「中国経済光明論」の宣伝強化と中国経済の悲観的見通しの公表制限の動向
一国家安全部は「経済安全保障の違法行為として取り締まる」と警告
https://www.cistec.or.jp/service/uschina/20240214-1.pdf
※ 今日は、こんな所で…。
2024.2.14
CISTEC事務局
【全体の構成】
I 「中国経済光明論」の宣伝強化と中国経済の悲観的見通しの公表制限
I!サイバースペース管理局による「誤った価値観」助長の取り締まり等
III国家安全部の警告の根拠規定:«反スパイ法実施細則»第8条
IV国家安全部の記事「事実の誹謗中傷は許さない!」
別添:中国国家安全部「事実の誹謗中傷は許さない!«反スパイ法»が“ビジネス環境を破
壊する”という4つの誤り」記事(仮訳)
I 「中国経済光明論」の宣伝強化と中国経済の悲観的見通しの公表制限
・中国経済の悲観的見通しの公表制限の動き
OWSJ (2024.2.2付)は『中国のネットから消える経済悲観論』との記事で、中国経済の苦
境についての記事、論説がメディア等から消えつつあり、「財新」「第一財経」等の、政府
の意に反する経済分析、見通しに関する記事が閲覧不可になったことを報じている(後
述)。
〇その背景として、以下の点を挙げている。
① 習近平主席の側近らが]月、「中国経済について明るい見通しを広める」よう当局に促
したこと。
② 国家安全部が異例の警告を出して、経済について否定的意見を述べる人物を警戒するよ
う呼び掛け、「経済安全保障は国家安全保障の要の一つだ」としたこと。
•「中国経済光明論」の宣伝強化
〇「中国経済の明るい見通しを広める」というのは、2023年12月11-12日に行われた中
央経済工作会議において、2024年の方針の一っとして「経済宣伝、世論の誘導を強化し、
『中国経済光明論』を高らかに謳う」ことが打ち出されたことが契機となっている。
そこでは、経済以外の政策である宣伝•世論誘導が、マクロ政策の重要な柱と位置付け
られている。
•「憂患意識を増強し、これらの問題に有効に対応し、これを解決しなければならない。
総合的に見ると、わが国の発展が直面する有利な条件は、不利な要因よりも強く、経済
1
が回復上昇•好転し、長期に上向くというファンダメンタルズに変わりはなく、自信・
気力を増強しなければならない。」
•「マクロ政策は方向の一致性を増強しなければならない。財政・金融・雇用•産業・
地域•科学技術•環境保護等の政策の協調•連携を強化し、経済以外の政策をマクロ政
策の方向の一致性の評価に組み入れ、政策の統一を強化し、同方向に力を発揮し、シナ
ジーの形成を確保する。経済の宣伝と輿論の誘導を強化し、中国経済光明論(中国経済
の見通しは明るい)を鳴り響かせなければならない。」(田中修氏「2023年中央経済工作
会議を読み解く(その1)」より会議報告の抜粋。Science Portal China 2024年1月19
日付」)_________________________
〇これを受け、蔡奇氏(党中央政治局常務委員•中央書記処書記常務書記、中央弁公庁主任)
が、2024年1月4日の全国宣伝部長会議で演説し、改めて、宣伝と世論の誘導を強化し
て「中国経済光明論」を謳い上げるべきことを強調した(新華社2024.1.5付)。
•国家安全部による警告
〇国家安全部は2023年12月15日の公式SNSで、中国経済が大国間競争の「重要な戦場」
になっており、「中国経済を中傷しようとするさまざまな決まり文句が出続けている」と
し、「根底にあるのは、さまざまな偽りの話で中国の衰退に関する『言説のわな』と『認
知のわな』を作り上げることだ。
その目的は(中略)戦略的に中国を封じ込めて抑圧する
ことだ」と断じ、「中国の特色ある社会主義体制を攻撃している」として「経済安全保障
の違法行為を取り締まる」と警告した(共同通信2023.12.20付、WSJ 2024.2.2付)。
〇国家安全部はこれに先行して、国家安全部は12月初めに、「事実の誹謗中傷は許さない!
