イスラエル首相、ICCの逮捕状警戒 検察官がガザ調査か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR30B450Q4A430C2000000/

『2024年5月1日 0:29 (2024年5月1日 1:28更新)
【ブリュッセル=辻隆史、カイロ=岐部秀光】国際刑事裁判所(ICC)がイスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスの戦闘をめぐり双方の関係者に逮捕状を出す準備をしているとの観測が強まっている。イスラエルのネタニヤフ首相は国際的な孤立が深まりかねない事態に危機感を募らせる。
イスラエルとハマスの戦闘は双方が休戦交渉で歩み寄りをみせ、きわめて微妙な段階にさしかかっている。このタイミングでの逮捕…
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『イスラエルのネタニヤフ首相は国際的な孤立が深まりかねない事態に危機感を募らせる。
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イスラエルとハマスの戦闘は双方が休戦交渉で歩み寄りをみせ、きわめて微妙な段階にさしかかっている。
このタイミングでの逮捕状発行が、双方の話し合いを頓挫させかねないリスクを欧米や周辺アラブなど関係国は深刻に受け止めている。
ロイター通信によると、ICCの検察官はガザ北部にある地域最大のシファ病院と南部ハンユニスのナセル病院の関係者から事情聴取した。イスラエル軍が激しく攻撃したナセル病院の地中からは400人近くの遺体が見つかった。ICCがイスラエルの戦争犯罪について捜査しているとの観測を裏付ける。
ICCは人道に対する罪や戦争犯罪などを裁くため、2003年に常設裁判所としてオランダ・ハーグに設置された。裁判官や検察官がおり、国際法に基づき訴追、処罰をする。3月には日本人女性の赤根智子裁判官を新所長として選出した。
パレスチナや日本を含む120以上の国・地域が加盟する。米国やイスラエル、ロシア、中国などは参加していない。
ICCは21年、パレスチナ自治区での戦争犯罪について、同裁判所の管轄権が及ぶと表明。捜査を開始した経緯がある。
23年10月にイスラエルとハマスの衝突が始まった後、ICCの主任検察官は双方の戦争犯罪行為が捜査対象になるとの見解を明示した。
ネタニヤフ氏は26日、ICCの対応に関し「兵士や公人を脅かす危険な前例になる」と語り、強い反発を示した。
米ニュースサイトのアクシオスは、ネタニヤフ氏がバイデン米大統領に逮捕状発行を阻止するよう助けを求めたと報じた。
ICCは23年3月、ロシアのプーチン大統領らに逮捕状を出した。ウクライナ侵略を巡る子どもの連れ去りに焦点をあてたが、ロシアはICCに加盟していない。プーチン氏が実際に訴追される可能性は低い。
ICCの設立条約である「ローマ規程」の締約国は、逮捕状を出された人物が自国の領土に入った際に拘束することが求められる。公判のためにハーグのICC本部に移送するためだ。国家首脳の逮捕は戦争につながるリスクもあり、ハードルは高い。
それでも国際規範を形成する重要な機関であるICCが逮捕状の発行に踏み切れば、イスラエルの国際的な孤立が深まるのは必至だ。イスラエルの侵攻が国際社会に「戦争犯罪をもたらす」と周知されれば、さらなる攻撃への抑止効果も働く。
ICCの判断は、他国によるイスラエル支援にも響く。
「ICCは戦争犯罪を捜査するのに適した機関だ。法の上に立つ者はいない」。ドイツのショルツ首相はプーチン氏への逮捕状発行の際、こうした見解を示した。
日本はICCの運営に必要な分担金の最大の拠出国だ。イスラエルや支援国への国際的な圧力が強まりつつある。
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福井健策
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分析・考察 大国の影響を受けない、120以上の国・地域が参加する、国際的に正当化された唯一の国際犯罪を裁く裁判所。加盟国を縛る、逮捕状発行権限あり。900名の職員を擁し、率いるのは日本出身の赤根智子所長。
考えてみたらすごいことですね。
逮捕状に実効性がないという意見もありますが、それは公的な国際的評価となり、厳に発行された政治家は外遊への制約にもなっています。
多極化し、憎悪の連鎖に悩む世界にとって、ICCの役割は今後さらに大きくなるかもしれません。
少なくとも日本は、憎しみやデマでなく法の支配する世界に向けて、ICCをもっと後押しすべき立場にありますね。
2024年5月1日 8:09 』