中国の罰金経済、最後の牙城の宅配ビジネスに手を出す。
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/33661141.html
『このブログで、「中国では、宅配に従事する人が多い。出前というのが文化的に根付いているのもあるが、一番の原因は、工場などと違って、働いた分の賃金がちゃんと貰えるからだ。もし、支払いが無ければ、配達する人がいなくなり事業が潰れるので、事業者は何としても払わざるを得ない。今の工場経営者は、給料未払いで工員がストをしても、新しく雇えば良いし、何なら時給を下げても集まる状況だ。つまり、賃金の踏み倒しが可能である。可能ならば、やる人はいるし、警察も裁判所も経営者の味方だ。つまり、法律でも勝てない。どんな法律が定められていても、運用する側に守る気がなければ、ただの飾りである」と説明してきました。
上記の理由から、敢えて工場勤めをしないで、天候によってキツさの変わる宅配要員として働くわけですが、ここが事業として順調なので、とうとう政府から目を付けられました。日本の宅配と同じように、中国の都市では、宅配ボックスがあり、利用者が不在の時でも、配達して認証コードを知らせる事で、確実に受け渡しができるシステムがあります。業界最大手は、深センでドローンによる宅配も始めていて、新しい事を試すという意味では、実にスピード感があります。
この度、法律が変わりまして、手渡しで宅配をしないと違反になりました。罰金は、政府3万元(60万円)です。つまり、宅配ボックスは使用禁止で、ビルの何階だろうと玄関まで宅配し、不在ならば再配達という事です。これ、誰も得しないのですね。まず、利用者は在宅している時間を知らせなければならず、その区切りの中で行動を拘束されます。宅配する人は、厳しいスケジュールで、体力的な消耗を強いられる仕事をこなさないといけなくなります。そして、何よりも事業継続にかかるコストが確実に跳ね上がります。唯一、儲かるのは、罰金を取る政府だけです。
実は貧困撲滅をスローガンにしている習近平氏ですが、一般人民が豊かになるのは内心は歓迎していません。人は生活に余裕が出てくると、余計な事を考え、政府に要求しだすからです。昭和30年代~40年代にかけて、学生運動が盛んになり社会で騒乱が起きたのは、まぁ、嫌な言い方をすれば、「明日のご飯の心配をしなくて良くなったから」です。飢えが頭の隅から消えると、色々な欲求が出てきて、実現できていない社会に対する不満に向かいます。なので、統治する上では、生きるのに精一杯で、何も考えられない状態にしておくのが一番なのです。これは、権限を持つ権力者は、もちろん対象外です。彼らは、悲惨な一般人の暮らしを観る機会が多ければ、政府の意向には絶対に逆らわなくなります。誰も、進んで仲間入りをしたいとは思わないですからね。立場を守る為、何でもするようになります。
つまり、統治する側からすると、適度に貧困に喘いでいる方が、色々とやりやすいわけです。なので、宅配が儲かっていると聞けば、経済担当部門が美談を報道して持ち上げる(このブログでも記事にしましたが、2000万円の借金を宅配で返済した話が新聞記事になりました)一方で、政府は人民が金を持つ手段を封じて、かつそこから罰金を取る為に規則を変えるのですね。普通に働いていると、罰金を取られるような状況に追い込む不便な規則を作ります。事業の創世記に、中国政府に理解者がおらず、放置されていたおかげで、中国のIT産業というのは、爆発的に発展しました。ITの場合、人口が即、顧客になりますから、国内需要だけで、巨大な産業に育ったわけです。そして、今になってイチャもんを付けて、巨額の罰金(数千億円規模)を複数回課して、政府が金を恐喝しているわけです。また、事業の妨害や、指導と称して、共産党の影響下に置き、事業を乗っ取ろうとしています。なので、中国のITは、いずれ沈むと思います。人の能力の問題ではなく、好調なところから強請りをする政府のせいで。
この法律の狡いところは、同時に人民による密告・通報制度も存在するので、例えば注文をした顧客が「忙しいから、今まで通りに宅配BOXに入れておいてよ」とか「置き配達でいいよ」と言って、もし、配達人が指示に従ったら、一方で当局に通報して、報奨金を貰えるという点です。通報で稼ぐ人も出てくるので、人民同士の不信感も煽り、こういう人民同士で監視し合うような社会は、中国共産党にとって、まさに理想的なのです。習近平氏が目指しているのが、文化大革命時代の監視社会であるというのは、そういう事です。そういう状態が、内政で失敗続きであっても、権力を維持できる最良の道であると考えているので、そういう手段を使うわけです。ちなみに、今現在でも、老人が道で倒れていて、下手に看病とか病院に連れていくと、「最後まで面倒を見なかった」として裁判を起こされる当たり屋的な詐欺師が出てきているので、道端で人が倒れていても、誰も近づきません。人の親切心もカモる対象になっている例を知っているので、他人と関わろうとしないのです。猜疑心が処世術になってしまった社会の到達点が、中国で観る事ができます。
政府からすれば、「通報があった」事を根拠にして、罰金を取れば、密告の報奨金と相殺しても利益が出るので、バンバン通報して欲しいし、罰金もドンドン取りたいわけです。金が足りなくなると、どっからか強請る事ばかり考えるので、基本的に中国の経済が良くなる目は無いです。今まで発展してきたのは、不動産という取引アイテムを介して、見えづらい形で莫大な借金を平気で許してきたからであり、林立している高層ビルも、借金が形を変えたものと考えれば、途端に恐ろしく見えます。中国の高層ビルは、外壁にLED照明をつけて、やたらピカピカしているのですが、部屋に灯りの点っている部屋を数えると、数が少なく、真っ暗なオフィスが多いです。つまり、数ブロック離れて観ると、華やかなのですが、ビルの直前まで来て眺めると、中に人がいません。建物のメンテナンス費すら出ているか心配になるレベルです。』