«反スパイ法»が“ビジネス環境を破壊する”という4つの誤り」との記事を掲載した(微
信・国家安全部2023年12月6日、7日付)。
その中で、誤りの一っとして、「«反スパイ法»はビジネス環境を悪化させ、外国企業の
対中投資に“萎縮効果”をもたらす。」との論を挙げた上で、「事実の真相:法治は最良のビ
ジネス環境であり、改正後の«反スパイ法»はより明瞭•正確、オープン•透明であり、
まさに中国法治建設の進歩を体現している。」とし、次のように説明した。
中国は確固不動としてハイレベルな対外開放を推進しており、この数年で«外商投資
法»、«外商投資法実施条例»、«ビジネス環境最適化条例»等の法律法規を相次いで実
施し、市場化、法治化、グローバル化された一流のビジネス環境の構築を継続してい
る。
先ごろ閉幕した第六回中国国際輸入博覧会では、参加した世界500強企業と業界
トップ企業の数は289社に達し、史上最多を記録した。
1年間の意向成約額は784.1
億USドルで、前年比6.7%増であった。
商務部の統計データによれば、今年の1-10
月に、全国で新たに設立された外商投資企業は41,947社で前年同期比32.1%増であ
った。中国物流購買連合会のデータによれば、今年わが国は貨物輸送路線180本を新
たに追加し、そのうち欧米とアジア路線が半数以上を占めた。中欧班列(CHINA
2
RAILWAY Express ;中国と欧州を結ぶ国際定期貨物列車)は合計14,562本が運航さ
れ、輸送された貨物は157.9万TEUで、それぞれ前年同期比6%、9%増であった。
これら一連のデータは、外商の対中投資•興業の確固たる自信を生き生きと反映して
いるだけでな く、中国の経済発展の見通しカヾ長期白勺に好転している こ と を示す最良の
証拠である。
•微博(ウェイボー)による「経済について否定的なコメント」をしないよう警告する通知
〇前掲WSJによれば、微博は昨2023年12月中旬に一部利用者に対し、「経済について否
定的なコメント」をしないよう警告する通知を送ったとのこと。
〇市場改革を支持することで知られる北京の経済メディア「財新」の社説(2023.12.25)が
文化大革命に言及し、文革当時、当局者が「状況は素晴らしい」と主張する裏で、人々の
生活は困窮していたとして、当局者に「事実から真実を求める」よう促した。「事実から
真実を求める姿勢を貫かなければ、不適切な政策を適時修正することはできない」とした
が、数時間のうちに閲覧不能となった。
〇エコノミストの李迅雷氏が、ニュースサイト「第一財経」に掲載したコラムで、中国指導
部が低所得層を支援する措置を取らない限り、家計の消費不足は続くと警鐘を鳴らすと
ともに、人口の約7割に当たる約9億6400万人が月収2000元(約4万1200円)未満
で生活していることを示す北京師範大学の調査結果を取り上げた。微博で直ちに拡散し
たが、すぐにアクセス不能となった。
・中国の経済統計を疑問視する分析や報道
〇中央経済工作会議においてマクロ政策の一環として位置付けられた経済宣伝と世論誘導
の強化による「中国経済光明論」の拡散の方針によって、中国の公式統計に対する疑問の
分析や報道も目立ってきている。
〇米国調査会社のロジウム・グループの報告書
- ロジウム•グループは、2023年12月29日付で、中国の2023年のGDP成長率目標
「5.0%程度」の達成に関して疑問視する報告書を公表した。
©Through the Looking Glass: China’s 2023 GDP and the Year Ahead (December 29, 2023)
https:/ / rhg.com/research/through-the-looking-glass-chinas-2023-gdp-and-the-year-ahead/
•そこでは、次のように、実際には1.5%程度であるとし、統計の正確さに関して「中国経
済光明論」による影響について懸念を示している。
•今年は予期せぬ経済の逆風によって減速したという明確な証拠があるにもかかわら
ず、中国は2023年のGDP成長率目標「5%前後」を達成したと主張することはほぼ
確実である。
不動産セクターの縮小、個人消費の抑制、貿易黒字の減少、地方政府の
財政の破綻などの現実は、2023年の実際の成長率が1.5%程度であることを意味す
る。今後、中国は不動産が底を打っため、2024年には3.0-3.5%の成長率に循環的に
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回復する可能性があるが、今後数年間は構造的な減速が支配的な状況であり続ける
のは間違いない。
