ホルムズ海峡で、ドンパチが始まりそうなのに、市場が反応しない理由
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『ペルシャ湾を舞台にしたイエメンのフーシ派による、ホルムズ海峡を通る船舶に対する攻撃・拿捕事件ですが、ここは日本を含めたアジアへの原油・天然ガス輸送の大動脈です。ここで、ドンパチが起きれば、ただでは済まないと心配するのが普通です。しかし、原油の価格は安定していますし、特に市場に動きがありません。これは、不思議ですね。
しかし、資金・武器の出処を考えると理由が判ります。この地域のテロ支援の元凶は、ずばりイランです。ここは、宗教が政治の上にくる宗教政治国家です。なので、政治的な判断よりも、宗教イデオロギーが全ての行動の優先順位で高くなります。ようは、「理屈じゃないんだよ」が、真っ先にくる国です。フーシ派に支援しているのも、イランと言われています。その為、イエメンの一部の地域を占拠している過ぎない、政府でもない勢力が、これだけの事件を起こせるわけです。
ところが、イランの主たる収入源は、まさに原油と天然ガスの輸出です。アラブの大儀の為に、フーシ派を支援するものの、全面的に紛争になって、ホルムズ海峡が封鎖されると、イランは輸出する手段を失います。他国のイスラム過激派を支援できるのは、天然資源の収入があるからで、原爆開発で長い間、経済封鎖をくらっているイランに、他の有力な資金源がありません。今でも、国内は凄いインフレで、国民の暮らしは苦しく、暴動が頻発している状態です。なので、どんな状況でもホルムズ海峡を人質にして封鎖する事はできないのです。少なくても、市場は、そう判断しています。
仮に封鎖したとしても、アメリカはシェールガスを開発して、潜在的な原油の産出量では、世界一になりましたし、イギリスは北海油田を所有しています。イランからの原油が止まっても、実際のところ紛争相手国は困らないのです。困るのは、主にアジアです。さらに、ホルムズ海峡で紛争が激化すると、ここいらのサウジアラビアとかクエートを始めとする原油輸出国が黙っていません。国家存亡の危機になるので、「アラブの大儀」とか言っていられません。「飯」の為に、周辺国が敵にまわります。
イランは適度にイスラム過激派を支援するのは構いませんが、紛争が本格的になると、自分が困るのですね。ペルシャ湾の最奥部に位置していますから、出口を塞がれる事になります。なので、市場は損得勘定のファンダメンタルズで、ペルシャ湾紛争は、小競り合い以上にはならないと考えています。まぁ、少し前にアメリカが派手な空爆をフーシ派の支配地域に仕掛けたので、ある程度の反撃はあるでしょうが、行き過ぎるとスポンサーのイランが止めに入ります。
とはいえ、こういう紛争が、予定通りに進む保証は無いので、大きな争いに発展する可能性はゼロではないですけどね。市場というのは、冷徹なくらい損得で判断するので、そこに思想とか宗教とか入り込む余地が無いのですよ。あるとすれば、熱狂という感情による投資のハイテンションと、逆に暴落時のダウナーな感情だけです。数字として、結果が残った事が、真実の全ての世界です。なので、人間性が壊れる人も多いのです。』