世界経済「軟着陸の可能性高まる」G20財務相会議閉幕

世界経済「軟着陸の可能性高まる」G20財務相会議閉幕
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB251VY0V20C24A2000000/

『2024年3月1日 6:50 (2024年3月1日 10:01更新)

【サンパウロ=五艘志織、宮本英威】20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が2月29日、ブラジルのサンパウロで閉幕した。共同声明の採択は2会合ぶりに見送られた。ロシアや中東情勢を巡る文言で各国の意見がまとまらなかった。

議長国のブラジルは議長総括を公表した。総括では世界経済の回復を「予想以上に底堅い」と評価し「(景気を失速させずに高インフレを抑える)軟着陸の可能性が高まっている」とした。…

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『一方で経済の下押しリスクとなるロシアによるウクライナ侵攻や中東での紛争については脚注で言及するにとどめた。財務相・中銀総裁会議は「地政学的な問題を解決するための最も適したフォーラムではない」と説明した。』

『ブラジルのアダジ財務相は閉幕後の記者会見で「我々は地政学にかかわるより微妙な問題は(2月21〜22日に開いた)外相会合での議論を期待していた。共通の文言に達しなかったため、今回の合意形成を損なった」と言及した。

日本の神田真人財務官は閉幕後記者会見で、ロシアやイスラム組織ハマスによる攻撃に対して非難したり、ガザの危機的な人道状況について発言したりする国があったと説明した。そのうえで「世界経済に甚大な悪影響を及ぼすロシアによるウクライナ侵略は引き続きG20において議論すべき問題だ」と話した。』

『G20の財務相・中銀総裁会議はロシアがウクライナに侵攻した2022年2月以降、戦争の記述を巡って対立が深まり共同声明を出せない時期が続いた。23年10月にモロッコのマラケシュで開いた前回の会議では7会合ぶりに共同声明を出したが、直前に起きたイスラエルを巡る衝突について言及できなかった。

ブラジル政府は社会的包摂と貧困・飢餓の解消、気候変動を含む持続可能な開発、国際的なガバナンス改革を24年のG20の優先課題に設定している。今回の会議でアダジ財務相は、富裕層への課税強化についての国際合意を目指したい考えを示した。

アダジ氏は28日の演説で「世界で最も豊かな1%が金融資産の43%を保有しているのは持続不可能な状態だ」と述べた。「過去10年の状況を考慮すると、世界の億万長者に対して公正な税金負担を求めることが必要だ」と言及した。

ブラジル政府によると、G20は世界の国内総生産(GDP)の85%、貿易の75%、人口の3分の2を占める。経済規模の大きい先進国と新興国の双方が参加しているため、地球規模の課題を話し合う重要な機会ではあるが、参加国の立場の隔たりは大きい。

議長を務めたブラジルのアダジ財務相は会議の開幕直前に体調を崩し、新型コロナウイルスへの感染が確認された。会合1日目の28日はオンラインで参加していたが、28日夜と29日朝の検査でいずれも陰性が確認されたため、29日は対面で参加した。』