今のところ、中国経済に関する公式メッセージは統制され、イデオロギー的に硬直し
たままである。CEWC (中央経済工作会議)の公式発表では、「経済宣伝と世論指導
を強化し、中国経済の明るい展望について前向きな言説を広める」ことが優先課題と
して挙げられている。企業にとっても政策立案者にとっても、2024年には中国経済
を批判的かつ客観的に見ることことがより重要になる。
〇ブルームバーグ記事
•ブルームバーグも2024年1月19日付で、2023年のGDP成長率5.2%の統計を疑問視
し独自推計する動きに関する記事を掲載している。
©Did China’s Economy Really Grow 5.2% in 2023? Not All Agree
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-01-18/did-china-s-economy-really-
grow-5-2-in-2023-not-all-agree
※抜粋記事「中国の5.2%成長は本当かー公式統計への疑念で独自推計まとめる動き」
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-01-19/S7HGQRTlUM0W00
•同記事では、国家統計局は「ますます政治化する行政環境」に陥っているとの見方がある
こと、各種の細かい公の情報源から得られるデータを元にした「ボトムアップ」アプロー
チは公式の統計よりも信頼できる面があるもののどのデータを取るかによってかなり差
が生じること、「ボトムアップ」アプローチも中国経済の発展に伴う活動の構造変化など
からその正確性を完全に疑っているエコノミストもいること等を述べた上で、「中国経済
はどの程度減速したのか。この単純な質問に答えるのは難しい」とのゴールドマン・サッ
クスのエコノミストの認識の紹介で結んでいる。
I!サイバースペース管理局による「誤った価値観」助長の取り締まり等
•サイバースペース管理局が「誤った価値観」助長動画の取り締まり方針発表
〇中国サイバースペース管理局は、2023年12月12日に、人々の生活に関する噂を広めた
り、悲観主義や過激主義など、正しくない価値観を助長する短い動画を対象にすると発表
した。。
それまでも、「誤った価値観」の助長の取締りも行われつつあったが、「悲観主義」もそ
れに含まれることになったのは、今回の発表が初めてとのこと(SCMP2023.12.12付)。
〇前掲SCMPが報じるところの大要は以下の通り。
•最高検閲機関であるサイバースペース管理局は、2020年以来、明朗快活を意味する
「清朗」として知られるオンライン取り締まりを毎年実施している。
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今年の取り締まりは、人々の精神衛生に役立ち、健全な競争空間を作り出し、ショ
ートビデオ業界の発展を助けるだろうとしている。
今回のターゲットのひとつは、社会的マイノリティに関するストーリーをでっち上
げて大衆の共感を得ようとするコンテンツ制作者だという。また、事件を演出し、「偽
の計画をでっち上げ、パニックを広める」人々も取り締まるとしている。
また、「間違った職業観」、「悲観主義と過激主義の助長」、「浪費と拝金主義」など、
イ ンターネットから排除したいいくつかの間違った価値観についても言及した。
2023年3月には、結婚、金銭、歴史、民族間の関係など、他の間違った価値観も対
象にすると述べていたが、今回初めて悲観主義が正しくない価値観のひとつに挙げ
られた。これはコロナの大流行後、国の経済が軌道に乗ろうと苦闘し続けている中で
の出来事である。
ここ数力月、この国の不動産セクターを巻き込んでいる危機の影響を受けた住宅購
入希望者の苦境を映した動画がいくつかネット上に出回っており、ネットユーザー
の間で将来の経済見通しに対する懸念が高まっている。
ここ数カ月、未完成の不動産に投資し、資金を失うリスクを負った人々による多く
の投稿が、特にDouyin (TikTokの中国版)では削除されている。
同局は2023年7月、生成AIに関する暫定規制を導入し、社会主義の核心思想に従
うこと、偏見を排除すること、プライバシーと知的財産を尊重することを基本として
いるとした。2021年から2022年にかけて、13億5000万件のアカウントが停止さ
れ、7600万件の違法または不適切なメッセージが削除され、1万500のウェブサイ
卜が閉鎖された。
•在中国米国大使館のHPのキリン保護サイトへの投稿「事件」
〇在中国米国大使館がSNS「微博」にナミビアのキリンの保護に関する投稿を行ったとこ
