テスラ世界販売9%減 1〜3月、約4年ぶりマイナス

テスラ世界販売9%減 1〜3月、約4年ぶりマイナス
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『2024年4月2日 22:21 (2024年4月3日 0:25更新)

【ニューヨーク=川上梓】米電気自動車(EV)最大手のテスラが2日発表した2024年1〜3月期の世界販売台数は前年同期と比べ9%減の38万6810台だった。15四半期ぶりにマイナスとなった。

主要市場の米国や中国では販売が苦戦した。ドイツ工場が火災などで生産停止したことも響いた。

テスラの世界販売が四半期ベースで前年実績を割り込むのは、5%減となった20年4〜6月期以来、15四半期ぶりとなる。

主要市場で販売が苦戦した。中国では、現地メーカーとの価格競争にさらされた。

調査会社のマークラインズによると、テスラの2月の中国出荷台数は約6万台で前年同月と比べ19%減った。23年に一部改良した「モデル3」で攻勢に出ようとしたが、現地勢の値下げにさらされ、価格競争力を失っている。

販売減少のなか採算確保に苦慮しており、1日には多目的スポーツ車(SUV)「モデルY」を約2%値上げした。

米国ではライバルとの競争に加え、EV市場の減速の逆風をうけている。米国では車種のラインアップの老朽化が指摘されている。米国でもモデル3の一部改良版の投入を急ぐが、この生産準備の遅れも販売減少につながった。

23年11月には4年ぶりの新型EVである「サイバートラック」の出荷を米国で開始したが、マークラインズによると販売台数は24年2月末時点で1000台にとどまる。

欧州では、ドイツ工場の火災に加え、1月に紅海で起きたイエメンの親イラン武装組織フーシによる攻撃により供給網が混乱した。部品不足により「モデルY」の生産停止を余儀なくされた。

今回の販売実績の公表をうけて、テスラの株価は2日の米株式市場で一時、前日終値と比べ6%超下落した。23年のピークと比べて4割安い水準となっている。

中国の比亜迪(BYD)の1〜3月期のEV販売台数は前年同期と比べ13%増の30万114台だった。23年10〜12月期はBYDがテスラを上回ったが、24年1〜3月期はテスラが再びEVの世界販売で首位となった。

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深尾三四郎
伊藤忠総研 上席主任研究員
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今後の展望

小米カー登場でテスラは事業構造改革を急ぐ必要性が高まった。

3月28日に中国シャオミ(小米)が自動車産業に参入し、「モデル3」を上回る性能でありながら、採算度外視の割安な価格設定で中型セダンEV「SU7」を発表。発売後24時間で8万台もの受注を獲得、同社株価は約2割急騰と、世界を驚かせるゲームチェンジャーとなりつつある。

破壊的なコスパを誇る小米カーは業界変革の台風の目となり、中国勢を中心にEVメーカーは値下げ攻勢を更に強めることで、テスラ上海工場の稼働を下押す可能性が高い。

テスラはセダンでの熾烈な価格競争に耐え、小米が未開拓のSUVで値上げしながら、蓄電事業など非EV事業の拡大を急ぐだろう。

2024年4月3日 0:43

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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
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ひとこと解説

1年以上も値下げを繰り返してきたにもかかわらず成長が鈍化しているテスラ。メーカーとしても株式投資先としても熱狂が冷めてきています。

主戦場である米中において3万ドル以下の価格となる低価格モデルの投入までは、キャズムを超え、これまでの成長を超えるのは困難と見られ始めています。

先月には⒈2万ドルのFSD自動運転ソフトの1ヶ月無料提供検討を発表しましたが、自動運転レベル3実現の発表等、自動運転分野で熱狂する材料が出されるのを期待したいところ。

イーロンマスクの逆襲は必ずあると思います。

尚、BYDが前期比43%減の販売低迷となり、テスラは上記台数でも同四半期EV世界販売台数トップをBYDから奪還しました。https://ir.tesla.com/tesla-vehicle-production-deliveries-and-date-financial-results-webcast-first-quarter-2024

2024年4月2日 23:28 (2024年4月2日 23:44更新)』