自民党安倍派・二階派も解散へ 政治資金問題で
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『自民党最大派閥の安倍派(清和政策研究会)は19日、派閥の政治資金問題を受けて同派の解散を決めた。二階派(志帥会)も会長を務める二階俊博元幹事長が同派の解散を表明した。すでに岸田文雄首相が打ち出した岸田派(宏池会)とあわせ3派閥が解散を相次いで発表する異例の事態に発展した。
安倍、岸田、二階の3派閥は19日、政治資金規正法違反の罪で会計責任者らが立件された。首相は「国民の政治への信頼を損ねるもので、極めて遺憾で党総裁としておわびする」と語った。
派閥は中選挙区時代と比べて弱体化したものの、自民党の政権運営の基盤を担ってきた。党派閥の政治資金規正法違反事件により、党内統治は解体的出直しを迫られることになる。
安倍派は19日、党本部で臨時総会を開いた。塩谷立座長は冒頭で「国民の信頼を裏切り心より深くおわびする」と謝罪した。「長年にわたる事務的なミスリードで誤った処理をさせたことも幹部として深くおわびする」とも話した。
総会後の記者会見で「(解散は)断腸の思いだ」と述べた。総会に出席した議員の大半が派閥解散を唱えたと明かした。
安倍派は清和会として1979年に発足し、福田赳夫元首相が初代会長に就いた。福田氏が宏池会(現・岸田派)の池田勇人元首相の経済政策に異議を唱えて設立した「党風刷新連盟」を起源とする。
2000年以降は森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫の4氏を首相に輩出し「清和会支配」と呼ばれた。22年7月に安倍氏が死去した後は、会長不在で集団で派閥を運営してきた。
自民党二階派の総会後、記者会見する派閥会長の二階元幹事長。総会で二階派の解散を表明した(19日午後、東京都千代田区)=共同
二階派は総会で解散方針を了承した。二階氏は記者会見で「責任を痛感し国民、支援いただいた多くの同志に心からおわびを申し上げる」と陳謝した。派閥を解消しても議員同士で集まる可能性に触れた。「自然体、常識の範囲でやっていきたい」と主張した。
3派閥の所属議員の人数は18日時点で安倍派(98人)、岸田派(46人)、二階派(38人)と計182人を数える。もともと無派閥の79人とあわせると261人で党内の過半に達する。
派閥解消の動きはその他の派閥に波及する可能性がある。麻生派(志公会)と茂木派(平成研究会)は派閥のあり方について、党政治刷新本部が来週にまとめる中間報告を踏まえつつ派内で協議を続ける。
麻生派を率いる麻生太郎副総裁は「政策集団として活動していくにあたり、そのあり方を所属議員とよく相談したい」とコメントした。茂木派会長の茂木敏充幹事長は記者団に「グループの仲間とよく相談したい」と指摘した。
派閥の解散は自民党が検討する政治改革案に影響する。
首相は19日、記者団に「国民からカネやポストを求める場となっているのではないかという疑念の目が注がれている」と派閥への不信を払拭する考えを示した。派閥の政治資金パーティーや閣僚の推薦名簿の提出を禁止する案などを検討する。
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藤元健太郎
D4DR 社長
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別の視点
国民が参加する政治を本質的に機能させるならば派閥やお金の問題だけでなく選挙制度改革まで踏み込まないと何も変化しないだろう。現在の小選挙区制度も派閥制度と選挙の金の問題で導入されたが,結果的には二大政党制は幻想で日本の場合は自民党が圧倒的に有利な仕組みで定着している。中選挙区制に戻せば,現在のように半分近い死に票も減少し,現在の派閥は政党として自民党を飛び出す可能性も高まるし,世襲で無くとも地方議員などから政策本位で国会議員に立候補し当選する若手議員も増えるだろう。是非派閥の解散などでごまかさないで選挙制度改革まで踏み込んで欲しい。
2024年1月19日 21:58
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木村恭子
日本経済新聞社 編集委員
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分析・考察
「派閥解消」にばかり焦点があたることで、キックバック問題の根本的な解決につながらなくなることを危惧します。
①自民党総裁でもある岸田首相が、党の政治刷新本部で議論中にも関わらず(しかも派閥の会長を辞めているのに)宏池会の解散を発表するのは、組織の意思決定プロセス無視でしょう。
②さらに首相は「他の派閥のありようについて申し上げる立場にない」とも言いますが、自民党総裁として、あまりにも無責任。
③菅前首相が「非常にわかりやすいのが、派閥の解消」と発言したように、岸田首相はパフォーマンスで支持率回復の賭けにでたのでは、と疑いたくもなります。いま大事なのは「わかりやすさ」よりも「実効性」でしょう。
2024年1月19日 17:47 (2024年1月19日 20:06更新) 』