ろ、コメント欄に中国経済の苦境や株価下落についてネット民からの不満の書き込みが
殺到するという「事件」が各メディアで報じられた。同大使館が2月2日の夜に行った
この投稿は、5日朝までに16万件以上のコメントが寄せられ、71万9000件の「いいね」
がついたとのこと。
〇株式時価総額が過去3年間で6.3兆ドルが失われており、投稿当時、中国株式市場は前週
に続いて5日も続落し、上海と深刈|の株式市場に上場する約1800銘柄は10%以上も下
落したという状況にあった。
〇微博がこの件に関するコメントを削除し始めると、投資家たちは在中国インド大使館の
サイトへの投稿にシフトしたとのこと(WSJ、CNN. Newsweek日本版 各2024.2.6付)。
•生成AI管理規則の施行
〇中国政府は、2023年8月15日から、FChatGPTJのような生成AIの管理規則を施行し
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ている。これは、生成AIの健全な発展を促進し、国家安全と公益性を守り、国民や法人
などの権益を保護することを目的としている。
〇そこでは、セキュリティの審査を受けなければならないことなどが規定されているほか、
生成AIの提供者と利用者に「社会主義の核心的価値観の堅持」を要求し、国家政権転覆
や国家分裂の扇動、国家安全と利益に危害を加える内容などの生成を禁じている。
〇なお、同年io月11日には、中国政府機関「国家情報セキュリティ標準化技術委員会」
が、生成AIモデルに問題があるかどうか判断する方法に関し、詳細なルールを提案する
草案文書を発表したとのこと。「禁止コンテンツ」についても詳細なルールが定められて
いる模様。
◎中国テック事情:回答拒否率も規定、驚くほど具体的な生成AI規制案
(ASCII サイト 2023.12.5 付)
https://ascii.jp/elem/000/004/173/4173400/
m 国家安全部の警告の根拠規定:«反スパイ法実施細則»第8条
前掲の通り、国家安全部は、「中国経済を中傷しようとするさまざまな決まり文句が出続
けている」「根底にあるのは、さまざまな偽りの話で中国の衰退に関する『言説のわな』と
『認知のわな』を作り上げることだ。その目的は(中略)戦略的に中国を封じ込めて抑圧す
ることだ」「中国の特色ある社会主義体制を攻撃している」として「経済安全保障の違法行
為を取り締まる」と警告している。
これを違法行為として取り締まる根拠が何かとの点について、以下考察する。
•«反スパイ法実施細則»第8条の「スパイ行為以外の国家安全を脅かす行為」
〇改正反スパイ法の第70条の附則では、「スパイ行為以外の国家安全に危害を及ぼす行為」
についても、反スパイ法の関連規定を適用して処罰するとされている。
〇これを受けて«反スパイ法実施細則»(2017年11月22日施行)の第8条では、次の8つ
の行為を規定している(なお、同細則は改正反スパイ法下においても有効である)。
「スパイ行為以外のその他の国家安全に危害を及ぼす行為」の定義(第八条)
(一) 国家の分裂、国家統一の破壊、国家政権の転覆、社会主義制度の打倒を組織・画
策・実施する;
(二) 国家安全に危害を及ぼすテロ活動を組織•画策•実施する;
(三) 事実を捏造・歪曲し、国家安全に危害を及ぼす文章あるいは情報を発表•流布す
を或いは国家安全に危害を及ぼす映像•音楽製品あるいはその他の出版物などを
制作・伝播・出版する;
(四) 社会団体あるいは企業事業組織を設立し、国家安全に危害を及ぼす活動を実行す
6
るのに利用する;
(五) 宗教を利用して国家安全に危害を及ぼす活動を実行する;
(六) 邪教を組織•利用して国家安全に危害を及ぼす活動を実行する;
(七) 民族紛争を起こし、民族の分裂を扇動し、国家安全に危害を及ぼす;
(八) 国外の個人が関連規定に違反し、制止を聞かずに、国内の国家安全に危害を及ぼ
す行為あるいは国家安全に危害を及ぼす行為を行った、あるいは国家安全に危害
を及ぼす行為を行った重大な疑いのある人物と無断で面会する。__
※«反スパイ法実施細則»については、以下の資料を参照
◎中国の改正「反スパイ法」に関する補足(2023.6.30)
ー改正前の反スパイ法の実施細則/「重要データ」の類型/QA風補足解説
https:/ / http://www.cistec.or.jp/service/uschina/20230630hosoku.pdf
〇国家安全部から見れば、「中国経済を中傷し、さまざまな偽りの話で中国の衰退に関する
わなを作り上げ、戦略的に中国を封じ込めて抑圧しようとすることは、中国の特色ある社
