インド、大国化へ「サウス」利用 自国優先で中国に対抗

インド、大国化へ「サウス」利用 自国優先で中国に対抗
Polar Shift サウスの論理 防衛大・伊藤融教授
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB30EU80Q4A530C2000000/

『2024年6月4日 5:00

「世界最大の民主主義」を自負するインドで権威主義的な動きが強まっている。経済規模を拡大させ「グローバルサウス」と呼ぶ新興国の盟主を自称する同国は国際秩序にどのような影響を与えるのか。南アジア外交・安全保障が専門の伊藤融・防衛大学校教授に聞いた。

――インドはグローバルサウスの盟主をめざしているのでしょうか。

「モディ首相らは自分たちがグローバルサウスだと唱えているが、まとめ役を自認しているにすぎ…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』

『サウス諸国を味方につけて中国と違う秩序を築きたいという思惑がある」

「議長国を務めた2023年の20カ国・地域(G20)首脳会議で合意を形成するためサウスの概念に飛びついた。一方で47年までに先進国入りするとの目標も掲げる。あくまで大国になるためサウスという概念を利用しているのだろう」

――グローバルサウスの国々はインドを盟主と捉えているでしょうか。

「捉えていないとみられる。例えば中国は政治体制にかかわらず経済や政治外交の面で支援するが、インドには他国に拠出できる十分なお金もない」

「インドはコメの輸出を制限し、他のサウス諸国の食糧事情を脅かしたり価格高騰を招いたりした。ナショナリズムを優先し周辺国の支持を失う事態に陥った」

――パレスチナ自治区ガザの衝突ではイスラエルを支持してサウス諸国の不評を買いました。

「サウスから総スカンだった。特にイスラム圏では『どこがサウスの盟主だ』との怒りが広がった。インドはロシアとの戦略的関係が重要さを増し、ウクライナ侵略は静観している」

――それでもインドがサウス諸国に影響力をもっている理由は何ですか。

「気候変動や貿易の問題でサウスの本音を映した意見を国際社会に発信してくれるのが一因だろう。インドからみれば自己主張をしているに過ぎないが、途上国にとっては便利な存在だ」

――インドの権威主義的な体制には米欧から批判もあります。

「モディ氏は米欧の民主主義だけが民主主義ではないと唱えている。この核心は個人の権利や人権より国家が先にくることだ」

「インド国内ではインフレへの不満が政権に向き、国民もその強権ぶりに気づき始めている。インドが多様性のある民主主義国家として復活する可能性はまだ途絶えたわけではないとみている」

【関連記事】

・新興国「自由より成長」 選挙×強権のオルタナ民主主義
・ハイブリッド化する新興国政治 民主主義と権威主義併存
・新興国の権威主義、選挙通じて強化 社会の亀裂を利用 』