「トランプ、バイデンどっちでもいい」…すでに始まっている米中「貿易戦争」 習近平が目論む「TikTok禁止」「制裁関税」をスリ抜ける“秘密工作”の中身

「トランプ、バイデンどっちでもいい」…すでに始まっている米中「貿易戦争」 習近平が目論む「TikTok禁止」「制裁関税」をスリ抜ける“秘密工作”の中身
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/03260552/?all=1

『2024年03月26日

11月の米大統領選を前に、早くも米中の“衝突”が本格化している。なかでも「TikTok」や「関税」をめぐって、双方の舌戦はヒートアップ。実はそのウラで、習近平政権は「対米包囲網をすでに構築済み」とされ、“迎撃態勢”を抜かりなく整えていると専門家は指摘する。

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【衝撃データを公開】中国が自国経済圏に吞み込んだ驚きの9カ国とは?

 3月13日、米下院で圧倒的多数の賛成で可決された動画投稿アプリ「TikTok禁止法」に続き、それを補完する法案が20日に可決された。

「アメリカ国民の個人情報を“敵国”やその管理下にある企業へ提供・売却することを禁じる法案が同日、米下院で可決。念頭にあるのはもちろん中国で、TikTok禁止法とともに、中国企業を通じて米国民の個人データが中国政府へ流出する安全保障上の懸念が背景にあります」(全国紙外信部記者)

 禁止法案はTikTokを運営する中国企業「バイトダンス」に対し、165日以内に事業の売却を迫るもので、中国側は「言論侵犯」や「盗人の論理」などと猛反発している。

「TikTokのアメリカ国内での利用者は約1億7000万人にのぼり、とくに10~20代の若者に絶大な人気を誇っています。実際、バイデン大統領自身も若年層への浸透をはかるため、今年2月にTikTokの公式アカウントを開設したばかり。すでに米議会周辺で若者を中心とした抗議活動が行われるなど、若い有権者からの反発を不安視する声は根強く、上院での法案成立は予断を許さない状況です」(同)

エスカレートする情報戦

ジョー・バイデン

こちらも強硬姿勢(whitehouse公式flickrより) (他の写真を見る)

 それでもバイデン政権がここに来て攻勢を強める裏には、中国政府がTikTokを通じて“フェイクニュース”や“分断を煽る”動画を流し、大統領選へ介入することに強い危機感を抱いているためだ。その点について、中国事情に詳しいインフィニティ・チーフエコノミストの田代秀敏氏が興味深い指摘をする。

「ロイター通信が14日、複数の米当局者の証言をもとにトランプ氏が大統領だった2019年、米CIAが中国のSNSなどを通じて習近平政権に対するネガティブ情報を流すなどして、秘密裏に“対中情報戦”を展開していたと報じました。当然、中国当局者もこの報道を確認しており、“アメリカがやってるなら”と今後、対米情報戦において“遠慮がなくなる”だろうことは容易に想像がつきます。中国側の狙いはアメリカの分断を深め、国力の衰退を促し“自滅”を待つこと。つまりアメリカ側の懸念には相応の根拠があるということです」

 実はTikTok問題以上に、大統領選の主要テーマになると見られているのが「対中関税」をめぐる議論という。トランプ前大統領は中国からの輸入品に「一律60%」の高関税を検討しているだけでなく、中国メーカーがメキシコで生産した自動車に対しても「100%の関税をかける」と表明。対中強硬姿勢を日に日に強めている。

「トランプ氏がメキシコでつくられる中国車を標的にしたのは『アメリカ人を雇用せずに税制優遇措置だけを狙ってる』と主張しているためです。バイデン大統領も『米国の自動車労働者を守る』と宣言し、中国製EV車に対する輸入規制を検討中と報じられています。大統領選で勝つには中国への強硬姿勢を打ち出さざるを得ず、対中関税が争点の一つに浮上するのは避けられない情勢です」(前出・記者)』

『「グローバル・サウス」

 すでにトランプ政権時代(17~21年)に米政府は3700億ドル相当(約55兆円)の中国製品に最大25%の関税を課しており、その大部分はバイデン政権になってからも維持。さらに関税が上がれば中国にとっては大打撃――と思いきや、「実は習近平政権はまったく慌てていない」と話すのは田代氏だ。

「米中貿易戦争が勃発したトランプ前政権時代に、すでに中国企業は『グローバル・サウス』と呼ばれるインドやインドネシア、トルコ、タイ、フィリピン、ブラジル、メキシコなどに貿易の中継拠点を設け、それらの国々を介して米国に輸出する戦略にシフトしました。実際、中国からグローバル・サウスへの輸出は20年以降に急増しており、米国を除外する形で、中国を起点とした巨大なサプライチェーン網が構築されつつあります」

 中国企業はメキシコやヴェトナムなどに現地工場を建設し、現地人を雇用。中国から輸入した部品や素材を組み立て・加工し、自動車や家電製品、iPhoneなどを製造しているという。

「対中制裁関税によって起きたのは、中国がグローバル・サウスの国々を自分たちの経済圏に組み込む動きを加速させたという、米国にとっては皮肉な結果です。今月に入って米ニューヨークタイムズ紙が『(直接・間接を含めた)中国からの輸出が急増していて“貿易摩擦”を起こす勢いだ』と報じましたが、米国内でも制裁関税の実効性に疑問の声が上がり始めています」(田代氏)

「恫喝」と「化かし合い」を駆使した“チキンレース”の軍配はどちらに上がるか。
ドナルド・トランプ

「虚勢」の張り合い?(トランプ前大統領) (他の写真を見る)
グローバル・サウス

中国からの輸出が急増する「グローバル・サウス」(「ASIA TIMES」2022年7月29日付リポートより)(他の写真を見る)

デイリー新潮編集部 』