会主義体制を攻撃する」ことは、「事実を捏造•歪曲し、国家安全に危害を及ぼす文章あ
るいは情報を発表•流布すること」に他ならないということになり、「経済安全保障の違
法行為」として取り締まる」という整理だと思われる。
〇この整理によれば、中国の公式統計という公式の「事実」に疑問を呈することや、「誤っ
た価値観」と見做される主張をすること、それ自体が違法行為ということになりかねない。
•国家安全部の警告「アドバイスに耳を傾けて、国家安全機関からこれら“io杯のお茶”に誘
われないように」の「十杯目のお茶」
〇国家安全部は、2024年1月30日付の公式SNSで、標記の警告を行った。
インターネット上でホットワードとなっている“請喝茶(お茶をどうぞ)”はネットユー
ザーによって“違法犯罪の疑いで事情聴取されている、または調査を受けている”という
意味が与えられている。«刑事訴訟法»«反スパイ法»等の法律法規は国家安全機関に刑
事上の法執行権限と行政上の法執行権限を与えている。それではどのような場合に国
家安全機関から“お茶に誘われる”のであろうか?我々は以下に10の主要な状況を整理
した。
〇その「十杯目のお茶」が、「スパイ行為以外の8つのその他の国家安全を脅かす行為」を
対象としている。
十杯目の“お茶”:スパイ行為以外の国家安全を損なう行為
«反スパイ法»の規定によれば、国家安全機関は法律・行政法規と国の関連規定に基
づいて、スパイ行為以外の国家安全を脅かす行為を防止•制止・処罰する職責を履行す
る。«反スパイ法実施細則»第8条にスパイ行為以外の8つのその他の国家安全を脅
かす行為を規定しており、国家安全機関は法に基づいて法的責任を追及する権限を持
7
つ。
IV国家安全部の記事「事実の誹謗中傷は許さない! J
■公式SNSでの記事「事実の誹謗中傷は許さない!」
〇国家安全部は、2023年12月6日、7日に上下2回に分けて、改正反スパイ法に対する批
判に関して、「事実の誹謗中傷は許さない!」との記事を掲載した。
〇そこでは、次のように述べている。
中国の正当な立法活動を尊重•支持する声が大多数を占めているが、悪意のある攻撃や
中傷も少なくない。
一部の下心のある国外勢力は煽り立て、火に油を注ぎ、«反スパイ
法»は“ビジネス環境を破壊する”という荒唐無稽な論調を流布し、中国は“国家安全保
障を一般化している”と辱め、中国における正常なビジネス活動が“スパイ行為”となる
可能性があると誇張している。このような有害な言論に対しては、法律自体と事実の真
相が最良の“消毒剤”である。
〇「このような有害な言論に対しては、法律自体と事実の真相が最良の“消毒剤”である」と
しているので、«反スパイ法実施細則»第8条(「スパイ行為以外の国家安全を脅かす行
為」)を「消毒剤」と位置付けているように見える。
■記事全文は、別添参照。
中国国家安全部「事実の誹謗中傷は許さない!«反スパイ法»が“ビジネス環境
を破壊する”という4つの誤り」記事
8
記事①:事実の誹謗中傷は許さない!«反スパイ法»が“ビジネス環境を破壊する”とい
う4つの誤り(上)(微信・国家安全部2023年12月6日)1
今年(2023年)4月«反スパイ法»改正後、国内外の世論の高い関心を集めており、中国
の正当な立法活動を尊重・支持する声が大多数を占めているが、悪意のある攻撃や中傷も少
なくない。一部の下心のある国外勢力は煽り立て、火に油を注ぎ、«反スパイ法»は“ビジネ
ス環境を破壊する”という荒唐無稽な論調を流布し、中国は“国家安全保障を一般化している’
と辱め、中国における正常なビジネス活動が“スパイ行為”となる可能性があると誇張してい
る。このような有害な言論に対しては、法律自体と事実の真相が最良の“消毒剤”である。
誤リ①:«反スパイ法»はビジネス環境を悪化させ、外国企業の対中投資に“萎縮効果”をもた
らす。
事実の真相:法治は最良のビジネス環境であり、改正後の«反スパイ法»はより明瞭・正
確、オープン・透明であり、まさに中国法治建設の進歩を体現している。
——安全は発展の前提であり、国家が開放的で安定したビジネス環境を維持するための
基盤である。世界各国を見渡せば、反スパイ活動の立法強化、法に基づく国家安全の擁護は
一般慣行であり、正当な行動である。«反スパイ法»の改正•整備は正常な立法活動であり、
中国の法治建設の不断な進歩の反映である。«反スパイ法»が“ビジネス環境を破壊する”、
“経済のデカップリングを加速させる”と煽り立てることは、まさしく屁理屈・邪説であり、
是非善悪をあべこべにしている。
—ー市場経済の本質は法治経済であり、明瞭明確な法律制度は企業が安心して投資•経営
