能登半島地震、木造住宅の耐震化途上 被害拡大の要因に

能登半島地震、木造住宅の耐震化途上 被害拡大の要因に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE0439V0U4A100C2000000/

『能登半島地震は5日、石川県内で確認された犠牲者は94人、連絡が取れず安否が分からない人は222人となった。被害拡大の一因と指摘されるのが木造住宅の低い耐震化率だ。住宅の半数程度が国の耐震基準を満たしていなかった自治体がある。全国では9割近くの住宅が耐震化しており、過疎地での整備が進んでいない実態が浮かび上がった。

能登半島の先端にある石川県珠洲市。今回の地震で震度6強を観測し、1階が押しつぶされるなど、原形をとどめないほど大きく崩れた住宅が目立つ。

被害が大きくなった背景に、現行の耐震基準を満たす住宅が少なかったことがある。同市によると、市内の住宅約6000戸のうち、2018年度末時点で基準をクリアしたのは51%にとどまった。

耐震基準は1981年の建築基準法改正で引き上げられた。それまでは「震度5強程度で損壊しない」との基準だったが、震度6強〜7でも倒壊しない耐震性が求められるようになった。震度6強を観測した同県輪島市の2022年度末時点の耐震化率は46%と低水準だった。

石川県輪島市で倒壊した家屋を捜索する消防隊員ら(5日)=共同

都市部を中心に耐震化率は上昇している。東京都は92%(20年3月時点)で、全国は87%(18年時点)。今回の被災地の低さが際立つ。

住宅の倒壊は、建物や家具の下敷きになって死亡するなど人的被害につながる恐れが高い。1995年の阪神大震災では20万棟を超える家屋が全半壊し、犠牲になった6434人のうち家屋の倒壊などによる「直接死」が8割を占めた。

今回の地震でも建物の下敷きになるなどして亡くなった人が多い。今も警察や消防などによる救助活動が続いている。

「阪神大震災に匹敵する揺れのところもあったとみられる」。京都大防災研究所の境有紀教授(地震防災工学)は倒壊を引き起こしやすい周期の地震波が発生した結果、被害が拡大した可能性を指摘する。

周期は揺れが1往復するまでの時間で、0.5秒以下では塀や家具が倒れやすいものの建物自体に被害は出にくい。周期1〜2秒になると木造家屋が倒壊する恐れが強まる。2秒を超えるような周期の場合、高層ビルが大きく揺れる。

境教授が防災科学技術研究所のデータを解析したところ、被害の大きかった石川県穴水町や輪島市、珠洲市などで1〜2秒周期の強い揺れを観測した。阪神大震災では、震度6強を観測したJR鷹取駅周辺(神戸市)で1〜2秒周期の揺れが襲い、周辺で6割近くの木造住宅が倒壊した。

国土交通省は2030年までに、ほぼ全ての住宅の耐震基準を満たす目標を掲げる。

整備を促すため国や自治体は耐震改修費を補助しているが、全額ではないため個人の負担が発生する。18年時点で耐震性が不足する住宅は全国で約700万棟あり、人口減や高齢化が進む過疎地域で遅れているとみられる。

東京大学の目黒公郎教授(都市震災軽減工学)は「復旧・復興を容易にするためにも、事前の被害抑止対策が最重要」と指摘する。人的被害の軽減には耐震化が有効で「例えば耐震シェルターを使って、寝室など家屋の一部だけでも補強することは命を守る上で意味がある」と話す。

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