ヨーカ堂が東北など撤退 総合スーパー、地方店苦境映す

ヨーカ堂が東北など撤退 総合スーパー、地方店苦境映す
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC09A1G0Z00C24A2000000/

『イトーヨーカドー郡山店(福島県郡山市)は東北地盤でセブン&アイグループのヨークベニマルが店舗を引き継ぐ

セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下のイトーヨーカ堂が北海道と東北、信越地方からの撤退を決めた。半分超の店舗は承継する企業が決まり、従業員の雇用は維持されるもようだ。衣料品や家電までそろえる総合スーパー(GMS)はかねて苦戦が指摘されてきたが、ヨーカ堂撤退は特に地方でGMS浮揚に打つ手がないことを浮き彫りにした。

【関連記事】ヨーカ堂、北海道・東北・信越撤退 構造改革で17店閉鎖

ヨーカ堂は2023年9月にセブングループの食品スーパー、ヨークと合併した。旧ヨーカ堂は全国で123店あり、北海道と東北・信越地方に計17店舗を運営する。

北海道や東北地方のほか、新潟県唯一の店舗である「丸大新潟店」(新潟市)が閉店し、格安が特徴の食品スーパー「ロピア」を運営するOIC(オイシー)グループ(川崎市)が25年3月ごろに店を受け継ぐ。

鈴木敏文氏の地元、長野の店舗も閉鎖

セブン―イレブン・ジャパンを創業した鈴木敏文氏の地元である長野県でも、アリオ上田店(上田市)内の食品スーパーと南松本店(松本市)が来年2月までに閉店する見通しとなった。

閉鎖対象店は春以降、順次閉店する。時期の目安としてヨーカ堂は「譲渡先に引き継ぐ1〜2カ月前に閉める」と説明した。

今回閉鎖する店舗のうち、北見店(北海道北見市)や青森の八戸沼館店はそのまま閉店し、福住店(札幌市)は承継する企業と協議中だ。受け皿がない地域では、買い物が困難になる消費者が出る可能性もある。

従来型のGMSは苦境から脱せていない。ヨーカ堂が公表したGMSの地域別売上高によると、23年2月期の北海道と東北の売上高は869億円。店舗閉鎖などの影響があるものの、この10年間で売上高は3割強減った。

消費者はGMSから食品スーパーや専門店に流れている。衣料品はファーストリテイリングの「ユニクロ」などの専門店で選ぶ消費行動が一般的となった。セブングループで東北地盤の食品スーパー、ヨークベニマルの売上高を見ると10年で約3割増えた。食品に特化するスーパーは堅調だ。

祖業の衣料品にこだわり、改革に遅れ

ヨーカ堂は創業時から衣料品が柱で祖業へのこだわりもあり、改革が遅れた。セブン関係者は「(セブングループには)柱のコンビニがありGMSが赤字でも全体では利益が出ていたため、大きく変革する風土が醸成されなかった」と指摘する。

GMSはレジ要員や品出しなど働く人員が多く人件費がかさむ。複数の階にまたがる広い売り場を抱えて水道光熱費負担も重たい。コンビニエンスストアなどの小型店に比べて高コスト体質になりがちだ。

ライバルのイオンもGMSで苦戦した。15年2月期以降、営業利益率は1%を割り、過去10年のうち営業赤字を3回記録した。イオンは衣料品の在庫圧縮などの改革を進め、23年3〜8月期にGMS事業が10年ぶりに黒字転換したものの、先行きが明るいとは言えない。

北海道を地盤とする地域スーパー最大手、アークスの横山清社長は「(ヨーカ堂は)既に衣料品の撤退も決めており驚きはない」と語った。GMSとしての存続は厳しかったとの見立てだ。ヨーカ堂は26年2月期までに33店舗を閉店する計画で今回、具体名が明らかになったのは17店舗にとどまる。ヨーカ堂はGMSを首都圏中心にする考えを示しており、中部や近畿などでも閉鎖店舗が出る可能性が高い。

【関連記事】

・ヨーカ堂撤退の北海道 セブン&アイとイオンの戦略に差
・イトーヨーカ堂、早期退職募集 店舗減で本社移転も計画

ニュースレター登録 』