をするための基本的保障である。«反スパイ法»の前進は1993年の«国家安全法»であり、
すでに施行されて30年になるが、条文は比較的単純で、その多くが原則的説明である。今
回の改正は条文を40条から71条に細分化しており、その重要な目的の一つは合法と非合
法の境界をより一層明確にし、法律規則の確定性を強化し、企業の違法に対する不確定性を
減少させ、企業がよりしっかりと法律法規に基づいて経営できるよう支援することである。
——中国は確固不動としてハイレベルな対外開放を推進しており、この数年で«外商投資
法»、«外商投資法実施条例»、«ビジネス環境最適化条例»等の法律法規を相次いで実施し、
市場化、法治化、グローバル化された一流のビジネス環境の構築を継続している。先ごろ閉
!「事安不容抹黑!«反|、司十業法>>“破坪菅商ナ不境”的四大昊(上)」(微信・国家安全部
2023 年12 月 6 日)https://mp.weixin.qq.eom/s/TwABdXgE2wuj5WwO9OZcXA
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幕した第六回中国国際輸入博覧会では、参加した世界500強企業と業界トップ企業の数は
289社に達し、史上最多を記録した。
1年間の意向成約額は784.1億USドルで、前年比
6.7%増であった。商務部の統計データによれば、今年の1-10月に、全国で新たに設立され
た外商投資企業は41,947社で前年同期比32.1%増であった。中国物流購買連合会のデータ
によれば、今年わが国は貨物輸送路線180本を新たに追加し、そのうち欧米とアジア路線
が半数以上を占めた。中欧班列(CHINA RAILWAY Express ;中国と欧州を結ぶ国際定期貨
物列車)は合計14,562本が運航され、輸送された貨物は157.9万TEUで、それぞれ前年
同期比6%、9%増であった。これら一連のデータは、外商の対中投資•興業の確固たる自信
を生き生きと反映しているだけでなく、中国の経済発展の見通しが長期的に好転している
ことを示す最良の証拠である。
誤リ②:«反スパイ法»は商業データを“国家秘密”とみなし、商業情報を正常に取得する行為
が“スパイ行為”となる可能性がある。
事実の真相:«反スパイ法»で取り締まるのはごく少数の国家安全を脅かすスパイ行為であ
り、正常な商業活動は対象としておらず、外国企業の中国における合法的な投資•経営に何
ら影響を及ぼさない。
——“スパイ行為”は重大な違法犯罪活動で、正常な投資、経営、科学研究等の活動とは全
く異なるものであり、法律さらには常識の上からも明瞭に区別される。中国の法執行部門の
方に基づくスパイ違法犯罪活動の調査を“外資企業の取り締まり”と歪曲するのは、典型的な
概念のすり替え、勝手な理屈である。
——“国家秘密”、“商業秘密”とは何かについて、わが国の法律で明確•明瞭に定義してい
る。
«保守国家秘密法»で詳細に列挙している7種類の国家秘密事項に“商業秘密”は含まれ
ておらず2、«反スパイ法»で規定した6種類のスパイ行為は、いわゆる“正常な商業情報の
2 (訳者注)«中華人民共和国保守国家秘密法»(2010年4月29日修訂)第9条に「以下に
掲げる国の安全と利益にかかわる事項は、漏洩後に国の政治・経済•国防•外交等の分野の
安全と利益を損なうおそれがあるもので、国家秘密と確定することとする:(一)国事の重
大決定における秘密事項;(二)国防建設および武装力量の活動における秘密事項;(三)外
交および渉外活動における秘密事項および対外的に守秘義務を負う秘密事項;(四)国民経
済と社会発展における秘密事項;(五)科学技術における秘密事項;(六)国の安全擁護活動
と刑事犯罪の追跡調査における秘密事項;(七)国家保密行政管理部門が定めるその他の秘
密事項。政党の秘密事項で前項の規定に合致するものは、国家秘密に属す」とある。参考;
「中^人民共和国保守国家秘密法(1988年9月5日第七届全国人民代表大会常多•委貝会第三
10
取得”とはさらにかかわりがなく、«民法典»、«反不正当競争法»、«刑法»等でそれぞれ商業
秘密の侵害行為に対する民事、行政、刑事上の法的責任について明瞭に定義している。“国
家秘密”と“商業秘密”を同列に論じ、“商業活動”と“スパイ行為”を無理やり結びつけること
は、明らかに別に下心があり、世論を惑わすものである。
—ー折しもアメリカは1996年に実施した«経済スパイ法»で、“商業秘密の窃取”をスパ
イ犯罪の1つとし、最高で10年の拘禁、500万USドルまたは侵害された商業秘密の価値
の3倍の罰金という厳しい法的責任を規定し、かつ当該法を濫用して国際競争相手を抑圧
