米国「台湾侵攻にらみ中ロが協力」 米軍の態勢見直し検討

米国「台湾侵攻にらみ中ロが協力」 米軍の態勢見直し検討
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0505W0V00C24A5000000/

『【ワシントン=坂口幸裕】米政府は台湾への武力侵攻を想定した中国とロシアの軍事協力を警戒を強めている。

台湾有事で米軍を派遣すれば核保有国である中ロと直接対峙するリスクがあり、中ロ関係の動向を踏まえて米軍の能力や装備・人員の配備計画の見直しを検討する。

米情報機関トップのヘインズ国家情報長官は2日、連邦議会上院の公聴会で中ロが合同軍事演習を始めたことに触れ「政治、経済、軍事、技術などあらゆる分野での…

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『米情報機関トップのヘインズ国家情報長官は2日、連邦議会上院の公聴会で中ロが合同軍事演習を始めたことに触れ「政治、経済、軍事、技術などあらゆる分野での無制限のパートナーシップの強化を示している」との認識を示した。

中ロ首脳は2022年2月の共同声明で「中ロの友好・協力関係に制限はない」との文言を盛り込んだ。22年以降、両国は台湾に近い東シナ海・西太平洋で合同軍事演習を実施。ヘインズ氏は「中国がロシアに協力してほしい場であるのは間違いない」と述べた。

米国防情報局のクルーズ長官は中ロが軍事面での結びつきを強めている現状を受け「それを考慮して(米軍の)部隊構成や計画をつくる必要がある」と表明した。「脅威の程度や実行する作戦などを精力的に検討する。計画の改定作業中だ」と明かした。

出席議員からは中ロが連携して台湾を侵攻する事態も視野に入れ、両国と戦う能力や装備・人員を配置する必要性も問われた。クルーズ氏は「それも考えて計画を立てなければならない」と語った。

米国の歴代政権は中国が台湾侵攻に動いた場合の対応を明確にしない「戦略的曖昧さ」を維持してきた。「台湾海峡の平和と安定の維持を可能にしてきた」(サリバン大統領補佐官)と評価しつつ、バイデン氏は中国が侵攻すれば台湾防衛のために軍事的に関与すると明言する。

中国がロシアとの軍事協力に傾く背景には、台湾侵攻に動いた際、核大国であるロシアと直接戦火を交える事態を望まない米国が台湾防衛にかかわるのを思いとどまるよう釘を刺す狙いが透ける。

米戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・カンシアン氏は欧州との緊張が高まるさなかにロシアが台湾有事に当初から軍を派遣する余裕はないと指摘。「ロシア軍の存在を示せば米国やその同盟国に戦力投入をためらわせる効果があり得る」とみる。中国軍への燃料補給などの面で「ロシアは大いに役立つ」と分析する。

米国は中国がロシアによるウクライナ侵略も支えているとみる。4月下旬に訪中したブリンケン米国務長官は軍事転用可能な部品や技術の対ロ輸出を停止するよう働きかけた。

ヘインズ氏は2日の議会公聴会で、中国から軍事双方に利用できる「デュアルユース」の材料や技術を輸出していることが「(戦局に)莫大な影響を及ぼしているのは間違いない」と断言。「ロシアの防衛産業にとって中国が圧倒的にナンバーワンの供給者だ」と語った。

米政府は中国が殺傷力のある武器をロシアに供与した事実はないと分析する。ヘインズ氏は弾薬用火薬に使用される原料「ニトロセルロース」などの「デュアルユースの材料を提供してきた」と言及した。米メディアによると、工作機械やジェットエンジンなども供与してきた。

フランスのマクロン大統領は6日、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との会談後の記者会見で中国がロシアに武器を売らないことや、軍事転用が可能な材料の輸出を厳しく管理すると約束したと明らかにした。米欧は対抗措置も辞さない構えで、中国に対ロ支援をやめるよう圧力をかける。

米ハドソン研究所アジア太平洋安全保障部長のパトリック・クローニン氏は中国による対ロ支援は23年末にピークに達したと指摘し「縮小する可能性がある」と見方を示す。「『無制限』のパートナーに流れる全てのデュアルユース技術を真剣に抑制すると思えない」と訴えている。』