全銀ネット、システム刷新先送り 障害の再発防止を優先
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB030Y20T00C24A6000000/
『2024年6月5日 5:00
【この記事のポイント】
・銀行間送金網を担う全銀ネットがシステム刷新を先送り
・23年に生じた障害を受け、移行リスクを考慮した設計に
・新たなスケジュールは今秋に正式決定する見通し
国内の銀行間送金網を運営する全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は、2027年に予定していたシステム刷新を先送りする。23年秋に発生したシステム障害で計約255万件の送金が滞り経済社会への影響が出たことを重く見て、再発…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
『銀行間送金網は「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」と呼び、1000超の金融機関が参加して1日平均13兆円の送金に利用される金融インフラの根幹だ。1973年の運用開始以降、おおむね8年に1度のペースで更新しており、現システムは19年から稼働している。』
『刷新を見送るのは23年秋に稼働後初めて発生したシステム障害の再発防止策を徹底するためだ。10の金融機関で計約255万件、受け取りを含めて500万件超の送金が滞った。全銀システムと金融機関をつなぐ中継コンピューターのソフト更新の際に発生した不具合が原因となった。事前の検証が不十分だったとの指摘もあり、金融庁は資金決済法に基づく報告徴求命令を出した。』
『全銀ネットは23年12月に危機管理の強化などを柱とする再発防止策を公表した。次期全銀システムの移行についても「大規模障害のリスクを考慮した移行方法を検討する」と明記した。システム刷新にあたり、リスクの低い移行方法の実施や、事前の試験内容を充実させるなど複数の対策を検討する時間を確保する。
参加行が現行システムに支払っている利用料は年3500万〜2億円弱の規模にのぼる。次期全銀システムの運営費は従来に比べて下がると期待されており、参加各行の負担は計画より増える可能性がある。』
『キャッシュレス口座を提供するフィンテック企業が参加しやすくする対策に関しては従来方針を維持する。全銀ネットは現システムの下で、各社との接続手法を専用の端末経由から「API」と呼ぶ低コストのソフトウエアを活用する方式の導入を25年7月に予定していた。今回、同方式の導入を25年11月とすることを確認した。年内に利用申し込みの受け付けを始める予定。フィンテック企業と銀行による競争が活発になれば、利用者が負担する手数料の引き下げを期待できそうだ。』
『次期システムでは、本人確認などの基盤となる振込先の口座番号から受取人の口座情報を確認できる機能の実装を計画していた。現在外部システムから同機能を提供するNTTデータが25年にAPIを使う機能改修を実施する方針も決め、システム刷新の遅れの影響を抑える。』
『従来は全銀ネットと参加行それぞれが結んできた契約は「集団契約」に移行する。これまでに比べて必要だった契約の手間を大幅に減らす考えだ。
受取人の口座確認システムは欧州などがすでに提供開始を決めたほか、オーストラリアや英国も機能の開発に動く。米国やカナダも検討しているという。全銀システムの取扱高は年間3000兆円規模と堅調に推移している。刷新の遅れを技術革新の遅れにつなげない取り組みが重要になる。
【関連記事】
・次期全銀システム、更改へ検討組織 全銀ネットが設置
・全銀ネット障害、メモリー不足が原因 金融庁に報告書
・全銀ネット障害、NTTデータ製ソフトが不具合の原因
・全銀システム「障害ゼロ」偏重にもろさ、復旧対応後手に 』