データ、調査結果を分析するものである。メンバーに
はインテリジェンス部門の関係機関からのアナリストやエコノミストが含まれる。
⑮米国議会は、FRB (連邦準備制度理事会)を含む連邦金融当局に対し、銀行や投資機
関からの中華人民共和国へのエクスポージャや関与に関する具体的な情報を求めることを
義務付ける法案を検討する。このような情報には、金融機関が中国国内で提供する資産管理商品や、金融機関が米国市民に直接または間接的に販売する可能性のある中国の投資ビー
クルも含まれるものとする。
外国軍と中国との関係
⑯ 米議会は、米国防総省と米国務省に対し、外国の軍人を教育•訓練する中国のプログ
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ラムに関する機密ブリーフィングを、180日以内に議会の該当委員会に提出するよう求め
る。このブリーフィングは、中国の教育•訓練プログラムが米国の利益にどのような影響を
及ぼすかについて、以下を含め言及すべきである:
(a) 中国の安全保障支援と訓練プログラムの価値に対する外国の軍事パートナーの評価、
(b) 米国の軍事教育と訓練プログラムの規模と内容が、優先的パートナーとしての米国の
地位を維持するのに十分かどうか。
⑰ 米議会は、米国防総省(DOD)に対し、2000会計年度国防権限法第1201条に概説さ
れたDODの人民解放軍(PLA)との接触に関する制限を基礎とし、PLAが米軍及び米国
の同盟国•パートナー国との交流を通じて米軍の装備や作戦戦術、技術、手順に関する間接
的な知識を得るリスクを軽減するためにDODが講じている措置を詳述した報告書を180
日以内に提出するよう求める。
報告書は、これらのリスクに対するパートナーの十分な認識を確保し、コンプライアンスを確保するために必要なフォローアップと最終使用の監視を実施する上での障害を特定すべきである。
兵器、技術そして輸出管理
⑱ 米国議会は、単一の輸出許可制度を確立する可能性を評価するための公聴会を開催す
る。そのようなシステムは、米国商務省産業安全保障局が管理するデュアルユース技術に関
するライセンス制度であるCommerce Control List (CCL)及び米国国務省国防貿易管理局
が管理する軍需品に関するライセンス制度である米国軍需品リスト(ML)を統合すること
になるだろう。
単一の許可制度の可能性を評価するにあたり、議会は以下を考慮すべきである:
• 単一のライセンス制度が、特に、中国のような企業の所有権や商業的提携の透明性に
欠けている管轄国における特定のエンドユーザーを対象とした輸出規制の執行を改
善できるかどうカ、。
• ライセンス制度を統合することによる、ビジネス上の影響の可能性。そこには、国家
安全保障を損なうことなく、産業界にコンプライアンス上の負担を如何に軽減する
かを含む。
• どの技術を複合された制度に含めるか、また、デュアルユースの新興•基盤技術に対
する規制の進展に対応するため、適切な技術的専門知識をどのように統合するか。
• 米国の安全保障、外交政策、経済競争力を向上させる多国間輸出規制を提唱するため
に、国務省やその他の関連機関に適切な情報と権限を提供する方法。
⑲ 米国議会は、対米外国投資委員会(CFIUS)に対し、外国による技術自給能力の獲得
を支援したり、米国の経済競争力を損なったりする可能性のある米国企業への投資を審査
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する権限を与える。
• 中国の第14次5カ年計画、中国製造2025など、潜在的敵対国の産業政策で優先さ
れる技術分野その他に関連した取り組みへの投資。
• 米国国防省、商務省、エネルギー省、その他の米国政府から、国家安全保障や競争力
強化に不可欠なプロジェクトへの資金提供を受けている米国企業への投資。
• 米国の経済・技術競争力の維持に不可欠な専門知識、ビジネスネットワーク、生産方
式への特権的アクセスを提供する可能性のあるその他の投資。
⑳ 米国議会は、中国から輸入される電子製品によってもたらされる国家安全保障上の脅
威を評価するため、リスクマトリッ クスの枠組みを確立す る。脅威マ トリック ス評価で特定
されたリスクを排除または軽減するため、議会は関税を含むあらゆる貿易手段の使用を検討すべきである。
㉑ 米国議会は、最近課された、中国が特定の先端半導体の製造能力を獲得または開発す
ることを妨げる輸出管理規制の有効性について、一般会計検査院による180日以内の評価
を要請する。
報告書には、主要な同盟国政府、米国および外国に拠点を置く企業、から受けた協力の程
度についての評価ならびにこれらの規制を回避しようとする、あるいは独自の能力を開発
することによってその有効性を否定しようとする中国の努力についての評価を含めるべきである。
この評価は一般に公表するために作成されるべきであるが、機密扱いの付属文書を含め
ることもできる。報告書は毎年更新されるべきである。
欧州と中国の関係
㉒米議会は米国防総省に対し、欧州のパートナーと協力し、中国の国家運輸•物流公共
情報プラットフォーム(LOGINK)及び中国共産党もしくは中華人民共和国政府によって
