オーストリア大手銀、株価急落 ロシア取引に中止圧力か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR204U00Q4A320C2000000/
『【ロンドン=大西康平】20日の欧州株式市場でオーストリア大手銀ライファイゼン・バンク・インターナショナルの株価が一時前日比16%安と急落した。ロシア子会社によるロシアの新興財閥(オリガルヒ)からの株式取得について、米当局が中止へ圧力をかけているとロイター通信が報じたことが影響した。
米当局はライファイゼンのロシア子会社が、オリガルヒで米欧の制裁対象とされるオレグ・デリパスカ氏からオーストリア建設大手ストラバグの株式約28%を15億1000万ユーロ(約2480億円)で購入する取引の中止を求めているようだ。
ライファイゼンは制裁やロシア政府の圧力などで国外に移転できないロシア子会社の利益について、デリパスカ氏から買い取る株式による配当で親会社に戻そうと計画していた。想定した利益が得られないとの懸念から、株価は下落したとみられる。23年12月に株式買い取り計画を発表してから同社の株価は上昇基調が続いていた。
株価の急落を受け、予定していた6億5000万ユーロのAT1債の発行も中止されたようだ。
ライファイゼンは同日の場中にロイター通信の報道を否定する声明を発表した。「ここ数週間で米財務省など全ての関係当局に説明した。取引に米国との関連性がないことが認められた」とした。株価は下げ幅を縮めて9%安で引けた。
ライファイゼンのロシア事業の存在感は大きく、ロシアのウクライナ侵攻後も融資や手数料で利益を稼ぎ続ける。23年12月期のロシア地域を含む東欧の税引き後利益は15億7500万ユーロと、全体の6割を占める。イタリア大手銀ウニクレディトの1割弱など欧州他行と比べて突出する。
23年のライファイゼンのロシアでの従業員の増加数は405人と、国別で最も多かった。ロシア子会社のスピンオフ(事業の分離・独立)のめども立っていない。ロシアは海外送金といった国際決済の要として存続を望んでいるとされる。
ロシアのウクライナ侵攻を間接的に助けているとして、米国の圧力にさらされ続けるリスクがつきまとう。バイデン政権は23年12月、ロシアの制裁逃れに加担している第三国の金融機関も制裁対象とすると発表した。対象となる金融機関は米国の金融システムから締め出されることになる。
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