センキョノミクスを憂える 票目当てでゆがむ経済運営

センキョノミクスを憂える 票目当てでゆがむ経済運営
本社コメンテーター 小竹洋之
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD0919C0Z00C24A2000000/

『「政治とは醜い者たちのためのショービジネスだ」。クリントン元米大統領の側近として知られた米政治コンサルタント、ポール・ベガラ氏はかつてこう評した。まして選挙となれば、なおさらきれい事では済まされない。

世界で重要な選挙が続く2024年、各国・地域の経済運営も票目当てのショービジネスと化すのだろうか。金融緩和や財政出動で必要以上に経済をふかしたがる「センキョノミクス(選挙向けの経済政策)」のまん延…

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『世界で重要な選挙が続く2024年、各国・地域の経済運営も票目当てのショービジネスと化すのだろうか。金融緩和や財政出動で必要以上に経済をふかしたがる「センキョノミクス(選挙向けの経済政策)」のまん延を憂える。』

『米経済学者のキャローラ・バインダー氏が世界の主要中銀118行の10〜18年の動向を分析したところ、年平均で約1割が何らかの政治介入を受けていた。左右両派からの金融緩和の圧力が大半で、民主主義が劣化した国・地域ほど干渉を許しやすいという。

1970年代以降の100件余りのインフレショック(56カ国・地域)を検証した国際通貨基金(IMF)の論文によると、発生時から5年以内に危機前の物価上昇率に戻ったのは6割で、平均では3年を要していた。中銀の多くが過去の教訓に学び、早すぎるインフレ退治宣言や金融緩和への移行を慎もうとしているのに、その判断を政治がゆがめかねない。』

『もうひとつ気がかりなのは、内向きな政策の横行である。米国ではトランプ氏のポピュリズム(大衆迎合主義)に引っ張られるように、バイデン氏も国内産業の保護や移民受け入れの制限に傾く。フランス、ドイツなどでは環境規制や燃料高の負担に悩む農民の抗議活動が広がり、極右勢力の伸長を恐れる欧州連合(EU)も救いの手を差し伸べざるを得ない。

IMFの推計によると、23年に世界で実施した産業政策は、補助金の投入や輸出入の制限を含めて2500以上にのぼる。競争力低下への対応のみならず、選挙対策や放漫財政の結果でもある。

空前の選挙イヤーが問うのは、権威主義と対峙する民主主義の強靱(きょうじん)性ばかりではない。マクロ経済政策の妥当性や健全性も試されているのだ。』

『日本はどうか。支持率の低下にあえぐ岸田文雄首相が、9月の自民党総裁選や来たるべき衆院選を前に、時限的な所得税減税やガソリン価格抑制の補助金を簡単に打ち切れるとは思えない。日銀が今春にマイナス金利政策を解除できても、その先の利上げに向く政府の視線は険しいに違いない。

振り返れば、岸田政権は国政選挙を迎える度に大盤振る舞いを繰り返してきた。その場しのぎのセンキョノミクスを常態化させ、日本経済をゆがめてほしくはない。』