TikTokが触れた米議会の逆鱗 禁止法反対、アプリで促す

TikTokが触れた米議会の逆鱗 禁止法反対、アプリで促す
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN090390Z00C24A3000000/

『2024年3月9日 6:07 (2024年3月9日 8:57更新)

米連邦議会はTikTokが米市民の個人データを悪用するとの懸念を強めている=ロイター

米連邦議会で中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の利用を禁じる動きが再燃した。ティックトック運営会社は反対の声をあげるよう米国利用者にアプリでプッシュ通知を送り、議員らが「これこそが安全保障上の脅威だ」と猛反発した。テクノロジーで民意を揺さぶろうとしたとして、米立法府の逆鱗(げきりん)に触れたかたちだ。

バイデン大統領は8日、ティックトック禁止法案について記者団に「議会が通せ

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『議会が急速に強硬姿勢へ傾くのは、ティックトックが「悪手」を打ったためだ。

「ティックトックは米国内で使えなくなるリスクがあります。今すぐ下院議員に電話をかけてください」。禁止法案の採決を目前にした7日朝、計1億7000万人が使うというティックトックの米国ユーザーに突然通知が届いた。

アプリを開き、自分の郵便番号を入力すると、数クリックで自らの地区が選出した議員の事務所などに電話をかけられるしかけだ。各議員や議会への苦情が殺到し、電話回線が相次いでパンク状態となった。

禁止法案を主導した下院中国特別委員会のマイク・ギャラガー委員長(共和党)らはティックトックに抗議声明を出した。「議員を脅迫するための露骨な圧力キャンペーンを繰り返している」。強い批判に民主議員らも同調し、全会一致という異例の法案採決につながった。

米国ではトランプ政権を生んだ16年の大統領選で、ロシアによるSNS(交流サイト)を通じた世論工作があったとされる。テクノロジーの悪用に対する警戒感は強く、今回のティックトックの手法にも議員らはそくざに拒否反応を示した。』

『大統領選前、駆け引き続く

今後は11月の大統領選もからみ、民主と共和、さらにティックトックそれぞれの駆け引きが続く見通しだ。

法案の成立には委員会に加えて、上院・下院の本会議の審議・可決と大統領の署名が必要になる。与党・民主党には若者の人気が高いティックトックを禁じれば、11月の大統領選で若年層から批判を浴びかねないとして慎重論が根強い。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは民主が多数派を占める上院を通過するのは難しいと報じている。

一方、野党・共和党はバイデン氏のティックトックへの対応が中国に弱腰の姿勢だとして批判を強めている。大統領選まで議会の審議時間が限られるなか、ティックトックもロビー活動を強めて挽回を進めるとみられる。

ティックトック禁止法案は大統領選の前哨戦ともいえる様相を帯び始めている。』