トヨタ、「下山産」レクサスに挑む コース施設全面運用
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD015K10R00C24A4000000/




『2024年4月2日 14:14 (2024年4月2日 18:42更新)
トヨタ自動車は2日、愛知県豊田市と岡崎市にまたがる新たな研究開発施設「トヨタテクニカルセンター下山」の全面運用を始めたと発表した。高級車「レクサス」部門の事業・開発拠点が入り、険しいテストコースを活用して車両が改良できる。車両開発に関わる人材や設備を下山地区に集結させ、電気自動車(EV)も含めて商品力を向上させる。
全区域の運用が3月下旬に始まり、同施設で2日、地元関係者を招いた「お披露目式」が…
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『全区域の運用が3月下旬に始まり、同施設で2日、地元関係者を招いた「お披露目式」が開かれた。豊田章男会長はあいさつで「『走って、壊して、直す』を毎日毎日、何度も何度も繰り返せる場所。これから『下山産のクルマ』が世界のあらゆる道を走り、たくさんの人を笑顔にしていく」と話した。
式典であいさつするトヨタ自動車の豊田章男会長(2日午前)
新たに完成したのは「車両開発棟」を含む西側の区域で、全体で計約3000人の従業員のうち約2000人が勤務する。同棟にはレクサス部門のほか、モータースポーツを統括する「GR(ガズーレーシング)」部門が入る。この他の中央と東の区域は運用を始めていた。
これまで本社(豊田市)や元町工場(同)の別々の建物にいた技術者らを一同に集める。開発車両をテストコースで走らせて課題を洗い出し改良する工程を、同施設だけでもできるようにする。同施設は本社から車で約30分の立地で、本社とも一体で開発を進められる。
トヨタ自動車の新しい研究開発施設「トヨタテクニカルセンター下山」(2日午後)
テクニカルセンター下山はテストコースを計12本備えている。中でも「カントリー路」は全長5.3キロメートルで高低差が75メートルある過酷なコースだ。世界屈指の難コースである独ニュルブルクリンクを参考に設計し、約4分の1のスケールという。
ニュルブルクリンクはトヨタを含む世界の自動車メーカーが車両のテスト走行で活用している。豊田会長は報道陣の取材に「ドイツに行かないとできなかった走行試験が日本でできるようになる」と強調した。
この他、トヨタとして最長の直線2キロメートルのコースも設けており、燃費性能の計測に役立てる。欧州の山岳地帯や、雪や氷で滑りやすい道、凹凸のある道もコースで再現している。投資額は約3000億円に及ぶ。
「トヨタテクニカルセンター下山」の車両開発棟
レクサスは今後のトヨタのEV戦略の中核を担う。現行車よりも性能を大幅に向上させる「次世代EV」と呼ぶモデルを26年にも投入する方針だ。35年にはレクサスブランドの全車種をEV化する計画を掲げる。新施設の全面運用により、開発力を底上げする。
EVは電池のコストや開発投資が重く利益を出しにくい。一方で、比亜迪(BYD)などの中国勢はEVの低価格化で攻勢をかける。トヨタが高級車のレクサスブランドで販売を伸ばすには、性能や乗り味がカギを握る。今後、市販化の近い車は同施設で走行試験させる方針で、EVを含むラインアップの競争力を磨く重要な拠点となる。
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