【トランプは台湾を“見捨てる”のか?】頼清徳次期政権が進めうる新たな戦略

【トランプは台湾を“見捨てる”のか?】頼清徳次期政権が進めうる新たな戦略
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/33470

『2024年4月12日

2024年3月13日付Taipei Times紙の社説は、バイデンの一般教書演説が台湾海峡の平和と安定を含む国際問題に焦点を当てたことを評価するとともに、孤立主義のトランプが11月に選ばれる場合に備え、台湾の頼清徳次期政権は米国や近隣諸国と対中脅威を共有し新たな戦略を立てるべきであると述べている。
(HUNG CHIN LIU/gettyimages)

 バイデン米大統領は3月7日、台湾海峡の平和と安定を支持することを約束した。彼の一般教書演説では初めてのことだ。彼は、「われわれは中国の不公正な経済慣行に反対し、台湾海峡の平和と安定のために立ち上がる」と述べた。

 バイデンは、アジア太平洋地域における国家のパートナーシップと同盟関係を再活性化させ、米国の最先端技術が中国の兵器に使用されないようにしたと付け加えた。

 11月の米大統領選挙はバイデンとトランプとの再戦になりそうだが、バイデンの一般教書演説は、米国の利益を優先する取引型の指導者で国際問題では孤立主義をとるトランプよりバイデンの方が国際問題で良い仕事をしてきたと主張できたと考えられている。

 バイデンの言葉は、台湾海峡を越えて増大する中国の軍事的侵入への警告のみならず、中国の経済的不公正と地政学的拡張主義との戦いは、ロシアと同様に大きな課題となるとの基調を打ち出した。バイデンの演説は、台湾を含む米国とその同盟国との関係を破壊する中国のプロパガンダによって長い間宣伝されてきた「アメリカ懐疑論」の台頭にも立ち向かった。

 5月に発足する頼清徳次期政権は、米国の選挙に備えるとともに、米国と相互に信頼できる有益な関係を確保するために、新たな戦略を立てるべきである。優先事項の一つは、台湾と中国の緊張関係をインド太平洋の枠組みの下に置き、米国の外交政策がその影響力を維持し、この地域の秩序を保つようにすることである。』

『台湾は、国際的に志を同じくする民主主義国家、特にフィリピン、インド、日本、韓国との協力も進めるべきだ。昨年、中国海警局がフィリピンの船舶に軍事用レーザーを照射して以来、マニラは少なくとも18カ国と新たな安全保障協定を結んでいる。

 台湾は、それに学び、中国の侵略を抑止すべく、台湾海峡だけでなく南・東シナ海にわたる安全保障作戦を確立すべきだろう。脅威認識の共有は、戦略的関係を緊密化するのに最も重要な原動力の一つとなる。

 台湾の次期政権は、中国の強圧的な拡張主義に対する米国と国際社会の懸念を最大限に利用し、国家の主権と発展を守ることに貢献すべきである。

*   *   *

台湾が「捨てられたコマ」とならないために

 バイデン米大統領は、米国議会での一般教書演説の中で、台湾防衛の重要性を強調し、米国としては、中国からの「仮想の侵攻(hypothetical invasion)」に対し、台湾防衛の強い決意を有していると表明した。

 Taipei Timesは、このことを解説するとともに、台湾海峡の緊張を緩和するためには、自由と民主主義の価値を共有する国々との広範な協力関係が必要であるとして、フィリピン、インド、日本、韓国などを挙げている。そして、特に中台間の緊張をインド・太平洋のフレームワークの中で扱い、脅威認識を共有しつつ、米国が主導力を発揮するのが望ましい、と述べている。

 Taipei Timesによれば、本年11月の米大統領選挙では、バイデンとトランプの一騎打ちになる公算が大きいが、トランプは「米国の利益を第一に」と強調し、国際場裏では「孤立主義」政策をとるものとみられており、これに対し、バイデンはこれまでの発言を見る限り、中国の経済、貿易面での不公正慣行や地政学上の膨張主義などへの警戒心を隠していない。つまり、Taipei Timesの立場は、バイデンの主張に近く、トランプが大統領になることへの警戒心を有しているように見える。』

『台湾の中では、米国はいざという時、台湾を見捨てることはないだろうかという「疑米論」が論じられたことがあったが、このような米国の行動に対する悲観論は、中国が流した情報戦の一端であったかもしれない。

その後、中国では「台湾弁公室」の報道官が、台湾は「チェスのコマ」どころか、「捨てられたコマ」になるだろう、という類の情報を流している。

米国の歴史的な姿勢

 なお、米国の台湾防衛への基本的立場を振り返っておきたい。

米国政府は、台湾との間に外交関係がないにもかかわらず、「台湾関係法」(1979年4月10日)という国内法を議会主導の下で通過させ、この国内法上、実質的に台湾に防禦的性格の武器を供与することをコミットしている。

 「平和手段以外によって、台湾の将来を決定しようとする試みは、ボイコット、封鎖を含むいかなるものであれ、西太平洋地域の平和と安全に対する脅威であり、合衆国の重大関心事と考える」(第2条)、というのは、終始変わらぬ米国の立場を記述したものである。

 武器供与を含め、米台間で具体的にいかなる対中戦略・戦術がとられているかについては、一般に公開されていない。

しかし、最近も米軍の特殊部隊が台湾本島において台湾軍との間で共通の軍事演習を行ったことが報じられており、米台間での緊密な軍事協力関係が維持・強化されていることがうかがえる。

 他方、「一つの中国」との立場を固持する中国は、頻繁に台湾周辺海域の中間線を越える海域に軍艦・軍用機を送り、台湾を恫喝している。

特に、最近は、台湾の離島「金門島」を囲む形で、この海域に軍艦を「常駐」させ、現状変更を試みていることは、強い警戒心を要する点である。』