プベルル酸とは 「紅麹サプリ」から検出、青カビ由来
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC299EL0Z20C24A3000000/
『2024年3月29日 19:11
小林製薬の紅麹(こうじ)原料を含む機能性表示食品による健康被害を巡り、厚生労働省は29日、腎疾患の原因と推定される成分が「プベルル酸」の可能性があると同社が報告したと発表した。プベルル酸は青カビの一種が作る物質で抗菌作用があるものの毒性が強い物質として知られる。
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プベルル酸(プベルリン酸)は青カビの一種の代謝産物から見つかった天然化合物として、1932年に報告された。細菌の増殖を抑える抗生物質(抗菌薬)の特性を持つが、毒性が非常に高いという。プベルル酸はマラリア原虫に対する効果も高く、関連物質は抗マラリア薬の候補として研究されている。
カビの仲間は二次代謝産物と呼ばれる様々な化学物質をつくり出す。薬のように役に立つ有用な物質もあれば、人や動物に有害な「カビ毒(マイコトキシン)」もある。有用な物質の代表例は青カビから見つかった世界初の抗生物質「ペニシリン」だ。細菌による感染症を治療する抗生物質の先駆けとなった。
一方で、世界では300種類以上のカビ毒も報告されている。トウモロコシや落花生などから検出される発がん性のアフラトキシン類をはじめ、カビ毒による食品汚染がしばしば問題となる。カビ毒は熱に強く、加工調理しても分解しにくいため、農産物や食品の製造や貯蔵の段階からカビの増殖やカビ毒の発生を防ぐことが重要となる。
小林製薬の紅麹を含むサプリメントを服用した人では「尿細管間質性腎炎」などの腎臓疾患が報告されている。プベルル酸と腎臓疾患の関連は現時点では不明だが、化学物質や医薬品が腎臓疾患の原因になることもある。
腎臓には血液中の不要な物質をこしとって尿にする働きがある。腎臓の機能が落ちると不要な老廃物が血液にたまってしまい、体の様々な異常の原因になる。水分が排出されなくなって体がむくむこともある。腎臓の機能低下は人工透析によってある程度代替できるが、基礎疾患や別の病気を持つ患者の場合、死亡する場合もある。
細菌や真菌(カビ)の感染、特定の薬剤や重金属の摂取などは腎臓に悪影響を与える。抗生物質や鎮痛薬といった薬剤によってアレルギー性の炎症などが起きる場合もあるという。日本腎臓病協会理事長で川崎医科大学高齢者医療センターの柏原直樹病院長は「(今回の健康被害で報告がある)尿細管間質障害の診療では、サプリを含め常用している薬剤がないか調べるのが一般的だ」と話す。 』