し、最近ではさらに罪名をでっちあげ、“証拠”を捏造し、いわゆる“中国経済スパイ事件”を
連続して数十回でっちあげている。もし、“色眼鏡”をかけ、“アメリカ式概念”を手に取って
中国の«反スパイ法»を強引に当てはめたならば、得られるのは当然ながら誤った答えだけ
である。
・画像:「外商の実際の対中投資」;(キャプション)2023年1-10月、全国で新たに設立さ
れた外商投資企業は41,947社で、カナダ、イギリス、フランス、スイス、オランダの実際
の対中投資は前年同期比でそれぞれ110.3%、94.6%、90%、66.1%、33%増。
迎②:事実の誹謗中傷は許さない!«反スパイ法»が“ビジネス環境を破壊する”という
4つの誤り(下)(微信・国家安全部2023年12月7日)3
今年4月«反スパイ法»改正後、国内外の世論の高い関心を集めており、中国の正当な立
法活動を尊重•支持する声が大多数を占めているが、悪意のある攻撃や中傷も少なくない。
一部の下心のある国外勢力は煽り立て、火に油を注ぎ、«反スパイ法»は“ビジネス環境を破
壊する”という荒唐無稽な論調を流布し、中国は“国家安全を一般化している”と辱め、中国
における正常なビジネス活動が“スパイ行為”となる可能性があると誇張している。このよう
な有害な言論に対しては、法律自体と事実の真相が最良の“消毒剤”である。
次会^通封:2010年4月29日第十一届全国人民代表大会常多•委貝会第十四次会^修1丁)」
(中国人大網2010年4月29日)。なお、2023年10月25日に公表された中華人民共和国
保守国家秘密法(修訂草案)においても当該条文(修訂草案では第13条)に変更はない。
参考:「保守国家秘密法(修!T草案)征求意見」(中国人大網•法律草案征求意見2023年10
月25日)
http://www.npc.gov.cn/flcaw/userlndex.html?lid=ff8081818b288414018b6〇cbbffc5ce〇 ;
http://www.npc.gov.cn/flcaw/flca/ff8081818b288414018b60cbbffc5ce0Zattachment.pdf
3 「事安不容抹黑!«反「可^法»“破坪菅商外境”的四大> (下)」(微信•国家
安全部 2023 年12 月 7 日)https://mp.weixin.qq.eom/s/IGe55hvOyviGON8UwxsImg
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誤リ③:«反スパイ法»により法執行の権限が拡大され、中国における外国企業と人員が被る
“データ収集”、“恣意的拘留”の安全リスクが高まっている。
事実の真相:«反スパイ法»は法執行活動に対する全プロセスを厳格に限定しており、国家
安全機関は法に基づいた事件処理を堅持し、外国企業を含む組織と個人の合法権益を十分に
保障している。
——«反スパイ法»は反スパイ活動の各種権力、各段階に対して厳格に限定している。調
査を行う前には、法執行権の性質と種類に基づいて、さまざまな権力の前提条件、さまざま
な階級の行使主体を明確に規定し、事前の監督管理を厳格にしている。調査を行う際には、
各種法執行措置を講じることに対して手順の要求事項を明確に打ち出している。調査終了
後には、行政処罰を科す必要のある違法行為に対して、法執行部門は告知義務を履行し、当
事者が法に基づいて享受する各種権利を保障するよう求めている。最近、カナダのメディア
が明らかにしたことによれば、これまで“恣意的拘留”に遭ったと言い張り、中国でスパイ活
動に従事した嫌疑をかけられているマイケル(MichaelSpavor)がコブリグ(MichaelKovrig)
はカナダのスパイと公然と告発し、中国滞在期間に中国の国家安全を脅かす犯罪活動に従
事していたことを認めたという。事実は言い逃れできず、真相は白日の下にさらされる。«反
スパイ法»施行以降、国家安全機関は厳格に法に従って事件を処理しており、いわゆる“恣
意的拘留”事件は一件も起こっていない。
—ー«反スパイ法»は国家安全機関による法に基づくデータの調査•収集の前提、手順、
範囲について厳格に規範化している。«反スパイ法»は2021年の«データ安全法»での授権
を基礎として、法に基づくデータの調査•収集についてより一層細分化し、同時に3項目の
条件に合致すること、すなわち、第一に反スパイ活動任務の執行に限る;第二に区を設置す
る市級以上の国家安全機関の責任者の承認を得ること;第三に反スパイ活動で必要とする
範囲と限度を超えてはならないこと、を要求している。中国が他国のデジタル主権を尊重し、
