女と男 なぜわかりあえないのか (文春新書 1265) 新書 – 2020/6/19

女と男 なぜわかりあえないのか (文春新書 1265) 新書 – 2020/6/19
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『a people developer
5つ星のうち5.0 若い人が本書を読んで自分に合った恋愛・生殖戦略を立てれば、少子化対策の糸口になるのでは。
2020年6月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入

「言ってはいけない」シリーズの中の性愛、生殖パートに特化したスピンオフ企画とも言える本です。初出は「週刊文春」に連載されたものだけあり、テーマごとの一話読み切り型で、気軽に読み進められるようになっています。しかし、中身は相変わらず面白く骨太です。男女の恋愛・生殖戦略の違いを進化生物学の観点から説明しており、どれも納得させられることばかりです。「男女のタブーに斬り込む」という帯の文句は決して大げさではないと思いました。著者は科学者ではないので自分で研究しているわけではありませんが、古今東西様々な学術研究からこうしてエッセンスを抽出して分かりやすく一般の人に伝授してくれるのは本当に価値あることだと思います。日本は出生率の低下が深刻化していますが、若い人を中心に本書を読んで自分に合った恋愛・生殖戦略を立てたとしたら、少子化という国家課題の解決の一助にすらなるのではないかと思わされました。

以下、読書メモです。

・オスとメスによる両性生殖が進化したのは、グループ間で遺伝子を効率的に交換できるから

・オスの役割は(子孫を含む)メスに遺伝子的な多様性を孵化することしかない

・すべての女性を年齢にかかわらず平等に扱うリベラルな遺伝子は淘汰され、若い女性を極端に好む差別的な遺伝子だけが残った

・妊娠・出産・子育てを考えれば女にとってセックスのコストはものすごく高い。男は(子育ての責任を放棄するなら)セックスのコストはほぼゼロ

・女性は身体的興奮と主観的な興奮が一致していない。人類が進化の大半を生きてきた旧石器時代には男からいきなり襲われることが頻繁に起きただろうから、素早くヴァギナを濡らして損傷しないよう備える方がずっと大事

・ヒトを含めすべての生き物は生存と生殖に最適化されている。遺伝子の複製に失敗した個体はいま存在していない

・生存できなければ生殖にたどり着けない。生存のためにエネルギーを使い果たしてしまえば、生殖の余力は残っていない。生存と生殖はトレードオフ

・数百万年の人類史のほとんどで祖先は厳しい自然環境の中でギリギリの生活をしていた。今もその余韻を引きずっていることは、塩や炭水化物(糖質)、脂質への極端な嗜好に現れている。身体を維持するのに必須な食べ物が希少だったから、それを大量に食べると幸福感を得られるようヒトの脳は進化した

・生存と生殖という2つの目的のうち生存問題が解決すれば、残されたのは生殖への過剰な欲望

・恋愛によってドーパミンが大量に生産される状態は6〜8ヶ月程度。その後はオキシトシンやパソプレッシンによる愛情や信頼関係に移っていく。人類の歴史の大半で避妊法などなかったから、恋に落ちた男女はすぐにセックスして1年もすれば子どもが生まれた。そのときになっても「狂おしい恋の嵐」に翻弄されていたら子育てなどできないので、恋の情熱は半年ほどで冷めるように設計されている

・少年マンガでスポーツが好んで描かれるのは競争が男性読者を夢中にさせるから。それに対し、少女マンガで描かれるのはヒロインの選択

・短期的なパートナー(アルファ)と長期的なパートナー(ベータ)の使い分けは、哺乳類はもちろん鳥類でもよく見られる

・ほとんどの殺人は男により男に対して行われる。国連の調査では殺人事件の加害者の95%、被害者の79%が男。アメリカで殺害された女性の5〜7割が夫、元夫、恋人、元恋人による被害

・女性はオーガズムによって誰の子どもを産むのかを選り好みしている可能性がある

・父親がいなくても子どもは育つが、母親がいないと子どもは死んでしまう。そのため女はリスクを避けるように進化した

・「直接的な攻撃=暴力」を使えないとなると、残されたのは「間接的な攻撃=いじわる」しかない。女子トークには「親切なふりをして相手をけなす」「ほめているように見せかけて悪口を言う」とか高度な技術が必要。女の子が男の子より言語的能力が発達している理由の一端はここから説明できる

人類の進化のほぼ全期間において、処女とのセックスでしか男は生まれてくるのが自分の子どもだと確信できなかった

・ヒトの脳のOSが設計された旧石器時代には男は狩猟者で、仲間と競争しながら素早い判断で獲物を仕留めるよう進化した。それに対し女は採取者で仲間と協力しながら食用になる植物を慎重に選ぶよう進化した。ここからステレオタイプの内面化という現象が起こる。

無意識のうちに「自分は男だから競争なら有利だ」と考え、それが結果に反映する

・「政治的に正しい」ことが「科学的に正しい」とは限らない

・カネ(食料)とエロスの交換、すなわち売春は、進化の過程で脳にプログラムされた性戦略。若い女はこのことに(本能的に)気付いているので、パパ活やギャラ飲みによって男からより多くの資源(カネ)を手に入れようとする

・WHR(Waist Hip Ratio)0.7の女性に男は静的魅力を感じる。3万2000年前後の後期旧石器時代から1999年に至る様々な彫像を調べた研究では、WHRの範囲は0.6-0.7に収まっていた

・ヒトだけでなく哺乳類から昆虫まで「対称性」に魅力を感じるのは、身体のバランスが崩れていることが生存や繁殖への不吉なサインになるから

・今生きている私たちは他人を外見で判断した差別主義者の末裔

・誰もがその人なりに美しいというのは欺瞞的な神話。外見は美しさの反映だとか、美しさは努力によって獲得できるのなら、美しくないのは自己責任になる

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