世界の原子力の基本政策と原子力発電の状況

世界の原子力の基本政策と原子力発電の状況
https://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/hakusho/hakusho2018/s6.htm

※ 東南アジアと中東に関する部分を、抜粋して紹介する。

『世界の原子力発電設備容量は、2018年1月末時点で、運転中のものは448基、3億9,305万kWに達しており、建設中、計画中のものを含めると総計663基、6億1,795万kWとなっています。

2016年中に供給された年間電力量は2兆4,900億kWh 1 であり、これは全世界の電力の約11%に当たります。

脱原子力政策を決定したドイツのような国もあれば、アジアを中心に57基が建設中であり、原子力発電の利用を継続・拡大する国もあります。

 2011年以降においても、世界において42基の原子炉について営業運転が開始されているとともに、37基の原子炉建設が開始されています。 』

『(4)アジア
④ ASEAN諸国

 ASEANを構成する10か国は2018年2月末時点で、いずれも原子力発電所を持っていません。しかし、気候変動対策やエネルギー安全保障の観点から、原子力計画への関心を示す国が増大しています。

 ベトナムでは2009年に、2020年の運転開始を目指し、原子力発電所を2か所(100万kW級の原子炉計4基)建設する計画が国会で承認されました。また2011年の「第7次国家電力マスタープラン」では、2030年までに10基の原子炉を運転開始させ、国内の電力の約10%を原子力で賄う計画が示されました。同国初の原子力発電所となるニントゥアン第1、第2原子力発電所は、それぞれロシアと我が国が建設プロジェクトのパートナーに選定されましたが、政府は2016年11月、国内の経済事情を背景に、両発電所の建設計画の中止を決定し、国会もこれを承認しました。

 インドネシアは2007年に制定された「長期国家開発計画(2005~2025年)に関する法律」において、2015~2019年に初の原子炉の運転を開始し、2025年までに追加で4基の原子炉を運転開始させる計画を示しました。しかし、ムリア半島における初号機建設計画は2009年に無期限延期となり、2010年以降はバンカ島を新たな候補地として検討が継続されていますが、原子力発電所建設の決定には至っていません。一方で、政府はロシアや中国の協力を得て実験用発電炉(高温ガス炉)の建設計画を進める等、商用発電炉導入に向けたインフラ整備を進めています。

 タイは2010年の電源開発計画(PDP2010)において、2020~2028年に5基の原子炉(各100万kW)を運転開始させる方針を示していましたが、東電福島第一原発事故や2014年の軍事クーデター後の政情不安等に伴い計画は先送りされています。軍による暫定政権下、2015年に発表された電源開発計画(PDP2015)では、初号機の運転開始時期が2035年、2基目が2036年とされています。

 マレーシアは、2010年策定の「経済改革プログラム」において原子力発電利用を検討し、2011年にマレーシア原子力発電会社(MNPC)を設立しました。2021年と2022年に原子炉各1基を運転開始することを目標としていましたが、MNPCは2013年に、建設開始は2021年以降となるとの見通しを発表しています。

 フィリピンは、現行のエネルギー計画(2012年~2030年)には原子力発電利用の計画を盛り込んでいないものの、2016年に就任したドゥテルテ大統領が、1986年に完成後、運転しないままとなっているバターン原子力発電所(60万kW)の復活検討に言及しており、11月には同国エネルギー省(DOE)が、工業化目標達成のため、エネルギー源多様化に向けて原子力発電の導入を検討する意向を発表しました。』

『(5)その他
① 中東諸国

 中東地域では現在稼働中の原子力発電所はありませんが、電力需要の伸びを背景として、原子力発電の建設・導入に向けた動きが活発化しています。

 UAEでは、電力需要の増加により、2020年までに4,000万kW分の発電設備が必要であるとされています。このためUAEはフランス、米国、韓国と協力し、原子力発電の導入を検討してきました。UAEが2020年までの100万kW級の原子炉4基の建設に関する国際入札を実施した結果、2009年末に韓国電力公社(KEPCO)を中心とするコンソーシアムが選定されました。建設サイトであるバラカでは、2012年に建設が開始された1号機が2018年に運転を開始する予定です。2~4号機の建設も進捗中であり、2020年までに順次運転開始する予定です。

 トルコは、経済成長と電力需要の伸びを背景として、2030年までに3か所の原子力発電所に合計12基の原子炉を建設する計画です。3か所の原子力発電所のうち、アキュではロシアが120万kW級原子炉を4基、シノップでは三菱重工業(株)と仏アレバ社の合弁会社であるATMEA社のATMEA1を4基建設する予定です。現状では、アキュ、シノップともに初号機の運転開始は2023年と見込まれています。

 サウジアラビアでは、2030年までに16基の原子炉を建設する計画です。原子力導入に向けては、フランス、韓国、中国、ロシア等が協力しており、フランスとは2015年6月に、サウジアラビアにおける2基のEPRの建設に関するフィージビリティ調査を実施する協定に調印しています。韓国とは2015年3月、韓国国産の小型炉SMARTのサウジアラビアでの建設及び第三国への共同進出の推進に係るMOUを締結しています。ロシアとは2015年6月に原子力平和利用に関するMOUに調印しています。更に中国とは、2014年8月に原子力平和利用に関するMOUに調印した他、2016年1月には、高温ガス炉の建設に関するMOUも結んでいます。

 ヨルダンは、フランス、中国、韓国と原子力協定に署名し、同国初の原子力発電所建設を担当する事業者の選定を進めていましたが、2013年10月に、ロシアを優先交渉権者として選定し、2015年10月には、原子力発電所の建設・運転に関する政府間協定を締結しました。ヨルダンは2025年までに100万kW級原子炉を2基稼働させる計画です。

 イランでは、ロシアとの協力で建設されたブシェール原子力発電所1号機が2013年に運転を開始しました。更に両国は2014年11月、イランに追加的に8基の原子炉を建設することで合意しました。』