アジア、紛争飛び火を警戒 米中に緊張緩和求める

アジア、紛争飛び火を警戒 米中に緊張緩和求める
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM021A00S4A600C2000000/

『2024年6月2日 21:56

アジア安全保障会議(シャングリラ会合)が2日、閉幕した。ウクライナと中東で続く紛争をアジアに飛び火させないよう、緊張緩和をめざすアジア諸国の訴えが飛び交った。米国は中国批判を抑制し、1年半ぶりの米中国防相の対面会談という成果も上がった。

オースティン米国防長官の1日の演説は前回2023年と様変わりしていた。台湾情勢に触れたのは「台湾海峡の現状維持を支持」と話した1カ所のみ。中国軍が1週間前に台湾…

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『中国軍が1週間前に台湾周辺で断行した大規模軍事演習にも触れなかった。

23年の演説では「紛争が起きれば壊滅的だ」などと、中国の軍事活動の危険性を聴衆に訴えかけた。今回はトーンを抑え、演説直後に開かれた昼食会では中国の董軍国防相と握手を交わした。』

『会議の場で米中の緊張緩和を求める声を上げたのはアジアの国々だった。

「地域の安定には米中両国が責任を持って対立を管理する必要がある」。南シナ海の領有権を巡り中国と対立するフィリピンのマルコス大統領は強調した。「武力や威嚇」に触れながらも、中国の名指しでの批判は避けた。

マレーシアのカレド国防相も米中の対話継続を求めた。南シナ海や台湾海峡の緊張に危機感をあらわにし「私たちはどちらかの味方を強要されるべきではない」と中立の立場を強調した。

ロシアのウクライナ侵略に加え、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が勃発し各国の立ち位置は複雑だ。新興・途上国の「グローバルサウス」にはイスラム教徒が多い国もある。

シンガポールのシンクタンクが実施した東南アジアの識者を対象にした調査で、米中の選択を迫られたら「中国を選ぶ」との回答が初めて半数を超えた。こうした世論も背景に、新興国の間でイスラエルに肩入れしてきた米国と一定の距離を置く動きがじわりと進む。
インドネシアの次期大統領、プラボウォ国防相は演説でイスラエルとパレスチナ双方の権利を考慮するよう主張した。アジアでの米中の緊張について「幻滅している。非同盟の立場で米中が協力できるよう努力する」と声を上げた。』

『中国に変化はみえない。

「強大な人民解放軍を前にした台湾独立分子は、戦車を止めようとするカマキリのようなものだ」。中国の董軍国防相は2日の演説で、台湾総統に就任した頼清徳(ライ・チンドォー)氏に圧力をかけた。台湾と南シナ海で自国の主張を展開し続けた。』

『中国には国際会議の場で独自の世論戦を展開する好機に映るが、観客は冷淡だった。

シンガポールのウン・エンヘン国防相は最後のセッションで唱えた。「台湾は複雑な問題。独立も強制統一もしないという現状が最善の妥協点だろう」

(シンガポール=佐藤史佳、田島如生、飛田臨太郎、藤田祐樹、甲原潤之介)』