イスラム教徒、気がつけば隣人 在日信者20万人超
シニアライター 野沢康二
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB0364U0T00C24A4000000/
『2024年4月4日 0:00
イスラム暦「ラマダン」中のいま、日本で暮らすイスラム教徒たちも断食を実践している。日本の人手不足が深刻なことを背景に在日信者は増え続けている。20万人を超えているとみられ、気がつけば既に隣人になっている。
東京・目黒区の閑静な住宅街に立つ東京インドネシア共和国学校。3月末の週末の夜、ヒジャブと呼ばれる布で髪の毛を覆った女性や、白、黒の帽子などを身に着けた男性ら数百人が集まった。ほとんどが東京周辺…
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『ほとんどが東京周辺に住むインドネシア人のイスラム教徒だ。
「また1日、断食ができた。空腹は耐えられるが、のどの渇きは本当に辛い」。4歳の男の子を連れて参加した女性は、友人と食事を楽しみながらこう話した。
イスラム教徒は1日の断食を終え、日没後に食事する(3月31日、東京・目黒)
3月半ばに始まった今年のラマダンは4月9日ごろまでおよそ1カ月間続く。断食は、1日5回の礼拝や喜捨などとともに信者の義務とされ、日中は食べ物だけでなく飲み物も口にしない。インドネシア人たちは、日没後の礼拝と食事をともにするために足を運んだ。
男性信者は、断食によって「貧しい人が食べられない気持ちが理解でき、助け合う気持ちも育つ」と話す。夕食をともにすることで、仲間意識を高めることにもつながっているようだ。
日本で暮らすイスラム教徒は年々増えている。店田廣文・早稲田大学名誉教授の調査によると、日本人も含めた信者数は推計で2020年末には約23万人に及ぶ。1990年の3万人弱、05年の10万人強から急増した。
文化庁の最新統計で神道、仏教に次ぐ第3グループであるキリスト教徒の126万人の2割近くになっている。
例えば少し混んだJR東日本の山手線だと、単純計算で1編成の乗客のうち平均4〜5人ほどがイスラム教徒となる。外国人観光客も含めればさらに多いとみられ、日本人にとってイスラムはより身近な存在になってきたと言っていい。
日本のイスラム教徒を出身国別で見ると、最大勢力は約5万8000人のインドネシア人だ。「イスラム=中東」というイメージが強いが、インドネシアは国民の9割近い2億人を超える世界最多のイスラム信者を抱える国で、両国の関係の深さも考えれば当然とも言える。
特に最近は人手不足が深刻な看護や介護分野の人材も多く来日している。出入国在留管理庁によると、在日インドネシア人は23年6月末には12万人2000人に達し、20年末の6万7000人からほぼ倍増している。その多くがイスラム教徒とみられ、ますます存在感が高まる。
イスラム教徒の人口は世界でも増える一方で、米ピュー・リサーチ・センターの予測では、50年には世界最多のキリスト教徒と並ぶ世界最大の宗教の1つになる。日本で活況を呈する海外観光客の受け入れでも、アジア人を中心にイスラム教徒が一定数おり、教義に従ったハラル食品の提供に対応する飲食店も目立ってきた。
少子化に伴う深刻な労働力不足を受けて、外国からの人材誘致も盛んになりつつある。イスラム教も含めた多様な宗教や言語、文化を持つ人も増えており、多様性を受け入れる素地があまりなかった日本社会は変化を求められている。
それでも、日本ではイスラム教をテロなどと結びつける人が少なくないのも事実だ。これに対して、信者たちは「イスラムは平和を求める宗教だ」と口をそろえる。
世界に目を向ければ、イスラエル軍が侵攻したパレスチナ自治区ガザ地区を巡って、国連安全保障理事会がラマダン期間中の停戦を求める決議を採択した。しかし、現地ではイスラム教徒中心の住民が引き続き悲惨な状況に置かれている。
集団礼拝では、仲間意識を高める効果もある
インドネシア学校での集団礼拝に参加して講演したNPO法人千葉イスラーム文化センターの杉本恭一郎理事長は、ラマダンは信者が神であるアラーをより意識する神聖な月で「(苦境にある)イスラム同胞を心配する気持ちが高まる」と説明する。杉本さんはこの時期、信者向けにガザについての話をする機会も多いという。
世界中で、平和を願う祈りが続く。
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