「太平洋でカネにまかせた中国ドミノ」、世界で高まる島嶼国への関心、経済発展なくとも日本が長期的支援をすべき理由
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/33335
『2024年3月25日
米国とミクロネシア3国(ミクロネシア、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国)は昨年、コンパクト合意と呼ばれる資金提供プログラムを20年延長することで合意した。しかし、コンパクト合意に基づく支援予算の米議会での承認が大幅に遅れ、島嶼国側からも米国内からも懸念が高まっていた。
(SMSka/Golden Sikorka/seungyeon kim/gettyimages)
“The Coming Collapse of China”(邦題:『やがて中国の崩壊が始まる』)の著者である著述家のゴードン・チャンは、2月23日付けワシントンポスト紙掲載の論説‘Congressional inaction is handing the Pacific to China’で、米議会のミクロネシア3国支援承認の遅れは太平洋を中国に渡すことになる、と批判している。主要点は次の通り。
米議会は、最も親しい同盟国に対する財政支援約束を果たしておらず、重要な友好国を見捨てることになっている。中国はパラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島を取り込もうとしており、それが成功すれば中国軍は太平洋の広大な水域を支配することになる。
そうなると、新しい港や基地に展開される中国軍は、民間か軍用かを問わず、この海域を航行する米の船舶や航空機を阻止することができる。更に中国はハワイやグアム等米領土を攻撃できる施設を手に入れる。
昨年これら三国とのコンパクト協定が再交渉され、20年の延長が合意された。
しかし、米議会は未だ米の資金提供義務を承認していない。
12月に可決された2024年国防権限法にはこれら三国への資金支払いは含まれなかった。
2月13日に上院で可決され法案にはウクライナ、イスラエル、台湾向けの953億ドルが含まれたが、コンパクト三国への資金予算は含まれなかった。
コンパクト三国への米の資金提供義務は、次の20年間で合計71億ドル、現在米議会は協定の資金提供履行のために23億ドルを承認する必要がある。ミクロネシアとマーシャル諸島は目下米繋ぎ予算決議の下で一部の資金を受け取っている。パラオへの資金提供は現在最小限に削減されている。
中国は、これら三国の指導者に対し米国を見捨てるように働きかけている。
中国は、機能不全の米国は信頼できないパートナーになったと説いている。
11月に再選を控えるパラオの親米派のホイップス大統領は、中国の資金攻勢に最も脆弱だ。中国の資金を得るためには、パラオは外交承認を台北から北京に切り替えることが必要とされる。
ミクロネシアは中国を承認、2019年にはキリバスとソロモン諸島が台湾承認を撤回した。その裏に中国による資金約束があったことは疑いない。』
『中国にとりもうひとつ好都合な要因は恐怖だ。
親中派は、パラオを中国の標的にしてはならないと主張する。この議論は効果的だ。
ホイップスは米国に米国の在パラオOTHレーダー防衛のためのパトリオット迎撃ミサイル部隊の展開を要請した。
しかし昨年11月、パラオ上院はその部隊展開を拒否する決議を採択した。中国はレーダー建設地近くにホテルとカジノの建設を申し出た。
中国がソロモン諸島を支配下に入れたことは、コンパクト三国に対する警告だ。
中国は、豊富なカネを政府・議会関係者にばら撒き、嘗て民主主義国だった同国を権威主義国家に変える道を着々と進めている。中国の新たな友人となったソガバレ(首相)は、2022年には次の総選挙を延期した。
中国は、太平洋を自らの保護区にしようとしている。他方で、米議会は、米国の財政負担を果たさないことにより、中国による米国の最も忠実な同盟国の反米化を許してしまっている。
* * *
切迫する島嶼国
上記の論説が出た後、3月8日にようやくミクロネシア3国への支援の予算が米議会で承認された。
承認は一安心ではあるが、遅延が損ねた米国への信頼を回復することは容易ではないだろう。
米議会がウクライナ支援や中東等を政争の具にし、そこに太平洋島嶼国支援が巻き込まれている実態は、残念と言う他ない。
中国はその野心を進めている。太平洋でカネにまかせた中国ドミノが起こらないとも限らない。
マーシャル諸島のハイネ大統領(女性、1月大統領に返り咲いた)は、2月末ガーディアン紙に、「対米関係は米議会の政党政治のために徐々に壊されつつある」、「米国が合意した資金は米国の寛容により合意されたものではなく、当事者間の厳しい交渉の結果合意されたものだということを米議会は理解すべきだ」と述べた。
その後、3月1日のビキニ70周年集会演説ではもっと先鋭に、「米議会はコンパクト三国への資金承認もしないで2週間の休会に入った。
今、米国との関係は岐路にある」と述べるとともに、他の地域プレーヤーがマーシャルとの関係を築きたいと熱心になっていることを示唆して、「米国がわれわれへの約束を果たさないのであれば、われわれは他の選択肢を真剣に検討する必要が出てくる。
マーシャルが米国の確固たる同盟国であることを当然視してはならない」と述べた。』
『この発言は脅迫的で感心しないが、同国には今深刻な財政危機に直面しているという事情がある。
米国の資金支払まで信託基金を取り崩して保健等当面の必要をカバーしているという。
チャンは、パラオの状況が急迫していると言う。
22年末、米国はOTHレーダーのパラオ設置を発表、目下建設中だ(26年に完成予定)。今秋の選挙が近づくにつれ、これが国内政治議論に発展している。
反対派は、レーダーは中国による最初の攻撃標的になると主張。米国育ちで親米のホイップス大統領は昨年9月、米国に中国による攻撃からパラオ住民を守るためとしてパトリオット部隊の恒常展開を要請した。
しかし11月、パラオ上院はこの部隊の展開を拒否する決議を採択した。親中の上院議長ボールズが反対派を主導しているらしい。反対派の裏には中国の介入があるとの見方もある。
これらの状況はソロモン諸島と似通っている。十分注意する必要がある。
経済発展は至難でも、支援は必要
太平洋が中国拡張主義と権威主義化の大洋になることは防がねばならない。島嶼国の経済発展は至難に思われるが、最近島嶼国への世界の関心は、欧州を含め強まっている。
ミクロネシア連邦のポンペイに最近開設された国連統合事務所も益々拡大の予定だと言う。日米豪等が連携、支援をもっと強めることが必要だろう。またそれが長期に亘ることも覚悟せねばならない。 』