『人間はどこまで家畜か:現代人の精神構造』

『人間はどこまで家畜か:現代人の精神構造』
https://p-shirokuma.hatenadiary.com/entry/20240131/1706709759

 ※ 今日は、こんな所で…。

『先日、大和書房さんから『「推し」で心はみたされる? 21世紀の心理的充足のトレンド』が発売されたばかりですが、今度は早川書房さんから

『人間はどこまで家畜か: 現代人の精神構造 (ハヤカワ新書)』という書籍を発売していただくことになりました。
 
私がつくる書籍には2つのタイプがあって、ひとつは、現代人が心理的にも社会的にもうまく適応していくためのメソッドに重心を置いたもので、1月に発売された『「推し」で心はみたされる?』はその典型です。

もうひとつは、現代社会という巨大なシステムがどんな構造や歴史的経緯から成り立っていて、私たちにどんな課題が課せられ、どういった現代特有の生きづらさを生み出しているのかを考えるタイプの書籍で、2月21日発売予定の『人間はどこまで家畜か』は後者のタイプにあたります。
 
同じような書籍として、2020年にイーストプレスさんから『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』を出版していただき、ありがたいことに現在まで続くロングセラーとなりました。

しかしながら、私としては幾つかの点で書き足りない部分があったと自覚していました。というのも、『健康的で清潔で、道徳的な~』は現状の記述と考察にとどまり、未来についての考察が欠けていたように思われるからです。それから同書には生物学的知見にまつわる記述が不足していました。
 
今回はそうではありません。

進化生物学で語られるところの「家畜化症候群」、さらに、進化の過程で犬やネコや人間に起こってきたとされる「自己家畜化」という進化生物学上のトピックをキーワードに、加速しつづける社会と加速しきれない私たち自身の生物学的なメカニズムについてまとめたいと思い、かねがね準備してきました。

準備が可能になったのは2010年代に相次いで翻訳された自己家畜化についての書籍たちのおかげだったり、スティーブン・ピンカーやジョセフ・ヘンリックといった進化心理学のビッグネームのおかげだったりします。

それと、私の関心領域が雑食的だからってのもあるでしょう。私よりも精神医学・進化心理学・人文社会科学のそれぞれに詳しい人間は幾らでもいるでしょうが、それら三つの全部に私と同じぐらい愛情を傾けている人は日本にはあまりいないように思います。

こういっては何ですが、『人間はどこまで家畜か』のような書籍を書ける人間は日本には私以外にいないのではないでしょうか。
 
私は精神医療の現場をとおして、加速しつづける社会についていけなくなっている人、不適応を呈している人にたくさん出会ってきました。

そうした今どきの不適応として発達障害(神経発達症)を連想する人も多いでしょうけど、実際にはそれだけではないですよね? 

たとえば種々の不安症などもそうで、地下鉄にどうしても乗れない・大勢の人がいる場所で動悸がしてしまう等々は東京のような都市空間で生活するうえでハンディだと言えます。

ですが、こうした症状が精神疾患として問題視されなければならないのは、当人の生物学的な性質のためだけでなく、地下鉄が張り巡らされたり大勢の人が集まったりしている現代の都市空間、現代の文化や環境がこのようにできあがっているためでもあります。
 
2024年現在、その文化や環境は今もなお変わり続けています──もっと能率的な方向へ・もっと生産的な方向へ・もっとホワイトでコンプライアンスにかなった方向へ。

資本主義や個人主義や社会契約や功利主義に妥当する方向に変わり続けている、とも言えるでしょう。

この本の前半では、人間が進化の過程でみずから起こしてきた自己家畜化という(生物学的な)変化・進化について解説しますし、それこそが人間を地球の覇者たらしめた生物学的な鍵ではあるでしょう。

とはいえ、自己家畜化を遂げた人間といえども、誰もが・どんな文化や環境にも適応できるわけではありません。

文化や環境の変化がもっともっと加速していくとしたら、より多くの・より新しい不適応が私たちを待ち受け、将来の私たちを疎外するのではないでしょうか。
 
過去に起こった自己家畜化という生物学的な進化と、ますます加速していく文化や環境を見比べた時、どんな未来が見えてくるでしょうか。そのうえで私たちは、どんな未来を歓迎すべきでどんな未来を回避すべきでしょうか?
 
もとより簡単に結論の出せる問題ではありません。しかしまずは現状をよく認識したうえで未来について考え、語ってみなければ始まりません。そうした議論のたたき台になる本を作りたいと願って私はこの本を作りました。以下に、各章のタイトルを紹介します。
 
 
はじめに

序章:動物としての人間

第一章:自己家畜化とは何か──進化生物学の最前線

第二章:私たちはいつまで野蛮で、いつから文明的なのか──自己家畜化の歴史

第三章:内面化される家畜精神──人生はコスパか?

第四章:「家畜」になれない者たち

第五章:これからの生、これからの家畜人

あとがき──人間の未来を思う、未来を取り戻す

※最新の情報に貼り換えました
 
 最後に。この本の優劣や可否についてはお読みになった方が決めることで、私は何とも言えません。

ですがこの本の参考文献として登場する進化生物学・進化心理学・精神医学・社会学・歴史学・倫理学etcの書籍はどれもエキサイティングで、読むに値するものだったと思っています。

この本は新書、それもハヤカワ新書というフォーマットから発売されるわけですから、より詳しい書籍に読者の方を案内するのも役割の一部だと私は考えています。

この本をお読みになった方が、進化生物学や進化心理学や精神医学、さらに社会学や歴史学をはじめとする人文社会科学領域に興味を持ってくださったらなお嬉しいです。

そのうえで是非、未来についてのあなたの意見、あなたの展望を語ってみていただけたらと願います。

シロクマ (id:p_shirokuma) 9日前 読者になる 』