不法な他国のデータ情報に反対する鮮明な態度を堅持しているのに対し、一部の外国組織
と人員は故意に中国の法律に違反し、わが国国内でわが国の国家安全と利益にかかわるデ
ータを公然と収集・伝送している。最近、国家安全機関は関連部門と共同で特別管理を行い、
全国20余りの省に分布する数百の不法な外国にかかわる気象観測点を発見し処理し、適時
にリスク・潜在的危険を取り除き、法に従ってデータ安全を擁護した。
—ー«反スパイ法»は公民組織の合法権益を十分に保障している。国家安全機関による行
政処罰、行政強制措置の決定等に対して不服であれば、当事者は法に基づいて行政再議を申
請し、行政訴訟を提起し、自身の合法権益を守ることができる。国家安全機関とその業務従
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事者の違法行為に対しては、すべての人が上級の国家安全機関または監察機関、人民検察院
に告発または告訴する権利を持っている。今年4月、国家安全部は積極的に全社会に向け
て”100091-091メ ールボックス”の通報用メールボックスと“400-040-5198”通報用電話を開
通させ、社会各界の監督を広く受け入れている。«反スパイ法»が施行されて5か月、国家
安全機関は厳格で規範化された公正で道徳的な法執行を堅持しており、法執行の規律違反
に起因する行政再議や行政訴訟案件は1件も起こっていない。
・写真:国家安全機関監督通報プラットフォーム
監督通報専用メールボックス:北京市100091メールボックスー091サブボックス
監督通報専用回線:400-040-5198
誤リ④:«反スパイ法»は“国家安全保障を一般化”しており、中国が現在“安全保障を発展より
重視している”ことを物語っている。
事実の真相:発展と安全保障はこれまで“単一選択問題”ではなく、各国みな国家安全保障に
対して合理的な関心を持っている。中国はこれまでずっと慎重に“国家安全保障”を定義して
おり、その政治化、兵器化に断固として反対している。
——すべての国にとって、国家安全保障は極めて重要である。中国は発展を第一の要務と
することを堅持し、同時に発展と安全保障の統一的計画を重視し、より高品質で、より効率
的、より公平で、より持続可能な、より安全な発展の実現に努めている。今回の改正«反ス
パイ法»では、“発展と安全を統一的に計画する”という原則を直接関連条文に書き込み、法
律全体において十分に反映されている。安全のボトムライン、レッドラインを鮮明に確定す
ることで、精密な“反スパイ”、よりよい“発展促進”を確保し、開放的で安全な、活力があり
秩序のある発展環境を作り出している。
—ー最近、一部の国家が“規則に基づく国際秩序”を隠れ蓑にし、“スモールヤード•ハイ
フェンス”、“リスク除去”を口実とし、“国家安全保障”を政治化、兵器化し、中国の政治用な
経済貿易活動と発展の権利をみだりに抑圧している。
統計によれば、アメリカは現在までに
1500余りの中国の実体と個人に対して制裁をみだりに実施し、市場経済の規律に深刻に違
反し、中国企業の生存•発展に重大な影響を及ぼしている。今年8月、アメリカは“懸念国
における特定の国家安全保障技術及び製品に対する米国投資への対処に関する大統領令”を
発布し、中国に対する半導体、マイクロエレクトロニクス、量子コンピュータ、人工知能等
の分野に対する投資審査を強化し、米国半導体産業協会ですら公然とアメリカ政府は一方
的規制をみだりに実施し、半導体エコシステムを破壊しており、このような行為は最終的に
アメリカ磁心の利益を損なうものだと言明している。
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流言は智者に止まる4。
事実が雄弁に物語っているのは、«反スパイ法»が“ビジネス環境
を破壊する”というのは別に下心のある人がでっちあげた謬論に過ぎないということである。
我々は共同で«反スパイ法»を実行することで、国家安全を守るための強大な力を結集させ、
わが国のビジネス環境を絶えず最適化するために強大な法治による保障を提供しよう!
・画像:今年第3四半期まで
全国で新たに設立された外商投資企業3.8万社
前年同期比32.4%増
(キャプション)2023年第3四半期までで、全国で新たに設立された外商投資企業3.8
万社、前年同期比32.4%増。
4 (訳者注)『荀子』大略篇。愚かな人々は、根も葉もないうわさ話を次から次へと広めて
いくが、賢明な人は、そういうことに興味を示さないから、風評もそこでとどまってしま
うことをいう。
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