中小賃上げ4.42%、32年ぶり高水準 非正規にも広がる
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1467U0U4A310C2000000/


『2024年3月15日 19:55 (2024年3月16日 0:15更新)
連合が15日発表した2024年春季労使交渉の第1次集計で、中小企業の賃上げ率は4.42%に達し、32年ぶりの高水準となった。引き上げ機運は中小にも広がり、物価と賃金が持続的に上がる好循環に弾みがつく。
組合員数300人未満の労働組合の結果をまとめた。賃上げ率は前年の同時期から0.97ポイント上昇した。最終集計と比べると5.10%だった1992年以来の高い水準だ。基本給を底上げするベースアップ(ベア)率も明確に分かる268組合で2.98%と0.86ポイント上がった。
芳野友子会長は15日の記者会見で「満額や要求を超える回答は昨年以上という印象だ」と語った。産業別では機械、金属など中小の労組を中心に構成する「ものづくり産業労働組合JAM」の賃上げ率が15日時点で4.09%と前年実績を0.57ポイント上回る。月額1万1302円の引き上げで、99年の結成以来過去最高となった。
政府は「物価を上回る賃上げ」をかかげ、2023年に賃上げ率の低さが目立った地方や中小企業を24年春季交渉の要ととらえる。足元の消費者物価指数(CPI)は24年1月に2.0%上昇と中小でもベアだけで上回っている。
活発な動きは地方にも出てきた。エンジンコンプレッサーを製造する新潟県の北越工業は労組の月額1万2000円のベア要求に満額で回答した。対象は486人の正社員で、賃上げ率は定期昇給分を含めて平均6.13%とした。担当者は「人材確保のためにも給料の引き上げが必要だ」と話す。
連合集計によると、有期雇用や短時間労働といった非正規の賃上げ率は月額で平均6.75%と前年の同時期の4.58%から2ポイント以上伸びた。正社員だけでなく、非正規にも効果は大きい。
交渉中の企業の後押しにもなっている。文具販売・オフィス設計のオカモトヤ(東京・港)は3%程度の賃上げを検討していたが、ここ数日の高い賃上げ機運を考慮して賃上げ率の上積みを検討中だという。
1次集計時点での妥結数は358組合で前年から40減った。高水準を要求する労組と企業の間で交渉が長引いているとみられる。価格転嫁の難しい中小企業ほど賃上げの厳しさがうかがえる。
中小企業の賃上げは大企業にはやや及ばない。賃上げ率は組合員数300人以上の大企業は5.30%で、中小との差は23年の0.36ポイントから0.88ポイントに拡大した。22年は0.1ポイントだった。
それでも人材流出を防ぐためには賃金環境の改善が欠かせない。
大阪府東大阪市の産業機械メーカーは例年と同程度の2〜3%の賃上げを予定する。同社には定期昇給の制度がなく「物価を考慮すれば4〜5%は上げたい」(同社社長)として、業績の先行きが不透明なため賞与での対応を検討する。
春季交渉は小規模な企業ほど妥結が遅く、賃上げ率も低い傾向にある。7月の最終集計では全体の水準が下がる可能性はある。物価上昇との相乗効果を高めるには労務費を含めて価格転嫁できる環境づくりが求められる。
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