データセンター建設頓挫 住宅近接で「迷惑施設」扱い
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC182QS0Y4A410C2000000/
※ 『流山市まちづくり推進部都市計画課の海藤大輔課長補佐は「住民はDCに対して『えたいの知れないもの』という感覚を持っていたのではないか」と指摘する。』…。
※ ヤレヤレな、話しだ…。
『千葉県流山市のデータセンター(DC)の建設計画が、地域住民の反対で頓挫した。東京都渋谷区に本社を置く「流山綜合開発K」という企業が、流山市役所の目の前にある1万2877平方メートルの土地で進めていた、地上4階・地下1階建てで高さ28メートルのDC建設計画だ。流山綜合開発KはこのDC開発のために設立した特定目的会社だ。
開発区域はもともと「飛地山」と呼ばれていた場所で、2018年ごろにマンションの…
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『開発区域はもともと「飛地山」と呼ばれていた場所で、2018年ごろにマンションの建設を目的に整地された。しかしマンション建設は周辺住民との交渉がまとまらず、用地は流山綜合開発Kに売却された。
流山綜合開発KはDCの建設を進めるため、用途地域の変更を要望する都市計画提案書を20年11月に流山市へ提出した。その結果、22年1月にこの土地はそれまでの第一種住居地域から商業地域に変更され、建ぺい率は60パーセントから80パーセントに、容積率は200パーセントから400パーセントへとそれぞれ緩和された。
ただし流山市は「流山市街づくり条例」を設け、大規模な開発を行う事業者に対し、計画を市に申請して市長の認定を受けるよう義務付けている。流山綜合開発KがDC建設の計画を市に申請したところ、住民向けの説明会や市の「街づくり委員会」が設けたヒアリングの場では懸念の声が相次いだ。
住民は住宅隣接地に高さ28メートルの建物が建つことに不満だっただけでなく、DCを実際に運用する事業者や工事の進め方などについて質問しても、具体的な答えが返ってこなかったことに不信感を高めていった。流山市まちづくり推進部都市計画課の海藤大輔課長補佐は「住民はDCに対して『えたいの知れないもの』という感覚を持っていたのではないか」と指摘する。』
『現在は2棟目を建設中だが、敷地の周りには「年中稼働、屋上大型エアコン室外機の騒音は心身に及ぼす公害である」などと主張する看板が今も立つ。
この土地は開発を制限する「市街化調整区域」に指定されていたが、柏市は20年に新しい地区計画を策定、DCを建設できるようにした。』
『東京都昭島市では、日本GLPが進める「GLP昭島プロジェクト」に対して住民が反対の声を上げている。
JR昭島駅から徒歩10分ほどの場所にあるゴルフ場だった58万8000平方メートルの土地に、高さが最大55メートルの物流施設を3棟、高さが35メートルのDCを8棟建設する計画だ。物流施設の延べ床面積は92万300平方メートル、DCの延べ床面積は29万2040平方メートルという巨大プロジェクトである。
この土地は戦前、昭和飛行機工業が工場や滑走路として利用していた場所で、戦後に米軍が接収し、ゴルフ場に作り替えられた。土地の用途は準工業地帯であり、物流施設やDCの建設について制約がない場所である。
地元住民による「昭島巨大物流センターを考える会」は、物流施設の計画撤回を主に求めている。DCに関しては建物の高さや水の問題について不安の声が上がった。
昭島市の上水道は全て地下水からくみ上げており、DCにおけるサーバー冷却などで地下水が大量に使われると市民生活に影響が出る恐れがある。
そのためGLP昭島プロジェクトのDCでは、サーバー冷却には水を使わない冷凍機(チラー)を使用し、従来のゴルフ場で使われていた深井戸からの揚水は行わないことになった。水の問題は解決された。』
『大規模化と郊外立地で住民が反発
かつてDCは、駆けつけやすい都心部にある商業地域や工業地域に建設されることがほとんどだった。こうした土地は開発の制約が少ないため、住民からの反発の声も上がりにくかった。
ところが最近のDCは大規模化し、それまで住宅しかなかったような郊外に立地するようになった。そのため住民から迷惑施設扱いされ始めている。』
『千葉県印西市など、DC建設をむしろ歓迎する自治体もある。同市の板倉正直市長は「DCは物流施設などと比べて固定資産税額が圧倒的に高くなる」と指摘する。DCにおいては建物だけでなくサーバーなどのIT(情報技術)機器も固定資産税の課税対象となるためだ。
印西市では米グーグルや米エクイニクスなど大手事業者がDCを建設している。印西市でDCが増えても問題にならなかったのは、準工業地域や第二種住居地域など開発が容易な土地が豊富にあったためだ。これらの土地は当初、千葉ニュータウンの宅地として造成されたが、利用されなかったため1990年代までに土地用途が変更されていた。
つまり流山市のように第一種住居地域だった場所に大規模DCを建てようとすると、あつれきが生じるわけだ。DCを建設するのであれば、立地に注意が必要だ。選択を誤ると、DCが建てられなくなる。』
『首都圏の郊外で工業地域などが確保できないのであれば、首都圏以外に目を向けるのが賢明だ。
グーグルのグループ企業とされるAsa合同会社は23年、広島県三原市の「本郷産業団地」で27万5000平方メートルの土地を、和歌山市の産業団地「コスモパーク加太」に37万平方メートルの土地をそれぞれ確保。いずれの場所でもDCを建設する方針であると報じられている。DC事業者はグーグルの選択も見習うべきだろう。
(日経コンピュータ 翁羽翔)
[日経コンピュータ2024年4月18日号の記事を再構成]』