外部委託はあくまで手段 コンサル依存の前にすべきこと

外部委託はあくまで手段 コンサル依存の前にすべきこと
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/32746

 ※ 昔は、「霞が関の官僚群(国家公務員上級試験合格者、いわゆる「キャリア官僚」)は、「日本最大のシンクタンク」とか、言われたモンだが…。

 ※ いつのまにか、「コンサル丸投げ集団」へと、変質してたのか…。

 ※ それで、「キャリア達」は、結局、何やってんだ…。

『いまや霞が関はコンサルティング会社の〝重要クライアント〟だ。大手コンサル会社の中には、年間100億円以上の政府案件を受注している会社もある。新型コロナウイルス対策やデジタル化の波も影響し、政府の委託事業におけるコンサルの存在感は確実に強まっている。
(イラスト・マグマ・ジャイアンツ)

 元内閣官房のある官僚は「これまでは広告代理店に委託していたような案件も今はコンサルに委託したりしている。〝なんでも屋〟状態だ」と指摘する。実際、コンサルへ委託している案件名を見ると「分析」、「調査」のほかに、「周知広報」や「システム開発」、「クラウド導入」といった文言も目立つ。

 こうしたコンサル依存について、医系技官として政策立案にかかわっていた元厚生労働省の官僚は「本来は官僚がすべき政策立案が、コンサルに〝丸投げ〟になっている。ただ、コンサルの社員は必ずしも医療業界で働いた経験があるわけではない。問題があると内部の人間も自覚しているし、提案の質が費用に見合わないと感じることもあるが、官僚は他の業務で忙殺されていて、コンサルに頼らざるを得ない」と本音を吐露する。

 政府案件に携わっている大手コンサル会社のある社員も「『とりあえずやっておいて』といった〝丸投げ〟案件は少なからずある。官僚は数年単位の人事異動によって知見がたまりにくいのも問題なのではないか」と漏らす。

 多額の費用が投入されている外部委託だが、現状は決して良い政策を生むための理想の関係性にはないようだ。

外部委託で起きているミスコミュニケーション

 外部委託のフローは、一般的には発注者である政府が委託したい業務内容の詳細を記載した「仕様書」を提示し、それに基づいて、コンサルなどの民間企業が提案書を作り「入札」をする。そして政府が各社の提案内容や価格を見て委託先を決める、という流れだ。
 ある省の官僚によれば、外部委託にまつわる入札・契約業務を担当する職員は、担当している政策分野や入札手続きに精通はしているものの、必ずしも委託する業務や委託先の業界に詳しいとは限らないという。

 例えば、IT関連事業の委託を公募する場合、発注担当者は政策の専門家として利用目的などは仕様書に書けても、IT分野に精通しているわけではないため、どういった技術にどのくらいの費用がかかるか、といったことは分かっていない場合がほとんどだという。入札を希望する各社は、この仕様書を基に、どの程度のスペックが必要かを想像しながら提案書を作成する。そして、発注側が各社の提案を比較して、委託先を選ぶ。こうしてできあがった〝成果物〟が本当に発注者側にとって最適なものとなっているかは、想像に難くない。

 外部委託では、こうしたミスコミュニケーションが起きているのだ。』

『元厚労官僚で2020年にコンサル会社を設立した千正康裕氏はこの状況について「問題は仕様書を書く前段階にある」と指摘する。「例えば、携帯を買いたいと思ったときに、キャリアの種類や、携帯にどんな機能がついていて、自分にとって必要十分な機能が何か、価格の相場など、何も知らないでお店に行くと良い買い物はできない。しかも、政府案件は買い物をするという金額規模ではなく、ましてや財源は税金。発注者側が仕様書を書く前にその業界を含め多くの人とコミュニケーションをとり、幅広く情報収集をすることから始めるべきだ」と続ける。

 1990年代に官僚の接待汚職事件が発覚して以降、官僚と民間企業の接触は過度に制限されてきた。だが、社会課題が複雑化し、新しい技術も増え、委託する内容も多岐にわたる中、「クリーンな形での交流は良い政策を作るうえでは欠かせない」と官と民の両方を経験する千正氏は実感を込める。

 こうした交流を推進するために、同氏は民間企業、NPO、有識者などと官僚を交えた「官民共創勉強会」を定期的に開催し、政策課題の共有と相互理解を深める活動を行っている。
良好な関係性を築くには
業務の〝棚卸し〟が欠かせない

 外部委託に関するミスコミュニケーションの問題を指摘する一方で、千正氏は「官僚が本来業務に集中するためには、外部委託は適切な形でもっと進めていくべきだ」と述べる。

 何を委託し、何を官僚がやるべきなのか。それは扱う分野やプロセスの性質によって整理する必要がある。

 千正氏は「『政策』といっても、そこに使用する政府独自のリソースは法規制・ルール、予算、税制、執行、情報提供、PR、表彰、海外との協力など多岐にわたる。情報提供、PR、表彰などは政府より民間が得意なので委託になじむが、法規制・ルール、予算、税制、執行などは民間に知見が少なく一般に委託には向かない」と分析する。

 また、政策立案過程において、どのプロセスをコンサルに任せるかも重要だ。一般的な政策立案過程は、社会的課題を発見し、実態調査や分析に基づいて解決策たる政策案を作成する。そして、その案を有識者会議などで議論して、意見を取りまとめて決定する。

 「コンサルやシンクタンクが得意な実態調査・分析や有識者会議などの会議運営は任せればいい。一方で、政策案作成や意見集約は官僚がやるべきだ。政策の画を描き、解決策の案の作るのは政府のリソースを知る官僚が得意とすることである。意見集約に関しては、その性質上、絶対に委託をしてはいけない。どの案を採用するか、利害関係者にどこを妥協してもらうかといった調整は、利害関係の外にいる中立的な官僚が、閣僚の指揮の下で判断しなければならない」(千正氏)

 人手不足の霞が関で、よりよい政策を生むには、すべてを外部に丸投げするのではなく、まずは業務を〝棚卸し〟して、互いの能力が最大限発揮される関係性を探ることが欠かせない。

 「かつて英国でも官僚のコンサルタントへの依存が高まり、莫大な金額が費やされていた」と話すのは、日英の公務員制度を比較研究する学習院大学法学部教授の藤田由紀子氏だ。

 官僚は専門性が十分ではないと考えられ、ブレア労働党政権などでは大量のコンサルが行政に動員された。だが、リーマンショック後の財政難の中、政権交代を機に契約周りの見直しが行われると、コンサルに対して多額の報酬が支払われていることが分かり、契約や調達、プロジェクト執行やデジタル部門を中心に、官僚の専門性を高める動きが広がったという。「日本も委託金額に見合った成果が出ているのかを検証するべきだ。その判断を可能にするためにも官僚の専門性を高めることは欠かせない」と藤田氏は述べる。

 霞が関は慢性的な人手不足であり、今後も一部の業務を外部委託していくことは避けられないだろう。だが、政策立案は官僚が諦めてはいけない業務である。すべてを委託頼みにするのではなく、「官僚にしかできない業務」にいかに注力するかを考えなければ、良い政策は生まれない。』