ロシア、戦車関連部品を日本から迂回調達 中国経由で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR18BMV0Y4A110C2000000/
『ウクライナに侵攻するロシアの軍需企業が、戦車生産に必要な日本製や台湾製の精密機械の部品を調達し続けていることがわかった。日本経済新聞が入手した取引記録の内部資料によると侵攻した2022年2月以降、ロシアの同盟国ベラルーシの政権関係者が中国に設けた企業を通じて各種の部品を買い取り、ロシアに送っていた。
ロシアの軍需産業を狙った制裁が第三国経由の貿易などで有効に機能していない実態が浮き彫りになった。…
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『ロシアの軍需産業を狙った制裁が第三国経由の貿易などで有効に機能していない実態が浮き彫りになった。米国と英国の制裁管理当局はこうした取引を把握しており、制裁強化に乗り出すとみられる。
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資料はベラルーシの反政府団体で国外に拠点を置く「BELPOL」が同国の軍需関係企業に在籍する複数の協力者から提供を受けた。ロシアとベラルーシ、中国などの企業間の契約書や取引記録、金融機関の支払い記録などが含まれている。
それによるとベラルーシのルカシェンコ政権の関係者が中国広東省で22年に「深圳5Gハイテクイノベーション」社を設立。日本や中国、台湾で造られたモーターやセンサーといった戦車などの兵器生産に不可欠な精密機械部品の調達を進めた。
深圳5Gが調達した部品リストには、日本の工作機械の位置決めセンサーのメトロール(東京都立川市)や精密モーターのオリエンタルモーター(東京・台東)、愛知県の工作機械大手の製品型番が含まれている。
他の中国企業が保有していた在庫を深圳5Gが買い取ったとみられている。深圳5Gはこれらの部品をベラルーシの軍需関連企業「サレオ」や「LLC付加技術研究所」(LLC)に送っていた。いずれの組織も同国のルカシェンコ政権の管理下にある。
例えばメトロール製とみられるセンサー部品は23年5月、1ユニット1万6035元(約33万円)でサレオに輸出されていた。
BELPOLのウラジーミル・ジハル氏は「ベラルーシやロシアの軍需企業がサレオやLLCがアジアで調達した精密機器を使って戦車の中核部品を製造している」と指摘する。最終的にロシアの戦車生産拠点であるウラルワゴンザボードの工場に送られ、T72やT90などの主力戦車に組み立てられているという。
メトロールは日本経済新聞の取材にこれまで深圳5Gと直接取引していないと表明した。今後、取引先に深圳5Gへの転売は控えるように求め、同意が得られない場合は取引中止も視野に入れて対応すると回答した。
オリエンタルモーターも深圳5Gとの直接取引はないと回答し「輸出管理における法令順守を徹底している」と強調した。深圳5Gとサレオは22日時点で日本経済新聞の問い合わせに回答していない。
ベラルーシの軍需企業と台湾企業との直接的な取引を示す資料もあった。それによるとLLCは22年、台湾の精密機器メーカーの「ATTOPTIC」社製のエンコーダーディスクの調達に着手した。
エンコーダーディスクは移動量や方向、角度をセンサーで検出するためのエンコーダーの内部に搭載する円板で、T72などの戦車のパノラマ照準器に使われる。調達された600ユニットはLLCから10万8864ユーロ(約1770万円)で米英の制裁対象に指定されているロシアの「Peleng」社に売却されていた。
内部資料によるとLLCはATTOPTIC社に複数回にわたって代金を送金しようとしたが、米国の金融制裁の影響で失敗。23年6月に制裁網をかいくぐる形で東欧・カフカス地域のジョージアの金融機関を経由して送金し、その後にディスクも同国経由でLLCに納入された。
台湾は主要7カ国(G7)と足並みをそろえる形でロシアやベラルーシへの禁輸などの制裁を強化してきた。台湾経済部(経済省)国際貿易署は日本経済新聞の取材に「ATTOPTIC社のエンコーダーディスクやLLCは輸出規制リストに入っておらず、対ロ輸出規制には違反していない」との見解を示した。
同時に「米国や英国、日本などがLLCを規制リストに記載すれば、台湾もこの会社への輸出を禁止する」と表明した。ATTOPTIC社の担当者は日本経済新聞に「この件に関しては取材に応じられない」とだけコメントした。
LLCの担当者は日本経済新聞に台湾企業との直接取引の事実を否定した。一方で「我々は中国の組織と協力を続けている」と語った。
米国や英国の当局も最近、深圳5Gをパイプ役とした制裁逃れの詳細を把握しており、近く制裁対象に指定される可能性がある。それでもロシアやベラルーシが新たな会社を中国など第三国に立ち上げる可能性が高く、供給ルートを完全に断つのは難しい。
(キーウ=田中孝幸、比奈田悠佑)
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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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ひとこと解説 2014年の秋にモスクワへ行った時、EUの制裁があるにも関わらず、スーパーに行ってもそれほど物資が欠乏している印象はなく、地元の人に聞いてみると、やはりベラルーシ経由で入ってきており、「ベラルーシ産のモッツァレラチーズ」を売っていると笑っていました。当時から、ベラルーシは制裁逃れの迂回ルートとして使われており、今はなおさらです。
台湾精密企業の場合は、かなり甘かったとしか言えません。
日本企業の場合は間に入っていた中国企業についてどういう情報があったのか。このあたり、日本の情報収集能力が今後ますます重要になってきます。
企業だけに任せるのは酷で、官民をあげて能力を高めていかねばなりません。
2024年2月23日 22:58 』