東南アで原発計画続々 ベトナムに続きマレーシアも、経済成長で需要増

東南アで原発計画続々 ベトナムに続きマレーシアも、経済成長で需要増
温暖化ガス抑制に関心
https://www.nikkei.com/article/DGKDZO06987190Y0A500C1FF1000/

『2010年5月8日 4:00

これまで原子力発電所の空白地帯だった東南アジア諸国連合(ASEAN)地域で、原発の建設計画が勢いを増している。海外に設備発注を始めたベトナムに続き、マレーシアが導入の方針を固め、インドネシアも新たな建設候補地の検討に動き出した。電力需要の急増などに加え、温暖化ガスの排出抑制に対する関心が高まったためだ。

マレーシアのエネルギー・環境技術・水資源相のピーター・チン氏は建設地の選定作業に近く着手し、2021年の原発稼働をめざすと明らかにした。「長期にわたりエネルギー需要を満たす唯一の現実的な選択肢だ」と指摘。建設候補地や規模、投資額など具体案はまだ公表していない。

いまは電源構成の半分以上を自国産の天然ガスが占めるが、あと20年程度で枯渇するとの予測もあり、電源の多様化が課題になっている。日本やフランス、韓国、中国が技術導入先の候補として取りざたされている。

インドネシアではジャワ島中部の計画が住民の反対で動かなかったが、カリマンタン島やリアウ諸島などが昨年から今年にかけ誘致に乗り出した。政府は手を挙げた地域を建設候補地として検討対象に加えた。場所は未定のままだが、16年に30兆~40兆ルピア(約3千億~4千億円)を投じて100万キロワットの設備を着工し、19年の稼働をめざす。さらに25年までには計400万キロワットまで増やす。

先行するベトナムは20年の稼働に向け200万キロワットの第1期工事をロシア国営企業に発注し、2期工事も予定する。北部バターン州で1984年に完成したものの、欠陥が多いため稼働しないままになっている設備を持つフィリピンは、韓国電力公社に軽水炉部品の購入を打診。タイは中国企業から技術提供を受ける覚書に署名し、シンガポールは2月公表の中長期経済戦略で初めて原発建設の可能性を示した。

各国が原発に積極的なのは、経済成長に伴い電力需要が急増しているためだ。日本エネルギー経済研究所によると、電力消費は07年から35年までに年平均でベトナムが6.7%、インドネシアが5.6%、フィリピンが5.4%とそれぞれ伸び、中国の3.2%を上回る見込み。エネルギー源の多様化が急務で、環境問題も配慮し発電時に温暖化ガスを出さない原子力に注目する。

安全性をどう確保するかが最大の課題だ。火山国で地震の多いインドネシアは年内に同じ火山国の日本に担当官を派遣し、耐震構造などを学ぶことにしている。

(ジャカルタ=野沢康二) 』