マンション建て替え負担1人1900万円 消える老後の蓄え

マンション建て替え負担1人1900万円 消える老後の蓄え
老いるマンション㊦
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA17BLU0X11C23A1000000/

『2024年3月29日 2:00

「まさか10年もかかるとは思わなかった」。都内でマンションの建て替え事業を手掛けるデベロッパーの担当者はこう振り返る。

2010年代に管理組合から大規模マンションの建て替えを依頼されたが区分所有者の合意形成が進まず、決議がとれるまで長い年月を要した。

02年に制定されたマンション建て替え円滑化法は、改正を経て容積率を緩和するなどマンション再生を進めやすいようにした。ただ効果はいまひとつだ。

国…

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『02年に制定されたマンション建て替え円滑化法は、改正を経て容積率を緩和するなどマンション再生を進めやすいようにした。ただ効果はいまひとつだ。

国土交通省によると法律にもとづく建て替え実績は23年時点で累計114件にとどまる。平均すれば毎年5件ほどしか活用されていない。

背景には所有者にのしかかる重い費用負担がある。建て替え時に階数や戸数を増やせば、デベロッパーに売却して建設費の原資に充てることができる。だが高さ規制などが妨げとなっている。』

『工事に回せる余剰分が少ないと所有者の支払いが増える。国交省の調べでは、建て替えにかかる1人あたりの平均負担額は1996年までは344万円だった。資材高などによって2017〜21年にはおよそ1941万円と5倍超に膨らんだ。

金融庁が19年に示した老後の生活に2000万円が必要だとする試算は、十分な貯蓄を持たない人たちに衝撃を与えた。マンション住民にとっては老後の蓄えをしていても、建て替え費用がかさめば一気に資金が枯渇してしまう。』

『資材高などを受け、建物の大規模修繕に必要な積立金の額も上昇している。18年度のマンション総合調査によると、現在の積立額が計画に比べて不足しているマンションが3割を超えていた。

マンションには子育て世代から高齢者まで幅広い世帯が住む。建て替えや改修計画を巡る合意形成は容易ではない。

将来を見据えて資産価値を高めようと建て替えに前向きな若い世代と、貯金を老後の生活費に回したい高齢者層では住まいへの要求は異なる。』

『古いマンションほど区分所有者の高齢化が進む。国交省によると、築10年未満の住戸のうち世帯主が70歳以上の割合は8%だった一方、築40年以上では48%に跳ね上がった。』

『建て替え期を迎える建物は急増するが、住宅政策が時代の変化に追いついていないとの見方もある。たとえば面積要件だ。

国の制度は建て替え後に1戸あたり原則50平方メートル以上を確保するよう定める。マンション購入世帯の平均入居者数である4人を前提にする。

持ち家世帯の入居者数は2018年は2.35人となり減少傾向にある。築40年以上のマンションのうち面積要件を満たさない住戸は全体の2割程度を占める。単身世帯も増えて、コンパクトな住戸を求める声が高まる。』

『日本は新しい住宅を好む新築信仰が強いと言われてきた。人生で大きな買い物となる住宅をどう長く活用し、次世代に引き継ぐか。一人ひとりが発想を転換する時期にきている。

(金子冴月が担当しました)』

『多様な観点からニュースを考える
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大槻奈那
名古屋商科大学大学院教授/ピクテ・ジャパン シニア・フェロー
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ひとこと解説 マンション建て替えの最大の問題は費用ですが、高齢化もあり、あまり良い融資制度がありません。公的な融資制度でも現在の金利は年率最大3.5%と高く、2000万円借りたら、月5.8万円の利払いになります。

一方、丸々建て替えよりは費用が安い大規模修繕を選ぶマンションも増えるのではと思いますが、修繕の範囲に個人が占有する部分を含む場合、現在は「所有権者全員」の同意が必要とされており、建て替えよりもハードルが高いという矛盾が生じています。

来年度の改正を目指すとされていますが、早急な解決が待たれます。
2024年3月29日 8:50いいね
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山崎俊彦
東京大学 大学院情報理工学系研究科  教授
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ひとこと解説 特に地方のマンションに対して強くいわれていますが、東京でも都心から離れると修繕積立金の逼迫度(世帯収入に対する修繕積立金の割合)が大きくなる点が不動産研究により指摘されています。

報道では平均的もしくは特異的なものが取り上げられます。「自分の住むマンション、自分の住む地域はどうなの」と自分ごとで考えて見ることが肝要です。

マンションの修繕積立金と資産価値の関係性の空間分布構造に関する基礎的研究
長根乃愛,北垣亮馬,石田崇人
http://www.nii.ac.jp/dsc/idr/userforum/program_2017.html 

2024年3月29日 7:08』