ルノー、EV新会社上場見送り 「市場環境適さず」

ルノー、EV新会社上場見送り 「市場環境適さず」
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『【パリ=北松円香】仏自動車大手ルノーは29日、2023年11月に設立した電気自動車(EV)の新会社「アンペア」の上場を見送ると発表した。これまで24年前半の上場を目指すとしていた。決定について「現在の株式市場の環境は新規株式公開(IPO)に最適ではない」と説明している。

ルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)はこの日の記者会見で業績が大幅に改善しているとし「予想以上に力強いキャッシュフローと現在の市場環境を踏まえれば、(上場の)見送りが妥当だ」と述べた。アンペア分社化を含めたルノーの再建計画「ルノーリューション」に必要な資金は「自分たちでまかなえる」と強調した。

日産自動車は最大6億ユーロ(約960億円)、三菱自動車は同2億ユーロの出資を想定していた。ティエリー・ピエトン最高財務責任者(CFO)によると「両社はIPOの有無にかかわらず投資できる取り決めとなっており、今後協議する」という。

アンペアには米半導体大手クアルコムのグループ企業も資本参加する方針だった。しかしIPOが条件だったため、上場取りやめに伴い出資を見送る。

ルノーは主力の欧州市場で30年までに新車販売の100%をEVにする目標を掲げ、アンペアの売上高を31年に250億ユーロ超まで伸ばす計画を立てていた。デメオ氏はアンペアの時価総額が最大100億ユーロとの見方も示していたが、IPO市場の冷え込みにより想定通りの資金調達ができるか危ぶまれていた。

【関連記事】

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中西孝樹
ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト
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ひとこと解説

BEV逆風の影響を受け、期待した企業価値を得ることが難しいことが主因。このIPOは既存株主の希薄化が課題であり、欧州資本市場においてはIPOよりも自己資金を用いた運営が推奨されていました。ルノーは自己資金で十分アンペールを運営できるので、基本的な事業はIPO無しでも進められます。ただ、信託された日産株式(出資比率28%)への売却圧力は増すことになり、いろいろ賑やかなこともあるかもしれません。IPO見送りでクアルコム出資は実現が困難となりましたが、日産・三菱自は規定の出資には契約上影響はないそうです。BEVシフトは足元キャズムに落ち込んでいますが、長期トレンドは不変です。
2024年1月30日 9:05』