管理され、それに属し、もしくはその管轄下にあるその他の物流プラットフォーム、または
そのようなシステムとデータを共有する物流プラットフォームを通じた中国の監視から、米軍の装備品、物資、人員の移動を保護するよう指示する。
欧州のパートナーとの調整には、以下を含むべきである:
• NATO諸国において、中国やその他の懸念国のLOGINKや類似のシステムを現在
利用している、あるいは利用しようとしている港湾を特定する;
• 米軍が現在および過去において、LOGINKまたは類似のシステムを通じて中国の監
視にさらされている可能性、およびそのような監視から生じる米国の利益と国家安
全保障に対するリスクを評価すること;
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• 現在L OGINKやそれに類するものを利用していない、あるいは利用する予定のない
港を経由する代替航路の採用このようなシステムへのエクスポージャを避けようと
することによって生じる、米軍のプログラム、活動、運動に対するあらゆるリスクを
特定することを含む。
• 欧州の港湾におけるLOGINKおよび類似システムによるエクスポージャ•リスクを
軽減するための共同対策の実施。
㉓ 米国議会は、台湾をめぐる対立、中国のロシア支援のエスカレート、あるいはその他
の不測の事態が発生した場合に、中国に経済制裁を科す計画や準備について、欧州の同盟国と協議するよう政権に指示する。
議会はまた、これらの協議の進抄状況について議会と協議
するよう、政権に指示する。
㉔米国議会は、米国貿易開発庁、開発金融公社、米国標準技術研究所(NIST)に対し、
米国が支援する技術標準の推進を、米国が資金を提供する開発プロジェクトや海外で提供される技術支援にどのように組み込んでいるかについて報告するよう指示する。
㉕ 米国議会は、電気自動車(EV)および新エネルギー車(NEV)の安全なサプライチェ
ーンを確立するため、以下に関する米• EU •英国の協調を促進する法案を検討するよう、政権に指示する。
• 中国のEV、NEV、および関連するインプットや技術に対する関税の引き上げまたは
維持。
• EV • NEV市場におけるサプライチェーンの多様化と回復力の促進。
台湾関連
㉖ 米議会は米国防総省(DOD)に対し、台湾が発注し、まだ納入されていない武器シ
ステムの熟練化訓練を台湾にひとたびこれらのシステムが納入されればこれらを迅速に導入できるようにするため、米国内での台湾軍の訓練実施を拡大するよう指示すべきである。
米議会は、米国防総省が台湾からの常設オブザーバー •チームを米軍の訓練施設や基地
に常,駐させ、そのよう な訓|練を視察・参加 させる権限を与える べき である。
㉗米国議会は、中国による偽情報や台湾に対する攻撃的なサイバー作戦を摘発し、分析
し、これに対抗するために、米国と台湾が共同で運営する「センター ・オブ・エクセレンス」を設立する法案を可決すべきである。
このセンターは、NATOのNATOサイバー防衛協力
センター(CCDCOE)をモデルとし、教育、訓|練、研究を通じて、偽情報とサイバーセキュ
リティに関する協力、能力、情報共有を促進することができる。
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㉘ 米国議会は米国務省および関連諸機関に対し、人民解放軍による台湾封鎖および/ま
たは台湾隔離で予想される経済的影響を検証する非機密の報告書を作成するよう指示する。
(1)1年以内の世界貿易と生産への影響、(2)持続的な封鎖によって最も破壊的なダメージを
受ける上位10部門、(3)こうした事態からG7各国の国内経済に予想される影響についてま
とめるものとする。
香港関連
㉙米国議会は米国務省に対し、香港自治法で義務付けられている年次報告書に、香港政
府が運営する強制積立基金(MPF)年金プログラムを含め、香港から移住した者の香港で
の金融口座へのアクセスを制限していることに関する情報をまとめるよう指示する。
当該報告書の調査結果に基づき、政権は2020年香港自治法に基づいて、移住の自由を制
限することに関与した個人に制裁を科すべきである。米国議会は、香港人の資金運用に携わ
る米国拠点の金融機関が、香港政府の要請により年金資金を正当な所有者から差し止めることにより、移住の自由の侵害を助長することを防止するためのさらなる措置を検討してもよい。
㉚米国議会は香港自治法を改正し、義務付けられている年次報告書の内容に、香港にお
ける司法の独立性に対する制限に関する評価を追加する。
具体的には、行政長官や中国政府を代表するその他の機関が、香港基本法で保証されて
いる公正で独立した裁判を受ける権利を侵害するような形で、香港の司法制度に不当な影響力を行使していないかどうかを評価すべきである。
報告書の調査結果に基づき、議会は2020年香港自治法に基づいて、香港最終控訴裁判所
の外国籍裁判官を含む、香港で勤務する香港司法関係者に制裁を科すことができる。』
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