カナダとインド 元警察庁長官・松本光弘

カナダとインド 元警察庁長官・松本光弘
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD173GF0X10C24A1000000/

『1985年6月、成田。カナダ太平洋航空(当時)機が積んできた手荷物が爆発し、作業員2人が亡くなった。時を同じくしてトロント発のインド航空機が空中爆発、乗客乗員329人がアイルランド沖に沈む。

証拠は千葉県警が集めたものだけで、カナダには何もない。日加の合同捜査が始まり、上司たちや県警捜査一課長と一緒にバンクーバーへ飛んだ。人生初の飛行機で、爆弾容器破片の運搬や先方へのプレゼン、通訳などが私の役割…

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『犯人グループはシーク教徒過激派であった。この前年、インドからの独立を目指した彼らの聖地・黄金寺院をインド政府が軍事攻撃して多数の犠牲者を出し、その報復でガンジー首相が暗殺されていた。人口の四分の一が移民というカナダには、閣僚まで輩出するほど大きなシーク教徒コミュニティがある。爆弾テロを起こした過激派もまた、そこに巣食(すく)っていたのだった。

一部のシーク教徒たちとインド政府の対立は今も続いている。2023年9月、カナダ国籍を持つシーク教徒活動家をインド政府が暗殺したとカナダ政府が公然非難し、両国の外交関係が緊張する。同年11月には米国でも、同様の暗殺計画を企てたとして、インド人被疑者が起訴された。

移民を受け入れると、彼らの祖国の国内対立も抱え込む。東京でもクルド系とそうでないトルコ人が、突発的に集団乱闘に及んだりした。受入れ国では移民を巡って世論の分裂も招きかねず、欧州では外国人排斥の極右が台頭している。異なる背景を背負う多様な人間集団の平和共存は、一筋縄ではいかない。』