アメリカでEV販売が急失速、政府目標に”暗雲” 「2022年はEVへ多大な希望。今や熱は冷めた」
https://toyokeizai.net/articles/-/724052
『2024/01/10 6:00
岩田 太郎 : 在米ジャーナリスト
EVの在庫が積み上がっている。
充電スタンドに並ぶEV
この3年で販売が急拡大し、テスラに加えGMなどのEVも充電スタンドに並ぶようになった(撮影:岩田太郎)
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EVシフトの流れが変わり始めた。保護主義の高まりにより資源調達や製造の面で難題が噴出。販売停滞を見据え、欧米勢は投資計画の縮小に動く。
『週刊東洋経済』1月6-13日 年始合併特大号の第1特集は「EVシフト 絶頂と絶望」。アメリカのテスラと中国のBYDがグローバル市場を席巻する中、日本勢はどう動くか。熾烈なEV競争の最前線に迫った。
週刊東洋経済 2024年1/6・1/13年始合併特大号(EVシフト 絶頂と絶望)[雑誌]
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米国における2023年の新車販売は1530万台と例年並みが予想される。そのうちEVは前年比50%増で史上初の100万台超え、新車販売の約8%を占めるまでに急成長する見込みだ。
バイデン政権も30年までに新車販売の50%をEVにする目標を掲げ、多額の補助金でEV普及を後押しする。
にもかかわらず、米自動車業界関係者の顔色は冴えない。過去3年ほど成長が著しかった高額EVの低迷が止まらないからだ。消費者のEVシフトが停滞する一方で、ハイブリッド車(HV)の販売が急速に伸びており、業界は戦術の変更を迫られている。
米国では21年のEVの年間販売台数が前年の32万台から66万台へと2倍に増え、22年にはさらに98万台へと伸びるなど、EV景気に沸いてきた。
ところが、高額なEVを購入できる高所得層の需要が一巡した後、ディーラーでは人気の内燃機関(ICE)車の在庫が2カ月分を切る一方で、EV新車在庫が積み上がり始めた。
在庫は極めて高い水準
米自動車業界分析会社のコックス・オートモーティブのEV新車在庫調査によると、23年4〜6月期の平均在庫台数は9万台超と、前年同期の約2万台に対し大きく増加している。
平均在庫日数も92.2日(前年同期は35.8日)にまで積み上がった。その後も同社の調査では、7月初旬の平均在庫日数が111日を記録。10月初旬はやや落ち着いて97日に下がったが、12月初旬に114日に上昇し、依然極めて高い水準だ。』
『トヨタ自動車系ディーラーのメアリー・ライス社長は11月末に、「われわれのチェーンでは、HVのプリウスが入荷から1週間もしないうちに売れるが、(トヨタ製EVの)bZ4Xは最大266日以上も動いていない」と述べた。
全米3882社のディーラーは11月下旬にバイデン大統領に書簡を送り、「22年にはEVに関して多大な希望が見られたが、今や熱は冷めた」と現状を突きつけた。
「大幅な値引き、メーカーがつける特典、(最大7500ドル=約110万円の)連邦政府による補助金にもかかわらず、EVは不良在庫化している」とも訴える。
EV販売は22年6月に前年同月比90%増の伸びを示していた。
しかし、23年6月には同50%増、11月には同35%増と伸びが大幅に鈍化。一方で、消費者が価格的にもお手頃で環境にも優しいHVを好む傾向は鮮明化している。米調査会社グローバルデータは23年のHVの販売台数はEVを上回ると予想する。
明るい兆しも
EVは突然に「死の谷」を迎えてしまったが、明るい兆しもある。
(※ 無料は、ここまで)』