元軍トップが執筆「台湾の勝算」 大艦巨砲主義と決別
世界の話題書 台北発
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM12A8L0S4A310C2000000/

『2024年3月30日 2:00
中国軍が台湾に侵攻する有事のリスクがささやかれる状況で、台湾軍の元トップが対応策を説いた『台湾の勝算』に脚光が当たっている。著者である元参謀総長の李喜明氏は5月に決まる次期国防相の候補にも名前が挙がる。有事論の行方を見極めようと、刊行から1年半たった今でも手に取る台湾人は多い。
台湾軍の12倍ほどの軍事予算をもつ中国軍にいかに対処するべきか。李氏の問題意識はここから始まっている。
大型の軍艦や戦…
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『台湾軍の12倍ほどの軍事予算をもつ中国軍にいかに対処するべきか。李氏の問題意識はここから始まっている。
大型の軍艦や戦闘機をそろえても、中国軍の弾道ミサイル攻撃で軍港や飛行場は一瞬で壊滅させられる可能性がある。』
『李氏は米軍のF35戦闘機やイージス艦は必要ないと主張する。最新鋭の戦車も山岳部が多く道の狭い台湾には不向きだと断じた。台湾域内を守る防衛力があれば十分で、中国を射程に入れる長距離ミサイルの有効性にも否定的だ。』
『編み出したのが「小型で分散でき、機動性と高い威力」をもつ武器への転換だ。いわば大艦巨砲主義を脱し、小型ミサイルを発射できる高速艇や、秘匿した場所から攻撃できるロケット砲、最先端の無人機(ドローン)などに切り替える考え方だ。』
『圧倒的な物量を誇る中国軍に同量の戦車や戦闘機の「伝統的戦力」で対抗するのは不可能に近い。携行式の対戦車ミサイル「ジャベリン」や高機動ロケット砲システム「ハイマース」などで戦う「非対称戦」を提唱した。李氏は「総体防衛構想」と名付けた。』
『同書が出版されたのは2022年9月。17年から2年あまり参謀総長を務めた李氏が執筆しただけに、同書は反響を呼んだ。斬新な発想に活路を見いだすべきだと支持する意見がでる一方で、抑止力として長距離ミサイルや最新型の戦闘機も必要だとの見解もある。』
『伝統的戦力を重視してきた台湾国防部(国防省)からも反発がでた。李氏の構想は防衛予算の大幅組み替えにつながるだけでなく、陸・海・空の各組織にメスを入れることにもなりかねないためだ。
それでも防衛予算に小型のハイテク兵器が反映されやすくなった。蔡英文(ツァイ・インウェン)総統もたびたび「非対称戦」の装備の拡充に言及している。李氏の提案する改革論が一石を投じたのは間違いない。
李氏は取材に「米軍関係者と綿密に意見交換して書き上げた」と明かした。中国は軍事的拡張をやめる気配はない。同書が問題提起した議論の行方から目が離せそうにない。
(羽田野主)』