アップル社、EV事業から全面撤退
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『アップル社がiCARという名前で、EV事業に参入すると発表していましたが、10年間に及ぶ迷走の末に、全面撤退を決めました。市場は、この損切りを好感して、株価が上がりました。アップル社のEV事業参入は、「流行りだから」という浮ついた理由ではなく、スマートフォンの次の事業の柱として、本格的に考えていました。人材も資本も投入して、かなり注ぎ込んでいたのですが、最終的に諦め、AI事業へ注力するようです。
「EVは大きなスマホだ」、「技術が無くても作れる」というのは、良く言われる事ですが、ただ走るだけではなく、付加価値のある製品に仕上げるのは、やはり簡単ではありません。アップル社が自動車業界に参入を発表した時、トヨタの会長は「歓迎します。しかし、覚悟が必要ですよ」とコメントしましたが、何万台か売って終わるのではなく、自動車業界で稼ぐとなると、一筋縄ではいかないという事です。良く「日本には、プルトニウムとロケット技術があるから、すぐに大陸弾道核ミサイルが作れる」という論が出ますが、個々の基礎技術があったとしても、それを「核ミサイル」という形に仕上げるには、それなりの設計やテストを含めた試行錯誤が必要で、数年で作れるという簡単なものではありません。
もちろん、進出を決めた時には、やる気満々だったアップル社ですが、プロジェクトは、かなり迷走したようです。最初は、自動車製造というより、自動運転技術の開発から着手し、この関連だけでも、5000人の人材を投入しています。しかし、自動車の場合、情報を処理するだけではなく、センサーにより適切に感知する必要もあり、それを自動車の運転にも反映させないといけません。それを、リアルタイムでやる必要があります。ソフトウェアを書いて終わりとはならず、物理的な動作を交えて、検証する必要があります。これは、まったく未経験から始めるとなると、かなり負担が大きいです。この時に世界中の自動車メーカーから引き抜いた人材は1000人とも噂されています。
しかし、空回りするプロジェクトにありがちですが、極秘という形で進められる為、成果も情報も出てこず、イタズラに時間だけが過ぎるという状態でした。明確な目標が定まっておらず、最終的な製品として何を作るのかという話さえ、二転三転しました。発表会の時期によって、力を入れている方向性が変わるのですね。基本的には、自前で自動運転技術を開発、それを持って自動車メーカーと提携して、最終的な製品に仕上げる路線で走っていたようです。スタンフォード大学の自動運転技術開発プロジェクトも買収するなど、個々の場面では本気度の感じられる力の入れ具合でした。ちなみに、アメリカの産学一体という形式は、研究が企業に買収されるなんて事があるくらい、資金面で民間の資本が入っています。
しかし、世界中の自動車メーカー、バッテリー・メーカーに声を掛けていた様子で、これはプロジェクトのコンセプトに軸が無い事を暗示します。しかも、途中からハードウェアも自前で製産するという方針に転向して、結局は全ての提携話が、ご破産になっています。この方針転換が決まったのが、2016年頃ですが、実は初期の頃に進めていたハードウェア開発は、自動車メーカーとの提携の方針が出た時に、止めてしまっています。一度、止めたプロジェクトを再稼働させるという何とも迷走ぶりが見えます。この時、元テスラ社の役員だった人物を雇い入れているのですが、この人物は6ヶ月でアップル社を退社しています。かなり酷かったと、想像できます。
一応、試験車も完成し、公道によるテスト走行も行っていたようですが、もともと目指していたレベル4の自動運転技術をレベル2のアシスト・レベルにダウンさせていて、アップル社が市場参入する意味すら不明というブレ具合です。そうこうしているうちに、アップル社はマイクロソフト社、Google社などと比べて生成AIなどの技術で大きく遅れを取り、本業の地位も危うくなってきました。今は、ブランド力で売っているスマホも、もともと工業製品としての実用性が商品力の主力ですから、「オシャレなだけでは売れません」日本でも、デザイン製で高値の製品を売っていたバルミューダという家電製品メーカーが、スマホに手を出して、中途半端な性能をボロクソに酷評されて失敗しています。ゴミとか言われていましたからね。バッグや香水のように、ブランド力だけでは、この先が無いわけです。その為、今後は生成AI技術に注力するようです。
似たような企業がタッグを組んだEVの例として、日本のSONYとホンダが手を組んだアフィーラという高級EVのプロジェクトがあります。1000万超えの高級路線ですが、SONYと言えばセンサーです。情報処理の要になるCPUには、800兆回/秒の命令を処理できる高性能なものを採用し、車内と車外に合計で45個のカメラを搭載して、EVの周囲の状況把握を確実に行います。また、無線通信によるクラウド接続で、車内にて様々なマルチメディア体験が可能という走るオーディオ・ルームみたいなコンセプトです。車内空間をエンタメ化するというコンセプトのようです。こちらは、2025年にも実車投入が予定されています。
個々の技術を持っていても、一つの製品に仕上げるには、明確なコンセプトと、調整が可能な企業関係が必要であり、アップル社は早期から取り組んだにも関わらず、ビジネスとして失敗したという事です。 』