数学はおもしろくない? 数式は世界を表す言葉
学びのツボ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD188AB0Y4A310C2000000/


※ こういう「衒学的なもの」で、脅すからいかんのだ…。
※ 今流行りの「AI」なんかで、使われている「数式」は、ずっと「易しい」ぞ…。
※ 殆んど、高校の数学の延長で、理解できる…。
※ 大学レベルの、「高等数学」は、不要だろう…。
※ まあ、「量子物理」なんかやって、「量子コンピューター」の開発者にでもなろう…などというのなら、また「別の話し」なんだろうが…。
『2024年4月3日 2:00
大学生の皆さんの中には数学が苦手という人も多いでしょう。素因数分解や三角関数が何の役に立つのかと考えるかもしれません。実は数学を使えば、世界の様々な現象を説明できます。世界の共通言語ともいえます。テクノロジーの進化で、今後、数学を知らないと困ることになりそうです。どう付き合ったらいいのでしょうか。
映画監督で漫才師の北野武さんは2000年代半ば、東京大学の学生らと数学の問題に挑むバラエティー番組を企画しました。深夜の放映にもかかわらず人気が高く、7年半も続きました。数学にはまっていた北野さんの発案だったそうです。起業家の川上量生さんは家庭教師を雇って現代数学を学ぶほど好きになり、私財を投じて数学の研究所をつくりました。
2人は理工系でしたが、数学への関心が高まったのは中高年になってから。共通するのは「数学はおもしろい」という実感です。
おもしろさとは何でしょうか? 正確に問題を解くことではありません。まず、様々な自然現象を説明できることです。「フィボナッチ数列」を例に説明してみましょう。2つ前と1つ前を足し合わせた数の並びで、1、1、2、3、5、8、13、21…と続きます。不思議なことに、植物の葉の付き方や巻き貝、台風の渦など、自然にみられるらせんは、この数列に近い比率で曲線を描きます。
また、数列の隣り合う数の後ろの数を前の数で割ってみましょう。1÷1=1、2÷1=2、3÷2=1.5、5÷3=1.66…、8÷5=1.6と次第に1.618の「黄金比」に近づきます。人間が美しいと感じる黄金比は、パルテノン神殿やミロのビーナス、モナリザといった芸術作品の中にも見られます。
数学は人間の日常的な感覚では獲得できないような想像力を与えてくれます。アルバート・アインシュタインは1910年代、物体の存在が周囲の時間と空間をゆがめ、その結果として重力が生じるのではないかと思いつきました。しかし、理論化できず、苦労していました。その際、19世紀の純粋数学が役立ちました。友人の助言で、ゆがんだ空間を表す「リーマン幾何学」を学び、数式化することに成功しました。これが一般相対論です。
アインシュタインは「数学に対して深い尊敬の念を抱くようになった」と語っています。理論はブラックホールなど宇宙の謎を解くカギとなり、全地球測位システム(GPS)にも応用されています。
自然現象だけではありません。スポーツや座り心地がよい椅子、渋滞の発生、株価の動きなど、いろいろなモノの中に数学が存在します。ネットの検索、盗み読みされないための暗号技術、画像処理、アルゴリズム(計算手順)など、IT(情報技術)社会は数学に支えられているといえるでしょう。
世界から物理学者が集まる東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構では、廊下の黒板に数式が一杯に書かれている
数学のルールは世界共通です。数式で表現した法則や現象が正しいのかどうか、世界中の専門家の目で検証できます。ややこしい数式や記号も、世界共通の知識を得るための言語といえます。こうした歩みを経て、人間は科学や技術を進歩させてきたのです。
大学入試までの数学は与えられた問題を素早く解くことが求められました。そのための思考法やパターンをいかに多く身につけるかがカギになります。
受験のためのテクニックは社会に直接、役立つわけではありません。しかし数学を学ぶことは、社会を生きていく上での能力を高めることにもつながります。
例えば、論理的思考力(ロジカルシンキング)。結論と根拠のつながりを考えたり、結論に至るまでの明確な道筋を立てたりしながら、物事を論理的に捉えるスキルです。日本企業が新卒社員に求める能力の上位に入っています。
数学では、問題を正しく把握し、すでに証明された定理などの道具を使いながら正解にたどりつく必要があります。途中の段階のそれぞれに根拠を持ち、確実に考えを展開する能力を身につけることができるのです。
データを分析した結果から何を読み解くのかという能力を養うこともできます。例えば「給料の高い会社では労働生産性が高い」という傾向が見つかったとします。給料が高いから生産性が高くなったのか、労働生産性が高いから会社の収益が上がって給料が高くなったのか、わかりません。他の要因があるかもしれません。原因と結果の因果関係にあるかどうかを、感覚的ではなく論理的・客観的に見抜く目が必要です。統計や確率など数学の素養があれば有利になります。
数学を学ぶことで、困難な問題をいくつかの段階に分割して考えたり、抽象的な内容を具体的な事例から推察したり、一見すると処理が難しい課題を別の方法に置き換えて考えたりするスキルが鍛えられます。社会人になってから数学を学び直す人も多くいます。あたなもぜひ数学と向き合ってみてください。(編集委員 青木慎一)=随時掲載
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