インフレが呼ぶGDP「5%成長」 32年ぶりの恩恵と錯覚
物価を考える 好循環の胎動(5)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA194ZT0Z10C24A1000000/
『「日本株は初めてという投資家も含め、面談が相次いだ」。モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅チーフエコノミストは、年明け早々にニューヨークなどの投資家を回った時の様子をこう振り返る。
バブル期以来の値をつけるなど日本株市場が活況のなか、会談したのは20社超。特に投資家が関心を寄せたのは、日本の名目国内総生産(GDP)成長率と株価の連動についてだった。
企業業績や株価は物価変動を反映した名目値の…
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『企業業績や株価は物価変動を反映した名目値のため、投資家は「株価は名目GDPに連動する」と見る。物価上昇に伴い、2023年の名目GDPは5.7%増と1991年以来の高成長となった。安倍晋三元首相が掲げた目標「GDP600兆円」の到達も目前に迫る。
物価上昇に押し上げられた名目GDPが陰の立役者となり、日本への注目は高まる。
山口氏は「動かなかった賃金や物価が上がり始め、投資家は構造的なトレンド変化も起きると期待している」と語る。日本の23年7〜9月期の名目成長率が中国を上回ったとして、投資先を日本に振り替える動きもあったという。』
『「インフレは短期的には財政にプラスの影響を与える」。欧州中央銀行(ECB)は23年に公表したリポートでこう記した。
名目成長している経済ではインフレで税収が先行して伸び、公共支出は遅れて増える傾向があるのがその理由だ。歳出の実額は増やしつつもその伸びを名目成長率以下にとどめるといった工夫もできるため、財政再建の余地も広がる。
日本にも構図は当てはまる。内閣府が達成できないとみる25年度の基礎的財政収支の黒字化について、ある財務省幹部は「まだ達成可能だ」と語る。税収増が続き、政府が大型の経済対策をしなければ手が届くとの分析だ。上昇し続けてきた債務残高のGDP比も、23〜24年は分母の伸びで低下に転じる公算が大きい。』
『ただ名目成長の恩恵だけを過信するのは禁物だ。
「設備投資は過去最大規模の名目100兆円を実現する見込みだ」。岸田文雄首相は、1月末の施政方針演説で胸をはった。だが23年度の「名目100兆円」は、物価を加味した実質では前年度とほぼ変わらない。15日公表の23年10〜12月期の数字も実質で前期比0.1%減だった。
実質値ではなく名目値に沿って物事を判断してしまうことは「貨幣錯覚」と呼ばれる。実質ベースで設備投資が増えなければ、潜在成長率は上がらない。』
『財政の面でも国債償還の利払い費の増加が、インフレによる税収増の恩恵を上回ればやりくりは急に苦しくなる。物価上昇に合わせて、長期金利がアベノミクス以前の1.5%ほどに戻ることは十分想定できる。
大正大の小峰隆夫客員教授は「インフレ下の方が色々な物事を調整する余裕ができ、政策も工夫できる」と話す。見かけの高成長が先行している間に、潜在成長力や持続可能な財政計画を磨く。物価が上がらない時代には見えなかった名目成長の「恩恵」と「錯覚」を踏まえたしたたかな政策に切り替える必要がある。』
『多様な観点からニュースを考える
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永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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ひとこと解説 円安・物価高で名目成長が高まることで最も恩恵を受けるのは政府部門でしょう。
というのも税収が増えるからです。
円安になれば大企業の法人税収が増えますし、物価高になれば消費税や所得税も増えます。
そうした影響もあり、22年度の税収は71兆円を超えましたが、23年度の税収は補正予算ベースでも69兆円台にとどまっています。
背景には、前年の輸入消費税増加の還付や制度改正の影響により下振れすることがあるようです。
しかし、さすがに名目5%するのであれば、もう少し23年度の税収は増えそうな気がします。
2024年2月16日 8:23いいね
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滝田洋一
日本経済新聞社 特任編集委員
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ひとこと解説
①実質値ではなく名目値に沿って物事を判断してしまうことは「貨幣錯覚」と呼ばれる――。それならば、「ドル換算」の名目GDPで日独が逆転したと、大騒ぎするのは背理もいいところでしょう。
②もっとも「円ベース」の経済(付加価値)が停滞したままでは、何事も始まらない。法人企業統計によれば、1990年度から2021年度の30年あまりで、日本企業の売上高の増加は5%にとどまりました。
③このデフレ型停滞から脱却するには、適度なインフレが必要なのは自明だと思います。潜在成長率は上がらない? コロナ禍には0%スレスレだったのが、足元では0.7%まで回復しています。弾みをつけることこそ課題でしょう。
2024年2月16日 5:31 』