IPEF、供給網協定が発効 「もしトラ」で早くも漂流懸念

IPEF、供給網協定が発効 「もしトラ」で早くも漂流懸念
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA21AR50R20C24A2000000/

『日米豪など14カ国が参加する「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」のサプライチェーン(供給網)に関する協定が米国時間の24日に発効する。具体的な成果が動き出すが、11月の米大統領選で協定破棄を唱えるトランプ前大統領が再選すれば枠組みが漂流する恐れもある。

IPEFは4つの交渉分野のうち、供給網については2023年5月に実質妥結し、11月に署名にこぎつけた。供給網に関する初めての国際協定となる。…

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『災害などで供給網が途絶しても早期復旧できる体制を整え、経済的な影響を抑える狙いだ。日米を含む5カ国が国内手続きを終え、発効する。

供給網協定には、各加盟国が発効から120日後までに企業や有識者と協議のうえ、重要な物資を定めて他の加盟国に示すことを盛り込んだ。不足した場合の影響が大きく、少数国に依存する半導体などの重要な工業製品や医療物資などを念頭に置く。

3カ国以上が共通で重要物資としたものは、調達の多様化や流通上の課題解決などの行動計画を策定する。

政府高官からなる「危機対応ネットワーク」もつくる。途絶に直面した国から要請があれば15日以内に緊急会合を開き、物資の融通や共同調達の可能性を探る。

IPEFはアジア太平洋地域に足がかりを築きたい米国が中心となって立ちあげた。参加14カ国の国内総生産(GDP)の総額は世界全体の4割を占める。

一方で米国は国内産業への影響を和らげるため、一般的な経済連携協定で最大のメリットとなる関税の引き下げや撤廃といった市場アクセスの改善は交渉から外した。

供給網協定は何とかひねり出した利点の一つだが、足元ではIPEFそのものの停滞が懸念されている。環太平洋経済連携協定(TPP)からの脱退を主導した共和党のトランプ前大統領はIPEFを「TPP2」とやり玉にあげ、再選時には破棄すると明言したからだ。

IPEFの供給網協定には加盟国が発効から3年は離脱ができないという規定を盛り込んだ。

ただ会議に参加しないなどで実質離脱するシナリオは「十分ありえる」(国際貿易投資研究所の高橋俊樹氏)。

日本は米国離脱後のTPPのけん引役となってきたことから、米国が去った場合のIPEFの行方を注視する。高橋氏は「日本は米国が離脱しても成果をTPPなどの協定に反映して生かすべきだ」と訴える。

残す交渉分野では、脱炭素を促す「クリーン経済」と税逃れの防止を目指す「公正な経済」は11月に妥結した。年内にも署名する。貿易・投資を拡大するための「貿易の円滑化」は米国内で議論が紛糾し、合意の見通しが立っていない。

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