米陸軍の長距離攻撃能力、タイフォン・システムをフィリピンに一時配備
https://grandfleet.info/us-related/u-s-armys-long-range-attack-capability-the-typhon-system-temporarily-deployed-to-the-philippines/
『2024.04.16
米太平洋陸軍は15日「第1多領域任務部隊が演習(Exercise Salaknib 24)に参加するためフィリピン・ルソン島北部にMid-Range Capability missile system(中距離ミサイルシステム=Typhon Weapon Systemのこと)を配備した」と発表した。
参考:US Army’s Mid-Range Capability makes its first deployment in the Philippines for Salaknib 24
米陸軍が初めてTyphon Weapon Systemを海外に派遣、台湾有事を想定した一時配備
米太平洋陸軍司令官のチャールズ・フリン大将は昨年11月「2024年にTyphon Weapon Systemをインド太平洋地域に配備する予定だ」と明かし、インド太平洋地域の何処に配備するのかについては「西海岸に配備される可能性はない」と述べ、朝日新聞も今月4日「Typhonはグアムに配備され、訓練目的で一時的に日本へ移送される可能性が高い」と報じていたが、米太平洋陸軍はフィリピンにTyphon Weapon Systemを一時的に配備したらしい。
出典:U.S. Army photo by Capt. Ryan DeBooy
米太平洋陸軍は15日「第1多領域任務部隊が演習(Exercise Salaknib 24)に参加するためフィリピン・ルソン島北部にMid-Range Capability missile system(中距離ミサイルシステム=Typhon Weapon Systemのこと)を配備した」「C-17に積み込まれたMRCは15時間以上をかけてワシントン州ルイス・マコード統合基地からフィリピンに到着した」「この画期的な配備はフィリピン軍と連携して相互運用性、即応性、防衛能力を強化し、新たな能力の重要なマイルストーンになるだろう」と発表した。
INF失効に伴い米陸軍は長距離攻撃能力(射程500km以上)を再取得中で、ブースト・グライド・ビークル搭載の極超音速兵器=Dark Eagleを運用するLong-Range Hypersonic Weapon、トマホークとSM-6を運用するTyphon Weapon System、HIMARSで運用するPrecision Strike Missileの開発・実用化を進めている。
出典:U.S. Army photo by Capt. Ryan DeBooy
MK.41を流用したTyphon Weapon SystemはトマホークとSM-6を運用予定で、SM-6は迎撃ではなく地上目標を攻撃するために使用され、S-300やS-400が迎撃弾を対地攻撃に転用しているのと同じ考え方に近い。
弾道コースで目標に接近するSM-6は発射から着弾までの時間が短いため敵の対応時間が限られ、トマホークはSM-6よりも遠くの目標を攻撃可能だが着弾まで時間がかかり、トマホークとSM-6は静止目標を攻撃するという意味では同じだが、目標へのアプローチが異なるため補完関係にあるのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Photo by Darrell Ames
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投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 9 』
『 折口
2024年 4月 17日
返信 引用
第1列島線”に対する”接近拒否領域拒否戦略ですね。
500kmといえば台湾の南東側は概ね射程に入ります。米国の艦艇が第1列島線の内側に入れないように、PLANの艦艇もフィリピン海に入れない状況を作る=台湾を海上封鎖する能力を中国に与えないという明確なメッセージですね。
米軍のフィリピン領内での展開能力や体制維持が有事にどの程度持続するのかについて自分は懐疑的ですが、政治的に「中国は台湾を好きなときに包囲できる訳ではなくなった」という状況を示せるのが重要なんでしょうね。
中国は「戦って勝つのは銀、戦わずに勝つのが金」の国です。
これは現代的に言い換えれば同じ結果でもコスパに優れるほうを選ぶということで、その延長線上にあるのが「台湾の国民に戦っても無駄であることを理解させる」事です。
台湾の多数を占める外省人も中国人とエートスを共有する集団であり、上に同じく「結果が同じ敗北ならコストの少ないほう(降伏や自主的融和)を選ぼう」と考える素地は持っていると思います。
その意味で、陳腐な言い方ですが日米は台湾の有権者に対して主権や独立への希望を常に持たせ続けなければいけないですし、そのための一つの答えがフィリピンを抱き込んだ対中包囲網形成なんでしょうね。(台湾の北東側を占める日本の対応もまた注視されていることでしょう)
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